プログラム:37 《本当のことを伝えるのは、お前らがすっげぇ大切だからだ》
「尚人、尚人?」
「・・・あ、え、なに?」
不意にかけられた言葉に焦りながらも、尚人はノゾムに聞いた。
「どうしたんだ?さっきから、黙り込んで・・・。」
ノゾムは、尚人の顔を窺うように心配している。
尚人は何も言えなかった。
「尚人・・・?」
「心配した眼で俺を見んなよ・・・。お前のほうが、危ないんだぜ・・・?こんなときに・・・他人のことは気にすんじゃねぇよ・・・。」
「?何言っているんだ、尚人。僕なんか全然大丈夫だよ。」
相変わらず、ノゾムは笑顔を尚人に向かって見せる。
無理しているのはバレバレだって言うのに。
右手が落ちないように、左手で支えているので精一杯なくせに。
ノゾムの額から流れてくる汗は、なかなか途絶えない。
「良いよ、無理すんなよ。ノゾム、痛いなら痛いって言えよ・・・。死にそうなら死にそうだって言えよ・・・。俺は、言ってくれなきゃわかんねぇんだよ・・・。お前に手を貸すことができねぇんだよ・・・。」
尚人は、体育座りの態勢で身を沈めた。
ノゾムは黙ってうつむき、ノゾミは二人を真っ直ぐ見つめていた。
「・・・ハハ・・・何言ってんのさ。尚人、こんなので死ぬわけないだろ?僕は、僕は何も、感じないよ・・・?」
ノゾムのその笑顔が、不気味にさえ見えてきてしまう。
痛さのあまりに、何も感じなくなったとでも言うのだろうか。
怯えてる・・・ノゾムは、怯えているんだよ・・・。
本当に死にそうだから・・・。
ダメだよ・・・なんで・・・こんなときに俺、何も出来ないんだよ・・・。
こいつらを笑わせることさえできやしない。
だって俺は・・・俺は・・・・・・
「ノ、ゾム・・・お願いがあるんだ・・・。」
ノゾムは、顔を上げた。
青ざめた顔色を、俺は直視することが出来ない。
微かに視線をそらして、尚人は静かに言った。
「俺は、あと少しで鬼に支配される。」