14 海に行きます!
「…次は生徒会長の話です」
季節は夏真っ盛り。
蒸し暑い体育館の中、現在終業式が行われている。誰もが夏休みの始まることにウキウキしていて話なんて聞かないで隣近所で話をしている。
そんななか、一人だけ浮かない顔をした人間がいた。
決まっている、優美だ。
遊園地の一件から数日たったのだが、未だに優美の孤独感は消えることはなかった。
どうしてだろう?どうしてこんなに寂しく感じるのだろう?お母さんがいなくなってから私はずっと一人だったじゃない、それなのに、何だろう?この気持ちは…
優美はふと顔を上げた。彼女の目の前には誇らしげに話をする生徒会長、絵里の姿が見えた。
優美は思わず下を向いてしまった。今の彼女には絵里を真っすぐ見ることが出来なかったのだ。
そして蓮を見ようとして、止める。
本当はあの時のことを蓮に聞きたかった。
でも聞けなかった。
もし、蓮が絵里のことを好きだといったら、絵里のところへ行くといったら…
私のそばにいた人が、また一人消えてしまう。
怖かったのだ。そのことをはっきり言われるのが。
そしてまたすぐに襲い掛かる孤独感。それが彼女を余計に苦しめる。私は、どうしたらいいの…
「…」三咲は考えていた。
優美の様子がおかしいことには空手部仲間は皆既に気付いていた。
優美は例え悩みがあってもいつも明るく振る舞っているような強い人間なのだ。
それが今回はどうだ?? 彼女からはいつもの明るさなんて全くなく、まるで死んだ魚のような目をしている。
そんな優美を助けたい。皆そう思っているのだが、誰も彼女が一体何に悩んでいるのかすら知らない。だから何も手助け出来ないでいたのだ。
「…なんとかしなくちゃ」
三咲は生徒会長のありがたい言葉を完全無視して考えるのだった。
・・・・・・・
「海に行きます!!」
余りに突然だった。
三咲の意味不明な台詞に、優美、蓮、匠の三人はしばらく何も言えないでいた。
「…ごめん、なんて?」
かろうじて蓮が応答する。
「だ〜か〜ら〜、海に行きます!!この四人で!!!」
三咲の出した結論は簡単だった。
どんな悩みも吹っ飛んでしまうような楽しい思い出をつくろう!それだけなのだ。
「知り合いに海の近くで旅館やってる人がいてね、少し安く泊まれるわけよ!
だから皆で遊びに行こう!」
三咲は満面の笑みで言う。
蓮と匠は
「優美がこんな状態なのに…こいつ馬鹿か?」とも少し思ったが、優美に楽しんでもらいたいという気持ちもあり
「それいいね!俺賛成!」
「俺も海行きたい!」
と、三咲の案にのったのだ。
「…優美はどう?」
三咲が優美のほうを向いて尋ねた。男子二人も同時に彼女をみる。
「……」
優美は少し考えた。実際今はそんな気分ではない。
でも、せっかくの三咲の好意だ。そんな理由で断るわけにはいかない。
「…わかった、私も行く。」
「よっし決まり!」
なんとか優美も行くことになり、思わず三咲はうれしそうな表情をした。
・・・・・・・
「優美〜!次はビーサン見に行こー!」
「ちょっ、待ってよ〜」
只今三咲と優美は買い物にきている。
優美は夏休みになってから、少しずつではあるが元気を取り戻していた。
ただ、未だに蓮をみると少し苦しい気持ちになる。
なぜだろう?
その答えはまだ見つかっていなかった。
・・・・・・
「…三咲ったら移動早すぎ」
気付くと優美は三咲とはぐれてしまっていた。なんせここは県下で1番大きな繁華街。せっかちな三咲と買い物でもすればはぐれてしまうのも当然だ。
「…全く、仕方ないなぁ」
優美は仕方なくそこら辺を歩いてみる。
「…!!」
突然、優美の足が止まった。優美はある店の前に立ち止まっていた。どうやらその店のショーウィンドウを眺めているようだ。
それから思わず一言。
「…かわいい」
優美が見ていたもの。
それは水着だった。
その水着は布が少なく、水色をしたとてもかわいらしいものだった。
しかし胸の小さい優美にとってこれは少し恥ずかしい。
そんな水着を見ながら優美は考えていた。
もしこんな水着を私が着ていたら、蓮はどう思うんだろう?
恥ずかしいな、でも、もしかしたら…
かわいいとか、いってくれるのかな…
その時彼女はこんなことを思う自分を少しおかしいと思っていた。
どうして?別に蓮なんてどーだっていいじゃない!なのに、なんでそんなこと…
そんな揺れ動く感情のなか、優美はしばらく水着を眺めていた。
愛子
「フフフ…勝った!!!」
新城
「…なんだ、その不気味な笑い方は?お前はキラか?」
愛子
「いいえ!桜井先輩に勝ったんです!!!」
新城
「…なにが?」
愛子
「胸が!!!」
新城
「…よかったな(ダメだこいつ、連載に出れなくてかなりいじけてるな)」
次回は海後編。