プログラム:35 《裏切れば、裏切るだけ…》
暗い闇の中で、二つの声が混ざっては響いて消えている。
まるで影の世界にでも紛れ込んだようだ・・・
(なぁ、俺は・・・二人を裏切らなきゃいけないのか・・・?)
ひとつの声は、寂しそうに問う。
『勿論だよ。そのために君はここに呼ばれたんだ。』
問われた言葉を、軽く叩くように返す、もうひとつの声。
二つの会話は続く。
(嫌だよ・・・。俺・・・あいつらを・・・裏切るなんて・・・出来ないよ・・・)
『何を言っているの?裏切ることなんて簡単じゃないか。君はただ、正当防衛として彼らを見捨てればいいだけさ。』
(そ、そんな・・・)
『迷うことなんてないんだよ。彼らを裏切りさえすれば、君は生きていられるんだから。』
(お、俺だけ生きていられるなんて・・・)
『可哀想に・・・何が君を迷わせる?君がそんなに大切にしているもの・・・僕には分からないね・・・』
(俺が・・・大切にしているもの・・・?)
『いままでの子たちも、大切な人がいた。でも、その理性を殺してまで大切な人を裏切ったんだよ?』
(どうして・・・理性を殺してまで裏切らなきゃいけないんだ・・・)
『・・・どうして?簡単なことだよ。』
『楽しいからサ★』
―プツリ―
最後の声と同時に、暗い闇の中には再び、静寂が戻っていた・・・。