ゴールデンウィーク二日目 終了
いろいろあって数分後、お互いに頭が冷え、自己嫌悪から解放された頃、俺は詩織ちゃんに今日の報告をした。
「そうだったんですか。やっぱりゆきさんは優しいですね?」
目は合わせないが、詩織ちゃんはちゃんと俺の話を聞いてくれた。
「それと、今回はディフェルさんに感謝ですね。ゆきさんの女装姿、いえすみません。ゆきさんのちゃんとした服装が見られたんですから」
「詩織ちゃん?俺は男からね?」
反論したが、詩織ちゃんは聞こえていないふりをしているのか、口笛を吹く真似をしている。
まあ可愛いから許すけど。
「でもけっきょく、あやしい人は見つからなかったんですよね?」
「そうだね。でもそれが逆に怪しいんだよ。考えてみて。何十人といる人の中で、誰も怪しい人がいないなんて不自然だと思わない?」
クライアス邸にいた使用人は総計三十人前後。
それだけいれば怪しい人物の一人や二人見つかりそうなものだ。
だがそれが一人も見つからない。
つまり、勘付かれたと思って演技していた人物があの中にいるかもしれないということだ。
今回の乗り込みには目的が二つある。
一つは、普通に怪しい人物がいないかの調査。
もう一つは、種を蒔くことだ。
「それに俺の考えが正しければ、明日明後日で犯人を捕まえられると思うよ」
俺は確信めいた言い方で詩織ちゃんに言った。
「『それに俺の考えが正しければ、明日明後日で犯人を捕まえられると思うよ』ふっ、高校生探偵気取りですか?」
「うわっ!?」
詩織ちゃんが自室に帰ると、クローゼットの中からメイドお化け_________奈緒が現れた。
「な、奈緒?いつから………?」
「そうですね、『ゆきさん、入りますよ』のあたりからです」
「ほぼ最初からじゃねぇか!?」
待て、どうやって俺の部屋に忍び込んだんだ?
確かにさっき会った時は俺とは反対の方向へ向かったはずだぞ?
どんなに頑張っても俺と出会わずに、俺より先にこの部屋に来るなんて不可能だ。
「メイドに不可能はありません」
無表情なのに『ドヤ』という顔をしているような気がした。
時空間を飛び越えたとでも言うのだろうか?
て、ちょっと待った!
ほぼ最初からいたということはまさか…………。
「ええ見てましたよ?百合百合なキッスシーンを」
自分の顔に熱が上のがわかる。
あのシーンを全て見られていた。
変なスイッチの入ってしまった俺を見られてしまった。
「恥ずかしがる必要はありませんよ?由紀ちゃんの女装は本物の女性よりも可愛かったのですから」
ダメージを受けていた心に更なる追い打ちがかかる。
ダメだ。
このメイド、愉しんでやがる。
最近、奈緒の感情を読み取れるようになってきている俺にはわかる。
俺をいじる時の雰囲気は毎回愉しそうなものだった。
「言っておくが、あれは着替える暇がなかっただけだぞ?」
「では、なんで未だにその服装にままなのですか?」
…………忘れてた!
「いいじゃないですか。むしろ男性としての格好の方が違和感ありましたし」
ひどい!
俺の男としての威厳が右下降りだ。
「そもそも威厳もなにも無いじゃないですか?見た目からして」
「コンプレックスを的確に突くの辞めて!あと、ちゃっかり心読むの辞めよ!」
「はて、なんのことでしょう?」
確かに心を読んでいるなんて周りから見たらただの言いがかりだが、それを知っていて実行してくるからこのメイドはタチが悪い。
俺が奈緒に勝てる日は果たして来るのだろうか?
いや、きっと来ないだろう。
このメイドはあらゆる意味で最強だった。
『ふぅん、つまり誰もが怪しくなさすぎて、誰もが怪しいってこと?』
「そういうことだな」
電話の相手は佐陀町だ。
今日の報告をするために電話をかけたのだ。
「で、一応種は蒔いてきたから本当に怪しい人物がいたら明日にでもアクションを起こしてくると思う。それに、それとは別の線も調べてみるつもり」
『もう慣れたものだね〜。流石ユッチ』
「こんなことばかりに慣れても困るけどね」
皮肉交じりに言うが、佐陀町はそれを間に受けたのか、
『こっちとしては嬉しいかな?』
と返ってきた。
「これで報告は以上だ。明日、明後日でにはなんとかなりそうだから頼む」
『了解。じゃあまたね〜』
と電話が切れた。
「佐陀町は相変わらず、か」
あいつは多分、俺がなにをしても許してしまうと思う。
俺にはそれが辛い。
きっとそれが俺へに罰なのだろう。
さて、明日に向けて寝ますか。
俺はベットに横になって、眠りについた。




