プログラム:15 《動き出すよ ゲェムを楽しませてくれる》
「ハァハァ…」
息を荒げて、結城は廊下を思いっきり走っていた。
近くに静香が居る様子はない。
彼一人が廊下を走り抜けている。
(俺は勝たなきゃいけないんだ!!)
結城はパッチリと開けた目で、周りの状況を一瞬で感じ取っていた。
このゲェムに巻き込まれた奴らほとんどが、このゲェムを良いと思っていないようだ。
それ以前に、信じていない。
このゲェムを。
悪魔を。
俺はこの目で見たんだ。
坂野が焼け死ぬ姿を。
坂野が悪魔を拒んで、悪魔に殺された姿を。
見たくもなかった。
当たり前だ。
親友の死ぬ様を
何故見なくてはいけない?
結城は、坂野の黒ぶち眼鏡を握り締めて、つばを飲み込んだ。
俺はかたきをうつんだ。
残酷な悪魔を見つけて
問い詰めなきゃいけないことがたくさんあるんだ!!
結城はそのまま階段を上がろうとした。
だが、小さな声に、本能的に足が止まってしまった。
「ゆう…ちゃん…?」
その声は紛れもなく静香の小さな怯えた声だった。
彼女の肩が大きく揺れている。
そんなに結城の顔が怖いのだろうか。
「…しず、か…」
結城は怯えた静香の顔を見つめた。
顔がかなり青ざめていて、
ずっと見ていると同情したくなるぐらいだった。
「探したんだよぅ?まだ正常じゃないのに、保健室でちゃダメだよぅ…。」
静香は泣きべそ声で結城にしがみついた。
「心配したんだからね…?急に静香をおいてっちゃ、ヤだよ…。」
静香の瞳は、もういつ涙が零れてもおかしくない水の溜まった瞳だった。
そんな静香に我に返った結城は
「…ごめん。俺、自分を忘れていた。俺、坂野は守れなかった。
だから、だから静香は必ず、俺が守るから。」
そう言って、結城は優しく抱き付く静香の頭を撫でた。
静香の髪はまるで、水を触っているような感触がした。
「ゆうちゃん…!!」
静香はパァッと笑顔を見せて、そして顔を結城の身体にうずめた。
そして…
「ア゛リ゛カトゥ゛…♪♪」
静香の声ではない声を出した。
それに、結城は気付きもしなかった…。