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第2話 4人の勇者

巨大な門をくぐると、そこには長い回廊があった。

老人は一足先に回廊に足を踏み入れ、歩き出す。

俺は少し狼狽えながらも、ゆっくりと老人の後に続いて歩き出した。


やや薄暗い気もする。

しかし、床には赤いカーペットがあり、天井の電球も高価そうだ。

おそらく、ここは既に巨大な城の中だ。

俺は巨大な城の入り口の祭壇に召喚されてしまったようだな。


「ここから回廊を歩き、螺旋階段を上がって行きます。」

「分かった。」


俺は素っ気ない返事を返した。

窓からの景色に釘付けだったのだ。

その光景は、やはり異世界とだけあって、日本のそれとは違っていた。

どちらかというと、中世ヨーロッパに近い感じだろうか?

歴史はあまり得意ではないから分からんが、白い建物が目立つ気もしないでもない。

見た感じ広くて綺麗だ。


「ここは城の中なの?」

「うむ。ここはレイアデン王国の王城の内部ですよ。」


レイアデン王国…やはり聞いたことのない国名だ。

どうやら本当に異世界に召喚されてしまったようだな。

確認が取れた。


「じゃあ窓から見えるのは…城下町ってこと?」

「そうですな。レイアデン王国は広くてですな~…」


老人の話を纏めよう。

レイアデン王国は、この世界で3番目に大きな王国らしい。

かつては召喚士が世界で一番多い国として知られていたらしいが、今ではその召喚士も数えるほどしかいないという。

商業も発展しており、食品系の商売が盛んだそうだ。


国王の名前はレイアデン。

魔術の影響で、もうすぐ120歳になるそうだ。


「え?この国に召喚士ってまだいるの?」

「そりゃあいますとも。」

「じゃあその召喚士に頼んで還してもらうってのは?」

「うーむ…わたくしは魔導師ですからいまいち分かりませんが…今度訊いてみてはどうでしょうか?」


それもそうだな。

これから旅に出るわけだから、色んな奴にあるだろうし、別に急いで元の世界に戻る必要もないわけだ。

まったりといこうじゃないか。


と、そんな悠長な考えに浸っていると、いつの間にか螺旋階段を上り切っていた。

窓から見れる絶景の余韻に浸りすぎて、螺旋階段を上っていることを忘れてしまっていたようだ。いかんいかん。


「ここが王の間でございます。国王はこの中におります。」

「ありがとー。」


俺は何の躊躇いもなく、王の間の巨大で荘厳な扉を開いた。

どうせ俺は勇者だ。

国王に気を遣う必要などない。


「…来たかね。」


中に入ると、そこは思ったよりも簡素な部屋だった。

確かに広い。教会堂のような広さと見た目。

しかし、もっと金とか赤が目立つのかと思ったが、意外と清楚な感じだ。


王の間の巨大な壇上の中心の椅子の前に、国王が立っていた。

白いもじゃもじゃの髭。この老人よりも量が多い。

そして、王の前には、俺に背中を向けて立つ3人の後ろ姿。

一番右の男は背中に大きなハンマーみたいなものを下げている。

真ん中の男は腰に長い太刀を二本下げていて、一番左の男は手に弓を持っている。


「さあ、君もこちらに来なさい。」

「おっす。」


国王に呼ばれ、俺はラフな返事をした。

俺の存在に気付いた男3人が、一斉にこちらを見る。

やばい、目が合った。


ハンマーを背負った男は、長めのツンツンとした茶髪。身長は高い。180㎝は余裕である感じだ。顔は優しそうな顔、さわやかだ。


太刀を下げた男は長髪で、後ろで髪を束ねている。

顔も怖くて、目が鋭い。いかにも侍っぽい感じの男だ。

身長は俺よりやや高いくらい…175㎝くらいだろうか?


弓を持った男はメガネをかけている。

サラッサラのストレートヘアーだが、割とイケメンかも?


「これで…勇者がすべて揃った様じゃの。」


やはり…この3人は勇者か。

老人が言ってたな。先に王の間にいるって…。


「では、4人全員揃ったところで自己紹介と行こうかのぉ。まずわしは、この国の国王であるレイアデンじゃ。」


国王レイアデンは、軽く頭を下げた。

俺もつられて頭を下げる。高校生にありがちだ。

朝会で、ステージに立った人が頭を下げると、慌てて頭を下げるタイプの人間。それが俺だ!


「では、お主らにも自己紹介をしてもらおうかの…まずはお主から…。」


そう言って、レイアデン王はハンマー男の方を見る。

ハンマー男は自分を指差し、「え?俺から?」と言いたげな顔をする。


「えっと~俺は笹野歩夢ってんだ。よろしくね~。」


なるほど、こういうタイプか。

ほのぼの男子…といった感じか。

のんびりしているが内に何やら熱い闘志を燃やしてる系男子だ。

高校生の女子は、こういう男子のギャップに弱い。


「アユムだの。では次…おぬし。」


レイアデン王は太刀を下げた男を見る。


「…片桐大だ。」

「マサルだの。」


こいつは面倒臭そうなやつだ。

寡黙というか、冷静沈着というか…団体行動には向いてなさそうなタイプだな。

クラスの女子が「あいつ誘う?」「え?あんた言ってよ~!」とかいうやり取りをやらざるを得ない状況を作る系男子。


「次はお主じゃ。」

「僕は石田誠。高校2年生です。」

「コーコー…?」

「はい。中学校卒業者に高等普通教育および専門教育を施すことを目的とする学校のことです。」

「ふむ、分からん。」


どうやら、この世界には高校…という概念はないようだな。

そもそも学校はあるのか?いや、さすがにあるか…。


「では最後にお主じゃの。」

「おっす。」


レイアデン王は最後に俺を見る。


「えっと…早乙女傑です。」

「スグル…お主は確か女子(おなご)のはずじゃ…。」

「あ、えっとですね…。」


俺は何かしらごまかそうとするが、いい案が思い浮かばん!

咄嗟に老人を見る。老人は苦笑いをしながら口を開く。


「実は…召喚士が召喚に失敗してしまいまして…男を召喚してしまったんです…。」

「あははは。」


俺は適当な笑いでごまかした。

すると、ハンマー男のアユムが口を開いた。


「女の子いないとつまんないなぁ~…ってか君ほんとに男?」

「男だ俺は!なんなら証明してやろうか!?」

「冗談キツイな~…俺そういう趣味は無いし~。」


なんかこの男、口調がすごくラフだ。

憎めない感じが嫌いじゃない。友達多そうだな。


「まあいい。召喚してしまったものは仕方がない。お主には勇者業に勤しんでもらうぞ。」

「おっす。」


勇者業か…。


「…お主らの目的は女神の神託にあった”災厄”の阻止じゃ。」

「…災厄の阻止といっても、具体的に何からすればよろしいのでしょう?いつ、どこで、どんなことが起こっているのかも分からない状態じゃ、いくら勇者と言えども、手の施しようがない気がしますが…。」


マコトがハキハキと語り出した。

しかし、彼が言っていることは立派な正論だ。

まず、何から手を付けていいかが分からないな。


「うむ…そこでだな。お主らにはこれから旅に出てもらう。もちろん効率を考えて四手にわかれてだ。」

「え?!」


俺は驚きの声を上げる。

せっかく選ばれし勇者が4人揃っているのに、わざわざ別れるのか…。


「ただ無論一人でとは言わん。一人一人に魔導師を2人ずつ付ける。」

「俺んとこは女の子がいいなぁ~…。」

「…うむ。これでもお主らは世界を救う身…できる限りの要望には応えていこうと思う。他の者も、何か要望はあるかの?」


レイアデン国王は俺ら4人にそう尋ねる。

気の利いた国王だ。

当然ではあるが、ここまで配慮してくれるとありがたいものだ。


「…俺の所には、剣術を使える魔導師をよこせ。」

「…うむ、了解した。」


マサルの所には剣士が付くようだ。


「じゃあ僕の所には…そうですね……体力のある力持ちの人と…背の高い人をお願いできますか?」

「分かった、いいじゃろう。」


みんなそれぞれの要望を言っている…。

形振り構わず言っているな…まあ勇者だから許されるんだろう。

俺も何か要望しようと思ったが…特にないんだよな…。


「俺は誰でもいいや。」

「了解した。それで、お主らには国から銀貨1000枚を餞別として渡そう。」


そう言って、レイアデン国王は、一人一人に銀貨の入った袋を手渡した。

結構重い。

しかしこれは大事な軍資金だ。しっかり保管しなくては…。


「あーそうじゃ。もう一つステータスの説明があったの。」

「ステータス?」

「リハルド、任せるぞ。」


レイアデン国王は、そう言って先ほどの老人を呼んだ。

どうやら老人はリハルドというようだ。

リハルドはゆっくりと壇上へと上がる。


「魔導師のリハルドです。わたくしからはステータスの説明をさせていただきます。」


そう言うと、リハルドは何やら目を瞑りだした。

すると、リハルドの目の前に何やら文字が浮き出した。宙に浮いてる…。


「おおぉ!」

「これはステータスと言って、その者のレベルやスキルを確認する技です。」


確かに、リハルドの前の文字には、そういう類のものが書いてある。




リハルド Lv.57

【職業】 魔導師

【装備】 雨の杖 ドラゴローブ 

【属性】 水

【スキル】 天候予想




まるでゲームみたいだな。

しかし、こうやって見ると分かりやすくていいな。


「これは貴方方も見ること可能です。頭にステータスを思い浮かべてください。」


そう言われて、俺は一目散にステータスを思い浮かべる。

すると、ステータスが脳裏を微かに過ぎった瞬間、目の前に文字が浮き出す。

他の3人もうまくいっているようだ。


「うおおっ!」



勇者スグル Lv.1

【職業】 なし

【装備】 生命の剣

【属性】 なし

【スキル】 生命保護



勇者アユム Lv.1

【職業】 なし

【装備】 退魔の槌

【属性】 なし

【スキル】 退魔



勇者マサル Lv.1

【職業】 なし

【装備】 退魔の太刀

【属性】 なし

【スキル】 退魔



勇者マコト Lv.1

【職業】 なし

【装備】 退魔の弓矢

【属性】 なし

【スキル】 退魔




全員のステータスが一気に表示される。

重なってはいるが、なぜか全部綺麗に見える。

不思議なこともあるもんだ。


「わたくしからはこんなものです。では皆様、一度控室の方へ行きましょう。明日また召集があるでしょう。」


そう言われ、俺たちは控室に向かうことになった。



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