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俺と詩織のラブコメ記録(仮題)  作者: クロ
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変人達と

「では、行ってきます」

詩織ちゃんは、まるでこれから登山にでも行くのだろうかと疑うほどパンパンに膨らんだ登山用リュックを背負ってこちらを振り返る。

それに続くように、詩織ちゃんのスーツケースを引いていた奈緒も振り返る。

「くれぐれも千織様に無礼のないようにお願いします。もし何かあれば、由紀ちゃんを一族秘伝の黒魔術で呪い殺します」

「お前が言うと本当にやりそうで怖いよ」

「え?誰がいつ冗談だと言いましたか?」

「素で返さないでくれない?ほんとに怖い」

「つまり由紀ちゃんは、嫌がる千織様になにかする予定があると?」

「え!?」

奈緒の突然の発言に千織ちゃんが顔を赤くする。

さすが中学生、想像力がご達者で。

そんな中で奈緒は(なお)続ける。

「そう、例えば

『ぐへへへ、今日からしばらく二人きりだな』

夜になりいきなり狼と化した由紀ちゃんは千織様をベットに押し倒す。

『え?ゆ、由紀さん?なにを.......きゃっ!』

『なにって、男と女が二人っきり。この状況ですることなんて一つしかないじゃないか』

言いながら千織様のまだ成長しきっていない小さな胸を鷲掴みにする。

『ん....ゆ、由紀さん.......ダメ.....ですよ。ふぁっ!』

『何がダメなんだ?こんなにここ硬くしてさ』

『いや、言わないで........』

『さて、それではそろそろ直接可愛がってあげようか』

服をはだけさせると、小さくも確かに存在するその膨らみに目を奪われる由紀ちゃん!

そしてツンとその存在主張するようにあるピンク色の先端を凝視する。

『ゆきさん.......いい、ですよ?__________私をメチャクチャにしてください』

瞳をうるませ、頬を紅潮させた千織様はついに自分から由紀ちゃんを誘った。

『そんな可愛いこと言われたら俺、もう止まれないぜ』

そして由紀ちゃんはそのピンク色の蕾を________________」

「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!無いよ!?そんな展開絶対無いから、そういう話は辞めて!」

俺は慌てて止めに入る。

「何を言っているのですか?物語はまだ始まったばかりですよ?」

「そんな本気で不思議そうな顔をするな!俺はまだしも、ここには小学生と中学生がいるんだからな!」

その小学生と中学生に目を向けると、二人とも赤くなって俯いていた。

きっと俺も相当赤いのだろう。

顔が火が吹き出しそうなくらい熱い。

そして語った張本人、奈緒はというといつもの無表情のままだった。

だが、三ヶ月も一緒に暮らしてきた俺にはわかる。

さっきから奈緒は俺と目を合わせようとしない。

そして爪先で地面をコツコツと蹴っている。

こういう時の奈緒は、大概照れている。

どうやらあの内容は流石の奈緒も照れる内容だったらしい。

それもそのはず。

奈緒だって十七歳という思春期真っ只中の女の子なんだもん。

うん、今のは流石にキモイな。

しかし、奈緒にも可愛らしいところがあるじゃないか。

「そうですか、お土産は可愛い服がいいですか」

ヤバ、心読まれた!

これはきっと奈緒なりの仕返しなんだろう。

大変迷惑だけどね!

「とにかく留守は頼みましたよ?由紀ちゃん」

そう言うと奈緒はスーツケースを黒塗りの車のトランクに積み、自分は運転席に乗り込んでいった。

「ゆきさん、ちょっといいですか?」

可愛らしい無感情の声のした場所を見ると、詩織ちゃんがいた。

詩織ちゃんはちょいちょいと手招きをして、俺を呼ぶ。

あぁ〜可愛いな〜。

心癒されながら詩織ちゃんの元に行くと、詩織ちゃんは俺にしゃがむようお願いをした。

よくわからないまま詩織ちゃんが言う通りしゃがむと、詩織ちゃんの顔がアップになり、頬に柔らかい感触が押し当てられる。

思考が一時硬直する。

時間が止まったような錯覚に襲われ、一秒が何秒にも、何時間にも感じられた。

こ、これはまさか!

と考えた時には既にそれは離れた後だった。

詩織ちゃんを見てみると、赤くなって視線をさ迷わせた後、

「ゆきさん、行ってきます」

初めて見る人には分からないくらい小さな変化だったが、その時、無表情だった詩織ちゃんは確かに笑ったのだった。

そんなささやかな笑顔に見蕩れている内に詩織ちゃんは車に乗り込んでしまった。

俺はぼーっとする頭で走っていく黒塗りの車を見送った。




千織ちゃんを学園長室まで送り届けてから教室に入ると、背筋に寒気を覚えた。

振り向くと『(まつだやま)』が背後に立っていた。

「よっす、兄貴!」

「Die(死ね)」

「なんで!?」

「なんでだぁ?まさかお前、昨日のこと忘れたわけじゃないだろうな?」

「あれ?なんかあったっけ?あ、いや待て。思い出すからその(きり)を仕舞ってくれ!っていうかなんでそんなもの持ち歩いてんだよ!?」

「そんなの変態(おまえ)に襲われた時に刺すために決まってるだろう?」

「さも当然のように言わないでくれよ!」

俺は手に持っていた錐を鞄に仕舞いこみ、『奴』に侮蔑の視線を向ける。

「で、なんか用?」

「おいおい、そんな目で見られたら俺もその気になっちまうぜ?ちょ、待って!冗談!冗談だから錐を取り出さないで!」

「じゃあ、もうふざけるなよ?」

「わ、分かってるって。そんで本題なんだけど、なんと中等部に留学生が来るらしんだよ」

きっと千織ちゃんのことだろう。

ということは、こいつが言わんとすることもだいたい分かった。

「しかも、超美少女なんだってさ!というわけで後で見に行こうぜ!」

そんなことだろうと思ったよ!

思考が野生の獣のように単純すぎるな!

で、答えはもちろん、

「行くに決まってるだろ!」

いや、違うんだよ?

俺はそう、こいつみたいな変態から千織ちゃんを守るために行くのであって、他意はないんだよ!?

だってほら、奈緒から千織ちゃんのことは頼まれてるし、もし千織ちゃんに何かあったら俺が奈緒に殺されるわけだし。

うん、これは必要なことなんだよ!

自分に言い訳していると、始業のチャイムが鳴り響いた。

「じゃあホームが終わったら一緒に行こうぜ」

言い残して変態は去っていった。

今日のホームルームは異常に長く感じられた。


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