22 好意と応援
小説って難しい!(´Д`)
今日は8月31日。
この日は高校生にとって夏休みの最後であり、宿題のタイムリミットである。
もちろん優美は宿題に追われていた。日頃のツケというのはこのような形ででてくるものだ。
「なによ!?なんか文句あるの!?」
…まぁ、そんな優美のことはさておき、今回の主人公は学校にいた。
・・・・・・・
「…はぁ」
静かな生徒会室にため息が響く。
もうこれで何回目のため息であろう。もし幸せが逃げるのなら、きっと私には今幸せは残っていないかもな。
そんなくだらないことを考えながら彼女はまた原稿用紙に目を向ける。しかしやはり集中できない。
生徒会長、朝倉絵里は悩んでいた。
それは明日の始業式でのスピーチの原稿制作なんかではなかった。それは、何と言うか、胸に突っ掛かるモヤモヤであった。
「…どうしたんだろ、私。」
一人そう呟き、また一つため息。
まだまだ暑いグランドを眺めながら、絵里は初夏のことを思い出すのだった。
・・・・・・・・
「大野君、私とデートしてください!」
ほんの冗談でいったことだった。
絵里は桜井優美がどうも気に食わなかった。
絵里は、文化祭のときにクラスで劇をした。彼女はヒロイン役で、自分に自信を持っていた絵里は、文化祭は自分の話題で賑わうだろうとひそかに思っていた。しかし蓋をあけてみると、みんなの話題はバンドの栞と女王様の優美に集中していたのだ。
そのせいがあって、絵里は何かと栞と優美にちょっかいをかけていた。栞はうまくやり流していたのだが、優美は性格が性格で。それからというもの、二人の仲は最悪になっていたのだ。
で、冒頭の台詞。
優美の1番仲のよい異性である大野君にちょっかいをかけることで、優美を動揺させてやろうと考えてたのだ。結果的にその作戦は成功したのだが。
だから、絵里は別に大野蓮という人間はどーでもよかったのだ。
しかし、いつの間にか、彼女の気持ちは変化していた。
・・・・・・・
「…ねぇ、大野君って桜井さんのどこが好きなの!?」
「ブハッ!!!」
デート当日の昼食中、絵里のストレートな質問に蓮はたまらずコーラを吹いた。
それを見て絵里は思わず笑ってしまう。
「ははっ、大野君って意外にシャイなんだね〜」
わ、わるいかよ、と少々慌て気味の蓮。面白い人だなぁ、と彼女は感じていた。
「いーや、べっつに…で、それよりも教えてよ、あの娘の何がいーのよ?」
半分からかい、半分興味本位で質問を投げ掛ける。というより、ほとんど興味本位である気がする。
優美の一体どこがいいのか??一体何が蓮を引き付けるのか?
恋愛経験の少ない絵里にとって、それはかなり気になることだった。
蓮は口元をティッシュで拭きながら考える仕草をし、それから答えた。
「うーん、どこが好きかって言われたら何とも言えないけど…
何て言うか、ずっと側にいたい、って思えるんだよね、あいつと。」
「…へぇ」
絵里は余り言葉を返せなかった。優美のことを語る蓮の顔が、何だかとてもいい顔をしていたのだ。
今まで絵里に告白してきたりした人は何人もいたけど、理由を尋ねると、みんな彼女の見た目がかわいいから、とかばかり。一言も話したことない奴すらいる。
そんなのが絵里が嫌いだった。
でも蓮は違う。優美のことをだれよりも知っているし、なにより誰よりも優美が好きなのだ。見るだけでわかる。
「…へへ、なんかこっぱずかしい話しちゃったな…」
そういいながら照れ臭そうにする蓮。
そんな蓮の表情を見て絵里は思った。
あぁ、こんな人に好かれてる桜井さんは羨ましいな。
私も、大野君みたいな人に好かれたいな。
だけど、こんな気持ちもあった。
こんなに純粋な大野君には、幸せになってほしいな。
そして、この二つの思い、蓮に対しての好意と彼の恋の応援は、同時に叶うものではないのである。
絵里は、このどうしようもない感情をどうすることも出来なかったのだ。
・・・・・・・
「…はぁ」
またため息だ。
蓮のことを考えるといつもこうなる。
この前の夏祭りだって、蓮への好意に負けて、彼が優美が好きだと知ってる癖にべったり引っ付いて見せたり、わざと蓮と優美を引き離してみたり。
遊園地の帰りなんか、ほっぺにキスしてみたり…。
でもいっつもやってから反省してしまう。もう遅いのに。
「…私、何してんだろ。」
こうやって毎回反省して、そして結果的にこうなるのである。
「あー!!やっぱ桜井優美むかつくー!!!」
カラオケにて…
愛子「もう〜終わり〜だね〜」
新城「……」
愛子「き〜みが〜小さくみぇ…グスン」
新城「無理して歌うなよ(´・ω・`)」