プログラム:26 《俺ができること?》
「ドンッ!」
ニ学年上のやつと、肩がぶつかった。
俺は直ぐに肩を掴まれた。
「おいコラてめぇ、肩がぶつかったっつーのに、無視すんのか?」
それに俺はどうしたと思う?
もちろん、半殺し。
俺、そんなに強かったんだな。
何で今は、こんなにも何も出来ないクズなんだろう。
まぁ、原因は‘アイツ’にあるのは確かだ。
「なぁなぁ、お前、強いんだろ?俺と拳でやり合ってくれないか?」
‘アイツ’は俺に、いきなりそう言った。
「俺は、おまえみてぇな女とは喧嘩はしねぇんだよ。」
「女だからって、あまくみんなよ!それとも、俺とやり合うのが怖いのか?」
その挑発的な言葉は、相手をその気にさせてしまう。俺はまんまと引っかかった。
「腕が折れたって、しらねぇぞ。」
俺はにらんだ。相手もにらんだ。
睨み合った俺らの結末?
いいたくも無いね、そんなこと。
答えは、俺の負けってことさ。
いい気味だってか?別に良い。
もう、今となってはどうだって良い。
本当さ。
本当に・・・どうだっていい・・・。
「・・・お前、なんでそんなに強いんだ。」
喧嘩負けなしだった俺に、‘アイツ’は敗北を与えた。
どうしてだ?なんで、俺がはじめて、
オンナニマケタ??
そいつから返って来た言葉はたった一言。
「強くなりたいから。」
「俺はさ、強くなりたいんだ。俺、すっげぇ短気だろ?だから友達も何にもできなくて。悔しいんだよ。そうゆー自分。だから強くなって、誰かを助けられるようなやつになりたいって思ってるんだ。そのためには、強いやつと戦って、そして勝って、負けて・・・。それを繰り返していけば、俺はきっと強くなれるような気がするんだ。」
馬鹿らしかった。それと同時に、何かが悔しく感じた。
「なぁ、抹。お前、俺のことを必要だと思ったことってあるか?」
「・・・ないね。」
「・・・。だよな。だからさ、必要にされる存在になりたいから、誰かを助けてやりたいから、俺は、強くなりたいんだ。そんな理由でやり合ったら、いけないのか?」
‘アイツ’は聞いてきた。俺は素直に言った。
「女がそんな危ないことしたら、いけねぇに決まってる。」
「あっそ。じゃあお前も止めろよ。喧嘩。」
最後の単語に、俺はピクリとした。
「は?なに言ってんだよ。」
「俺は喧嘩はそんなしないようにする。だから、お前は喧嘩止めろ。」
「なんでそうなるんだよっ!」
「俺に負けたくせに、よくゆーよな。」
「ぐっ!」
「とにかく、お前は俺の隣りで支えてくれてれば良いんだよ。俺は、お前を必要としてるんだからな。」
最後の言葉には、俺には聞こえなかった。
「―は?いまなんて・・・。」
「あ?何も言ってねぇよ。」
そう‘アイツ’は誤魔化して、そして笑っていた。
ムカツクヤローだった。一言でな。
俺も、ホント女々しいぐらい大人しくなったもんだぜ。
情けないね。
過去の俺が、現在の俺をさすように言ってくる。
お前は、何もしないでただじっと、時間が流れるのを待っているのか?
そんなんで、‘アイツ’が俺を必要としてくれるとでも思ってるのか?
何も出来ないくせに、お前は、何をするために、‘アイツ’の傍にいつもいたんだ?
その言葉は、氷のように冷たい。
俺は俺を苦しめる。
でも、痛いという感覚は無かった。
ただ一つ、悔しいという感情だけが、その言葉に込められていた。
俺は何も言わず一回だけ首を縦に振る。
過去の俺は、現在の俺の思ったことがわかってくれたように、姿を消していった。
何をするために?
もう、その答えは自分自身で知っていたはずだ。
あとは、それを成し遂げるだけだろう?
佐々木は、美富が走っていった、あの跡形も無い廊下を、追うように走り去っていった・・・。