プログラム:16 《イマサラ》
ねぇねぇ、
僕ね、親友とかくれんぼをしてるんだ。
きみ、知らない??
僕の親友はね、とっても隠れることが上手なんだ。
石ころの下だって、机の中だって、
どこにでも隠れることができるんだ。
すごいでしょ。
僕の親友は自慢なんだ!!
え?
きみが親友になってくれるの?
ほんとう??!
ありがとう!
うれしいな!!
僕、きみみたいな子と友達になりたいって、
何度も思ったことがあったんだ!
仲良くしよう、ありがとう!
マサユキクン……。
「…」
どうやらいつの間にか寝ていたらしい。
さっきの夢、何で今ごろになって見るんだ?
もう過ぎたことが、なんで夢に出てくるんだ?
いやな夢だ…。
自分の愚かさが哀れになってくる。
「雅之?どうしたの?」
雅之はハッとした。
奏が心配している。
俺はいま、冷静でいなければいけないのに…。
「…なんでもないよ。」
奏に向かって軽く苦笑した。
「…そう?」
奏も苦笑した…
「ドコッッ!!」
と思ったら、奏は俺に裏券を極めた。
いってぇ…。
奏は体力馬鹿で、力がいつも有り余りすぎなんだ…!!
「…なぁんて嘘言ってんじゃない!少しは取り乱したって良いんだから。
ストレス溜まるよ?まったく、こっちも気分合わせにくいんだから。」
奏は恥ずかしそうに頬を赤らめて強気に言った。
…あ、俺、何やってんだろ。
全然冷静になんかなれてないじゃん。
春人を置いてきて、奏には心配かけて、俺、いったい何したんだ?
何もしてあげてない。
そう思ったら辛くなってきた。
喉が焼けるように熱くなってくる。
何かがこみ上げて来そうだ。
「…少しは、アタシにぶつけても良いんだからね。
まぁ、内容によればカンフー使うケド〜。」
「奏、カンフー知らないじゃん。」
フンッと鼻で笑ってみせると、やはり拳を顔面にぶつけられそうになった。
危ないけれど、なんとなく心が落ち着いた。
ああ、今ごろ気づいたよ。
俺。
こうゆうのが一番俺の中では楽しいときだったんだ。
嬉しいときだったんだ。
誰かが俺を心配してくれたり、信用してくれるときが、
一番俺の中では心地良いんだ。
「…ありがとう…。」
呟いた声に、奏は耳を塞いだ。
目も閉じていた。
それは、『いまさらなにさ。』といったふうに感じた。
春人にも会ったら言わなきゃ.
『ありがとう』って…。