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俺と詩織のラブコメ記録(仮題)  作者: クロ
詩織ファンタジア
15/64

詩織誘拐事件 合流


「乗ってください」


そう言ってバイクに乗った奈緒さんさんにヘルメットを放られたはいいけれど、なんで僕はこんなところにいるにだろうか?

僕と奈緒さんはコンビニに買い物をしに来ていた。

あの後、急いで詩織ちゃんを助けに行こうとした僕は、奈緒さんに「備えあれば憂いなしですよ?」と強制的に連れてこられた。


「凍ったジュースと…少○ジャンプを買ってください」


「何に使うんだ?」


特に雑誌。


「なにって決まってるじゃないですか。『こいつのおかげで助かったぜ』という生存フラグを立てようかと」


「防弾チョッキ!?」


「いいえ、本当はただ読みたいだけです」


殴りてぇー!

超殴りてぇー!

自分の仕える家の娘が誘拐されたというのになんでこんなに緊張感が無いんだ?


「あとはそうですね。カップ麺を買いましょう」


「…………なんで?」


だいたい予想はつくけれど、一応訊いておく。


「?カップ麺の使い道と言ったら食べる以外のなにがあるのでしょうか?どうぞお答えください由紀様」


楽しそうだな!この人!

昨日までは気づかなかったけれど、この人結構いい性格してやがる。


「奈緒さんってよくこんな性格悪くて詩織ちゃんに嫌われないな?」


「主の前では完璧なメイドですから」


親指を立てて、グッとしてくる。

ただし無表情で。


「でも、奈緒さんのそういう無表情で無感情なところ詩織ちゃんに伝染してるぞ?」


「いいえ、あれはわたくしの責任ではございません。なにせわたくしが詩織様の専属になったのはつい二年前ですから。ですから責任は前任専属メイドであるわたくしの母にあるのでしょう」


でもそれだとおかしなことが出てくる。

詩織ちゃんは奈緒さんの母親と奈緒さんを同一視しているとでも言うのだろうか?

つまり詩織ちゃんが生まれたのが十年前で、当時の奈緒さんはメイドを始めたばかりの8歳。

でもその時点で詩織ちゃんの専属に就いていたのは奈緒さんの母親。

ということは、詩織ちゃんは奈緒さんと奈緒さんの母親が入れ替わっていることに気づいていないことになる。


「由紀様の疑問はもっともです。しかし、わたくしと母は怖いくらいそっくりなんですよ」


見てください。と写真を取り出す奈緒さん。

そこに写っていたのは、奈緒さんと赤ちゃんだった。


「こっちが母です」


と指した場所には奈緒さんが無表情で写っていた。

…………?


「冗談だよな?」


「もちろん」


「だよね〜?」


「冗談じゃないですか?」


「変なところで間を空けるな!」


「てへ」


棒読で言われても可愛くないよ!


「とにかく、見ての通り私と母は非常にそっくりなのです。さながら影分身のように」


「双子のように」とは言わないあたり、流石奈緒さんといったところだ。


「ちなみに、わたくしの名前は奈緒ではありません」



「は?」


今、奈緒さんはとんでもないことをサラッと言った。

大声を出さなかったことを褒めて欲しい。

むしろ褒めろ!


「よくそれだけの驚きで済みましたね?」


あ、褒めてくれるんだ?

と思ったのもつかの間。


「心臓発作で死ぬくらい驚くと思ったんですが…………」


残念そうな顔で何てことを言うんだ?

まあ奈緒さんだから仕方ないけれど。


「この秘密を知ったのは由紀さんで三人目です。ですので死んでください」


「理不尽な理由をつけて殺そうとするのやめよ?それで、本名は?」


「教えると思ってたんですか?自惚れないでください」


ドSメイドの本領発揮ですか?そうですか。


「さて由紀ちゃんで遊ぶのはこのくらいにして、そろそろ出発しましょうか?お嬢様のもとへ」


やっぱり遊んでやがった。

なにはともあれ、僕たちは詩織ちゃんに付けられた発信機が示す場所へ向かうことになった。

…………こんなグダグダでいいのだろうか?

という心配を残して。






「あぁぁぁぁあああああ!!!!」


「っ!耳元で騒がないでくださいな。鼓膜が腐ってしまいます」


「だったらスピード少しは落とせよ!ってかホント何キロ出てんだよこれ!」


「たかだか120キロ程度で大袈裟なんですよ。舌を噛みたくなかったら黙っていてください」


普通に違法だよ!


「バイクの免許持ってたんだな!」


「えぇ、16になったと同時に取りに行きました。車よりも小回りが利きますからね」


教員から教習を受けている奈緒さんか…。

………。

…………。

それはひどく滑稽な光景だ。


「どうやら振り落とされたいようですね。いいですよ?このスピードで地面に落ちれば擦り剥いた程度では済みませんが」


「鬼だ…。ここに本物の鬼がいる」


何が恐ろしいって、この女なら本当にやりかねないところだ。


「ほれほれー」


「わっ!?ちょっ!おまっ!冗談でもそういう事やめろよ!」


「気持ち悪いですね。そんなにしがみつかないでくださいませんか?不快です。吐き気を催します。うっかり運転を誤っても知りませんよ?」


「待て待て待て!それだけは本気で勘弁してくれ!冗談抜きで!」


「では早くこの手を離してください。それで解決です」


「死ぬから!それ普通に僕死ぬから!」


「わたくしは一向に構いません」


「僕が構う!」


この人の、事あるごとに僕を消そうとするのが何とかならないのだろうか?

っていうかこの人の僕嫌いは本当に詩織ちゃんの婚約者って理由だけなのだろうか?

なんだかそれだけじゃないような気がするんだけど………今はそれよりも!


「それより発信機からはまだ信号は届いてるのか?」


「えぇ、ちゃんと届いてますよ。見ますか?」


そう言ってポケットから端末を取り出そうとして______


「待て待て!いいから!見なくていいから!頼むから運転に集中してくれ!」


「そうですか。それで?なぜ急にそんな事を今更気にするので?」


「いや、特に理由はないけど」


詩織ちゃんが心配で不安になったなんて言えるはずがない。

言えば絶対イジられる。

その上きっと暫くはネタにされる。

口は災いの元。


「ふふふ、由紀様にも可愛らしいところがあるではないですか」


「心を読むな!」


そう言えばこの人が笑ったところなんて初めて見た気がするな。

なんだよ、この仏頂面も笑えば少しは可愛いじゃないか。


「“少しは”っていうのは余計ですがね」


だから心を読むなよ。


「まあですが……一応お礼は言っておきます」


「ん?なんだ?まさか照れてるのか?あの無表情の仏頂面で性格最悪のアンタが一丁前に普通の女の子の様に照れちゃってるのか?ん?」


「なるほど。やはり死にたい様ですね。いいでしょうここで殺して差し上げます」


「ごめんなさい調子に乗りました」


「次はないですよ?」


「はい、ごめんなさい」


やっぱ怖ぇ。

一瞬でも可愛いかもとか思った僕がバカだった。

やっぱりこの人は根っからの悪魔だ。


「あ、それからその一々可愛いやら思うのやめてくださいませんか?率直に気持ち悪いです」


「なんだよ。褒めてるんだから素直に喜べよ」


「では訊きますが、仮に由紀様が超美少女だったとして_____」


「なんだよその死ぬほど嫌な設定」


「黙って聞いていてください。仮に由紀様が超美少女だとして、嫌いな男から“可愛い可愛い”と抱きつかれたらどう思いますか?」


「それは____」


それは確かに嫌だな。


「でしょう?それが今のわたくしの気持ちです」


容赦ねぇな…。


「ところで、もう10分もしない内に着くというのに随分と余裕ですね?向こうに着けば誘拐犯とぶつかる可能性だってあるというのに」


「う"」


確かにその可能性を忘れてた。

僕喧嘩の類は苦手だというのに。


「アンタはどうなんだよ?______って聞くまでもないか」


「えぇ、由紀様らしい愚かな質問でしたね。これでもわたくしは一通りの訓練を受けていますので心配には及びません。蟻であろうが、虎であろうが、人であろうが、はたまたゴ○ラであろうが、お嬢様に危害を加えるというのであれば如何なる手を使ってでも滅して魅せましょう」


ふふふ…と不敵に嗤う奈緒さん。

いや、流石にゴジ○は無理があるだろ。

しかも滅するって…。

滅する……って?


「最後にもう1度だけ確認します。もし誘拐犯と戦闘になれば怪我では済まないかもしれません。もしかしたら最悪な事態だって有り得ます。それでも行きますか?或いは_______お嬢様のために命を懸けられますか?」


確かに奈緒さんの言う通り、これから僕たちが行う事はそれだけの危険がある。

もしかしたら死ぬかもしれない。

でも、詩織ちゃんは僕にとってもう他人じゃない。

黙って見ているだけなんてできるはずがない。


「行くよ。こんな時に蚊帳の外なんて嫌だからな」


「……そうですか。では御自分の身は御自分でお護りください」


その時、気のせいか奈緒さんが笑った気がした。


「さ、見えてきましたよ。あの小屋の中のようですね。行きますよ」


そうは言うが奈緒さんは一向にスピードを落とす気配がない。

むしろスピードを上げているような…。


「ん?アレは…?」


一瞬小学生くらいの女の子とすれ違った気がするが…。

いや、気のせいだろう。

って!?


「ちょっ!前!前!前!前!前!壁!前!壁!壁が!壁がぁぁ!!」


僕たちを乗せたバイクは壁を破壊し、小屋の中へ突っ込んだ。

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