9 納得いかない!
「………おかしい」
じめじめした梅雨もあけ、早くも夏本番である七月頭頃。首に巻いたタオルで顔の汗を拭いながら優美はグランドのほうをみて呟く。
今グランドではクラスマッチの二年男子の決勝が行われている。黄色い声援が飛び交う中、1番輝いているのは優美が1番よく知っている人間だった。
「きゃーまた決めたわよ!」
「6組のあの子やばいわね!」
「…かっこいいかも〜」
優美の横にいた女子三人組がそんな会話をしていた。目をハートにしながら。
そんな様子を見て優美は思う。
「……蓮って、モテるの?」
・・・・・・
「…知らなかったの?蓮君は案外モテモテなのよ?」
部活の練習中、そう教えてくれたのは三咲だった。
「あんたは幼なじみだからわからないかもしれないけど、蓮君みたいな人は案外モテるんだよ。顔はなかなかいいし、何より性格がいいしね!
今回のクラスマッチの活躍で、蓮君の人気は更に加速するはずだわ!」
事実、クラスマッチが終わった後はすごかった。女の子が何人もやってきて蓮に話しかけて来た。本人は優美に誤解されないようにと努力しようとしてたのだが、優美には蓮がデレデレしているようにしか見えていなかった。
「…へぇ〜、蓮がねぇ」
優美は少し変な気分になった。あれ?蓮ってそんなにいいのかな?女子に人気があったんだ。
それにあんなにヘラヘラして、なんて奴!
しかし、それ以上に今日のクラスマッチのことも気になった。サッカーなんてよく知らない優美であるが、今日の試合を見たら優美にだってわかる。
蓮はそこらの部活動生より遥かにうまかった。多分うちのサッカー部に入れば即レギュラーになれるのではないだろうか?それなのに…
「どうして、蓮は空手をしてるんだろう……」
それには理由があるのだが、その話は別の機会にすることに。
まぁそんなこともあって、優美はなんだか無性に腹立たしくなった。
それは蓮に対する嫉妬、なんてことはなく、ただ納得いかないのだ。
蓮のくせに、モテるだなんて。
「……ちょっと蓮をボコボコにしてくる。
調子に乗らないうちに殺っとかなくちゃ」
そういって優美はスタスタと蓮のほうに歩いていった。
「………蓮君かわいそう。」蓮が優美一筋であることを知っている三咲は、ただ同情することしか出来なかった。
・・・・・・・
「………また大野先輩がボコボコにされてる〜」
蓮が優美にいじめられているのを涙目で見ている少女。彼女の名は森愛子。四月に入部した一年生だ。
「なんか今日は一段とひどいな。」そういうのは新城隼人。以前に優美に愛の決闘を申し込み、肉体的にも精神的にもボコボコにされた一年生である。
「…大野先輩大丈夫かなぁ?」
愛子はかなりオロオロしている。そんな様子をみて、隼人はニヤリと笑った。
「そっか、森は大野先輩大好きだからな〜!運動出来ないくせに大野先輩に近づきたいがために空手部入部したんだしな!」
「にゃっ!?」
愛子は一瞬にして真っ赤になった。まるで熟れすぎたトマトだ。
「もう!またそんなこと!からかわないでよ〜!!」
そういいながら愛子は隼人をポコポコ叩くわけだが、余りに弱すぎるのである。
「まぁでも、大野先輩に彼女が出来たら俺も好都合だし、応援するから頑張れよ!」
「…なんかズルイ」
こんな感じで、実は優美のすぐ近くに恋のライバル(?)がいたのだった。
「大野君!!今度デートしてください!!!」
「「「!?」」」
次回は愛子より更に強力なライバル登場!!
愛子
「……それって私は弱すぎっ!!ってことですか(涙)」
隼人
「…ドンマイ」