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プロローグ

 深く息を吸うと湿った空気が肺を刺激した。

 二十年間育った森の空気は慣れ親しんだモノの筈なのに、今日はいつもと違う感じがする。

 それも当然かと思い、来た道を振り返る。


 天に高く突き出した山の後ろで太陽が昇って行く。

 眩しい。目に入る光を制限するため目を細くした。

 そして、自分が育った山の頂をじっと見つめる。


 育ての親となった赤い竜があそこには住んでいた。

 二十年間育てられ、生きる術を教えられた。

 森に下りて獣や魔物を狩った。そして、人を殺すために力をつけた。


 そんな日々を思い出し、口元が緩んだ。

 ドラゴンと暮らす生活も悪くない。

 ただ、赤い竜()は良く言っていた。


「お前たちには人間を懲らしめてもらう……つもりだ」


 父がそう言う度に「中途半端かよ」と心の中でよくツッコンだものだ。

 気がつくとこの世界に赤ん坊から転生して自然の中で育ったが、まだ見ぬ世界への好奇心は抑えられなかった。

 だから、父に言った。


「俺は人を滅ぼす気は無い。自由に世界を見て回りたい」


 突然言ったので怒られるかなと心配した。

 でも、父の返答は意外なものだった。


「うん……ユーゴがそうしたいのならそれもいい……もともとワシはあんまり乗り気じゃなかったし……他の奴は知らんが……」


 人間の国では神と崇められるドラゴンは巨大な身体を小さくしてそう言った。

 乗り気じゃ無い割には、「人を出来るだけ苦しめる殺し方」とか伝授されたんですけど?

 色々思う所はあるけど、旅に出ると言ったら父は旅に必要な装備や道具を用意してくれていた。


 今着ている赤い外套も、父の鱗を使って造られたものらしい。

 どこの誰がどうやって造ったかは聞かない。

 


 ――神獣


 そう呼ばれる父なら何が出来ても不思議ではない。

 高い知能と圧倒的な戦闘力から人間の国から神と崇められる魔獣。

 竜、狼、天馬、人魚、淫魔。それぞれで神と崇められる国があり、各自が人間の子を育てた。


 ――神獣の子


 それが今の俺の立ち位置だ。

 今から向かう『竜の国』はドラゴンの父を神と崇める国であり、五か国の一つである。

 楽しみだ。どんな世界が待っているのか。

 そして、他の『神獣の子』に会えるのか。

 

 会えたとしたら、彼らは当初の目的通り、人間を滅ぼそうとするのだろうか?

 まだ見ぬ世界と、まだ会わない他人への高揚を胸に、故郷の山へ背中を向けた。

 そして心の中で呟く。


『行ってきます。父さん』


 目的地はもう、目と鼻の先だった。


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