プログラム:17 《大丈夫 まだゲェムは始まってない》
只今の時刻10:40.ゲェム開始時刻まで残り10分。
陽立は手をジーパンのポッケに突っ込んで、歩幅を小さくしていきながら思っていた。
(悪魔は何が目的なんや…)と。
悪魔はゲェムが始まってすぐに坂野を燃やした。
何で燃やす必要があったのだろう。
悪魔は俺達になにを望んでいるのだろうか。
「チッ…」
悪魔に試される…こんな屈辱、生まれて初めて感じた。
小さく舌打ちして、陽立は前を見た。
「あれ?陽立くん。」
その声はあまりにも幼く感じる。
でも、その声を出しているのは、陽立のクラスの担任、古林紗枝だった。
今年でもう34歳になるというのに、とても幼げない教師だ。
「…古林センセですか…」
小さく言って、古林の横を通り過ぎようとしたそのとき…
「ああ待って、陽立くん。キミまだ、わたしが渡した宿題のプリント、終わらせてないでしょ?」
…なんてヒトだ。
こんなゲェムに巻き込まれていても、頭の中は勉強なのか。
「今日は持ってきてません。」
「もうっ!美富ちゃんといい、佐々木くんといい、キミといい…。
ちゃんと勉強しないと、大人になって苦労するよっ?」
幼い声を出す人が、よくいっぱしの大人のようなことを言うよなぁ…。
「大丈夫ですよ。俺、頭は良いですから。」
陽立は人差し指で頭を指差した。
それに古林はハァッとため息をついて
「頭がよくても、ちゃんと授業には出席しなさぁぁい!!!」
その声が陽立の耳に割れるように響いたので、陽立は逃げるように階段を上がっていった。
「あ、ちょっとっ!陽立くんっっ??!」
いまはこのヒトのくだらん説教に付き合ってる暇はあらへんのや…。
陽立は足を大きく前に進めていった。