ソルケッス王
次の王はソルケッスという名であった。ラルス王の第一王子で、王子には僅か二つというお歳でなられた。偶然であるが、王の座には先代と同じく九歳でお就きになった。しかし宮中でソルケッス王は、自身が乳兄弟を殴殺したという嫌疑を家臣から掛けられ翌年に退位されてしもうた。幼き頃の国王には奇怪な行動が見られた事があり、暴君であったと言われているが、俺はよく知らぬ。ソルケッス王の治世は八年間であったが、自身は八十一まで生き存えなさった。
母后サルケはラルス王より九つお年を召していらっしゃった。二十七歳におなりになった時にソルケッス王をお産みになられたと記憶しておる。まだこの方が世に出られておいででない頃、十一代国王の孫である貴族と雲隠れされたことがあった。結局は兄に発見され連れ戻されなさったのだが、晩年にお詠みになった詩にもその貴族を想う気持ちが表れており、実は、ラルス王はあまりサルケ王后を寵愛していらっしゃらず、王后もまた国王を愛していらっしゃらなかったのではないか、と俺は推測しておる。
原作より~陽成天皇(原作中では陽成院と表記)~
平安時代前期の第57代天皇(在位876~884)。乳兄弟である源益が宮中で何者かによって殺害されたことについて、陽成天皇が一枚噛んでいるとか何とか言われているが謎のままである。