12 恐怖のデート(中編)
「あぁ、ここは…」
懐かしい。
ふと優美はそう思った。
蓮達について来て、たどり着いたのはとある小さな遊園地だった。
ここはどちらかというと小さな子供達向けの遊園地で、有名なテーマパークとアトラクションが立派ではない。しかし休日ともなればなかなか人が集まるのだ。
優美はしばらく入口を眺めていた。蘇る昔の思い出。あぁ、小さい頃遊びにいってたなぁ。何年ぶりだろう?そんな思い出に浸っていた。
「…ってやばっ!蓮を見失っちゃう!!」
優美は慌てて入場ゲートヘ向かった。
・・・・・・・・
「…うわぁ、変わんないなぁ」
時同じくして、優美と同様に思い出に耽っている人間がいた。
「あら?あなたここにきたことがあるの?」
隣を歩いていた絵里が何やら不思議そうに話しかけて来た。どうやら彼女はここが初めてらしい。
「あぁ、小さい頃にね。優美の家族と一緒に来てたりしたんだ」
蓮は懐かしそうに話した。
それを聞いて何故か不機嫌そうな顔をする絵里。その様子に蓮もすぐ気付いた。
「…ごめん、なんかまずいこといった?」
申し訳なさそうに謝る蓮。それを見て絵里はまたいつものように笑って見せる。
「うぅん、なーんにも。気にしないで」
「そっか」
そこからしばらく会話が途切れた。蓮は悩んでいたのだ。
参ったなぁ、形だけのデートで俺はどうやって対応すればいいんだよ?ってか俺とデートする意味あるの?
蓮にはわからないことがあった。何故デートをするのか?彼女は優美をいじめたいからそうすると言っていた。しかしどうだ?確かに蓮と優美は物凄く仲がいい。しかしそれは幼なじみなだけであって、蓮は優美にとって恋人とか優美の片思いの人とかなのではない。
なのにデートをすることが、優美に対する意地悪になるのか?
それとも、彼女は他に何か企みがあるのだろうか…
蓮は隣の絵里を見た。蓮の肩くらいにある絵里の横顔は、なんだかいつもより楽しそうだった。
「…なんか、楽しそうだね。」
そう声をかけると、彼女は笑ってこちらをみた。普通の人なら一瞬で恋に落ちそうなスマイルで。
「うん!私、男の子とデートするの初めてだからさ!!」
「えっ!?ホントに?」
正直意外だった。こんなにかわいい子がデートをしたことがないなんて。
「私、中学のときから生徒会とか入ってて忙しかったから恋に時間をさけなかったのよ。まぁ今もそんな感じだけど。」
「あぁ、なるほど。でも朝倉さんならすぐに恋人くらい出来そうだけどな」
そういうと、絵里はうーんという表情。
「そうでもないよ、私の好みの人がなかなか現れないのよね。
あとね…」
絵里はテクテクと蓮の前まできて、それから極上のスマイルでぱちんとウインクをした。
「今日はデートだから、私のことは『絵里』ってよんで!!
あと、あなたのこと、蓮君ってよんでいい?」
あ、かわいい。蓮は思わず見とれてしまった。
この人は俺が優美のことを好きと知っていてこんなことをしているのか?
「…ねぇ、聞いてる??」
絵里は蓮の顔の前で手を降り、おーいおーいと声をかけた。それに気付いた蓮は慌てて反応する。
「あっ!?いや、いいよ!構わないよ朝倉さん!!」
そういうと絵里は頬をぷくっと膨らませた。その様子は犯罪級にかわいらしい。
「あ〜!!朝倉さんじゃないでしょ!?」
「ご、ごめん、…絵里さん」
もう蓮はタジタジだった。
彼女はきっと悪魔だ。
そう蓮は思った。