プログラム:34 《そう、それは、もう起きてしまったことだから》
「なんや、ついてきてたんか?」
あたしたちに気付いた陽立は、ひょこっと教室の隅から顔を出してきた。
まるで、何事もなかったように。
「・・・うん。心配になったから。」
雅之は無表情で応えると、陽立の目が潤み始めた。
「雅之!!俺のこと心配してくれたんかっ?!もー怖かったで、雅之ぃいぃぃいい〜!!」
陽立は必死リと雅之に抱きつく。
雅之がなんも抵抗しないので、あたしが止めにかかった。
「あ〜も〜うっさいよ!雅之から離れろ!!変な誤解が生まれるでしょ??!(ってか、ホモがばれるでしょ?!)」
あたしのカッコのなかの言葉が聞こえたからなのか、陽立はするっと雅之から手を引いた。
「・・・ってか、いつ古林先生が鬼だって気がついたの?」
暫くして、あたしは恐る恐ると陽立に聞いた。
「・・・?見りゃ誰だって分かるやろ?」
・・・陽立に聞いたあたしが馬鹿だった・・・。
こいつは本能では分かっているけど、自分自身はよく分かっていないんだ。
勘がいい・・・って言うのかな・・・?
「おい、急に無言になるなよ。」
目を細め、眉を寄せる仕草が、とってもムカムカ来るのは何故だろう・・・
「いや、ある意味感心してただけだから、気にすんな。」
「ある意味ってなんや、ある意味て!」
「うっさいっての!クドイ男は嫌われるんだよ!!」
「なんやてー??!」
ふと気がついた。
「・・・・・・・・・佐々木や美富を紅くしたように、俺も殺す気ですか?・・・・・・・」
あんなに低くて暗い声、いつもの陽立の表情からは検討も付かなかった。
・・・すごく・・・怖かった・・・
あのとき、陽立はいったいどうゆう顔してたんだろ。
なんで、あんなに寂しく感じていたのに、すぐ笑っているんだろ・・・
無理・・・してるのかな・・・
あたしが、陽立に言うことじゃないんだろうけど、あたしだって、寂しい後に笑うことなんて・・・難しいよ・・・
でももし、もし陽立がいま誰にも分からないように、寂しいという思いに蓋をしているのだとするなら、あたしたちはそれを開けちゃいけないんだ。決して。
それに気付かないふりして、一緒に笑ってあげよう。
安心させてあげようよ。
あたしたちは味方で、仲間で、大切なユウジョウで繋がれてるに違いないから・・・。