11 恐怖のデート(前編)
少し長くなるから前編後編で分けてみました(>_<)
「はぁ…」
蝉も活動を始めた七月のとある日曜日。駅の券売機付近の柱によっ掛かっていた蓮は思わずため息をついてしまった。
俺は一体何をやっているんだ?何でこうなったんだ?言い出したらキリがないほどの疑問がわくのだが、これも全て優美の下着姿の代償だと心に言い聞かせているのだ。(それほど衝撃的だったのだ、水色のシマシマが。)
そんなことを考えていると、改札口から何人もの人が流れ込んで来た。きっとこの人達もこの付近で遊ぶのだろう。
人の塊がなくなってから少しして、改札口が開く音がした。そこには、胸元が大胆にあいた白いシャツにホットパンツをはいた少女がいた。
「あ、大野君!!まった?」
この子が蓮の悩みの原因となっている朝倉絵里である。
・・・・・・
「大丈夫、心配しなくても」
駅前の並木道を歩いていると、蓮の隣を歩いていた絵里がそんなことを言い出した。
「…何が??」
「この『デート』のことよ」
そういってニッコリと笑う。しかしやけに『デート』を強調してくる。
「私ね、ただ優美にイジワルしたいだけなのよ。
だから、あなたが好きでデートに誘ったわけじゃないからね」
その彼女の言葉に蓮は少しだけホッとした。まぁ彼女の性格から考えて、そんなことだろうとは思っていたが、もし絵里が蓮のことを好きで誘ったなら…
優美一筋の蓮もタジタジだったであろう。
なんせ絵里は超美人。しかも優美にはない『女性の魅力』という核爆弾級の武器があるのだ。(性格とか仕草とか、なにより胸とか)
「ふーっよかった」
そんな恐怖を想像をさっきまでしていたものだから、蓮は思わずため息をついた。
その様子をみて、絵里はクスクスと笑った。
「あら?そんなに安心した??
…やっぱり大野君は桜井さんが大好きなんだね!!」
その瞬間、蓮の顔は火を噴いた。物凄く照れていた。
そんな様子を見て絵里はまた笑うのだった。
顔のほてりが少し取れたとき、蓮は思い出したように絵里に話し掛けた。
「…それならもう今日は解散してもいいよね?一緒に遊んだ〜っていっとけばいいでしょ?」
すると、絵里がまたニッコリと笑った。天使の笑顔だ。一瞬蓮はそう思った。
「だ〜め!!私暇だし、あなたと話したいこともいろいろあるしね」
悪魔の笑顔になった。
「それにね…」
彼女は蓮には気付かれない程度に後ろをちらりと確認する。それから蓮を見て、殺人的なスマイルを見せる。
「…後で話すんじゃなくて、今デートすることに意味があるんだよ、大野君」
・・・・・・・
同じ頃、同じ場所。蓮達の後方を歩く青年がいた。
「きゃーイケメンよ!!」
「カッコイイ〜!!」
周りの女子高生が思わずそういった。その言葉は青年にも届いていたようだが、それを聞くと何故かため息をついた。年頃の男の子がカッコイイといわれて嬉しくないなんてことはないだろうが…。
年頃の男の子は、である。
「はぁ〜何で私はこんな恰好でこんなことしてるんだ??」
彼女の名は桜井優美。れっきとした女の子である。
何故彼女はこんな格好をしているのか??決まっている。蓮と絵里の追跡である。
七夕のデート宣告をされてから、どうも気になってついてきたのだ。
この変装は二人にばれないために匠から借りたものである。元々男っぽい一面のある優美に男装は完璧にハマっていた。(胸が無いのも男装があう理由一つなのだが、本人はそれを認めようとはしていないようだ。)
「…ったく、これも全部蓮のせいよ!!だいたい蓮が…」
文句を言っていると、一瞬優美の脳裏にある疑問が浮かんだ。
…何で私が蓮の様子を気にしてるの??
別に蓮のことなんてどーでもいいじゃない。あいつの好きにさせればいいじゃない。
なのに何で…?
「……あぁ違う!私は朝倉の野郎の勝手な行動にムカついてるの!!別に蓮とかはどーだっていいのよ!!」
優美は帽子を外して頭をグシャグシャと掻き回しながら一人グチグチいうのだった。