プログラム:39 《大切だから、怪しく感じるの?》
ギュッ・・・
「わっ!!?なんや坂浦!!」
陽立が急に大声を出して、あたしは我に返った。
どうやら、陽立の服の裾を引っ張ってしまったようだ。
無理もない
。
あんなこと思い出したら、誰かに縋りたくなる。
まぁ、運悪くこいつに縋ってしまったようだけど。
「あ、ごめん。」
パッと放し、素っ気無く返答すると、陽立はあたしの顔を覗き込んだ。
「おいお前、顔色悪いで?ちょっと休んだらどうや?」
「大丈夫ですよーだ。あんたに心配されなくても、休みたくなったら休むわよ!」
「な、なんやとっ??!せっかく人が心配してやってるっちゅうに、それはないやろ!!?」
「だから、大丈夫だっていってんでしょうがっ!!」
「おい、二人とも。」
あたしと陽立の口げんかを、雅之が手で制した。
「そこで休もう。ずっと歩いてたって、きりがない。それに、体力には余裕を持っていたほうがいい。」
そう言って、職員室を指差した。
いつの間にか、元の場所に戻ってきていたらしい。
あたしはうつむいて、陽立はつーんとしながら、職員室に入った。
「しつれいしまーす。」
職員室には、人はあまりいなかった。
みんな、どこかに行ったみたいに。
そして雅之は、目を大きくあけて、叫ぶように人の名を呼んだ。
「春人!!!」
名を呼ばれた本人は、こちらを見て、ホッとしたようにほほ笑んだ。
そんな彼に、雅之は駆け寄った。
「良かった、無事だったんだな・・・。」
雅之は春人の肩に手をおき、安心したように笑った。
「雅之の俺とあいつに対するあの態度の変わりよう、気にいらへんなぁ。」
一人ふてくされている奴は放って置くことにして、あたしたちはゆっくりと二人に駆け寄った。
「雅之・・・俺、俺・・・宮坂さんとはぐれちゃったんだ・・・」
春人の顔が強張っている。
でも、雅之は落ち着いた様子で
「大丈夫だよ、宮坂さんならきっと、どこか安全なところに隠れてるに決まってるさ」
あるわけもない事を述べていた。
宮坂さんは、普段の宮坂さんじゃない。
爆発状態の宮坂さんが、一人でどこかに隠れるなんて、不可能に近いだろう。
だめだ、雅之には今、春人しか見えていない。
周りの人が見えなくなるぐらいに、そいつが大切なの?
雅之・・・。
「春人、俺と一緒に行こう。一緒に、隠れる場所探して、隠れよう。」
あたしの知らない、雅之だった・・・。