表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

プロローグ

第34回校内男子女装大会。

俺の高校で年に一回行われる代表的な行事の一つである。

その名の通り、高校の男子たちが、あらゆる女装をし、その美しさを競う大会だ。

俺は、今年も決勝の舞台に立っていた。


「さぁ!去年のチャンピオン!2年3組早乙女 (すぐる)!今年もこの舞台に立っているぞォ!」


大会の実行委員長がマイクを持って張り切って叫んでいる。

それに応えるかのように、観客席からは歓声が鳴り響く。女子の声が目立つ。


俺の名前は早乙女傑(さおとめすぐる)

去年に引き続き、今年もこの大会の決勝の舞台に立っている。

去年は確か票数が断トツで優勝だった。

小さいころからよく、「色が白い」だとか「目が大きい」だとか「手足が細い」とか言われてた。

俺は1年生の時(去年)に、クラスの委員長に大会にエントリーしろと勧誘されたんだ。

もちろん最初は断ったけど、各クラス一人出ないといけないらしい。

俺は渋々と女装をしたものだ。

茶色のショートヘアーのカツラを被り、女物のスカートとかを着込んだ。

細身の俺は、女性ものの服がピッタリなのだ。


去年優勝してから、女子に異様にモテるようになった。

告白だってされた。もちろん全員もれなく振ったが…。


俺の家は居酒屋を経営している。

暇な時は、そこで両親にただ働きをさせられるのだが、居酒屋にはエロ親父が多い。

俺は女と間違えられて尻を触られたり、若いDQNにナンパされたりした。

そんな時は、下半身を強調すると、相手が引いてくれる。


「端正な顔立ち!純白の肌!円らな二重!細腕細足!しかしこれでもテニス部!期待の星、早乙女傑には、いったい何票入る――!?」


ステージ上の電光掲示板に、票数が表示される仕組みだ。

しかしまあ、こんな掲示板に金を掛けないでほしいものだ…。


3カウントで、電光掲示板には票数が表示された。

912票。この学校の生徒数は960人だから、ほぼ全員だ。

またしても、俺は優勝してしまった―――――――。


「来たァァァ!優勝は…2年3組早乙女傑!奇跡の二連覇です!!」


実行委員長の叫びの直後、ステージ中に紙ふぶきが舞う。

そして、生徒会長が俺に花束を贈呈。実にやりづらい。

俺は生徒会長からマイクを渡され、ここで一言何か言わなきゃいけないようだ。

俺はマイクを軽く握り、目を輝かせてこちらを見る女子たちに溜息を吐く。


「えっと…去年も言ったと思うんですが…俺は普通に男だし、別に嬉しくもなんともない…です…。」


すると、そんな俺のコメントに対してヤジが飛ぶ。

「可愛い!」だの「照れんなって!」だの…。

半強制的な参加に、必然的な優勝。

これ見よがしに調子に乗ろうなんて、思ってない。


「そういうことなんで…もう帰っていいですか?」

「ちょっと待ちたまえ!恒例のあれがあるだろ、傑ちゃん!」


また来た。実行委員長は嘗め回すように俺を見て、そう言う。

恒例のあれとは、去年もやらされたから分かる。

この大会の優勝者は、記念写真として最後に可愛いポーズをしなければならないのだ。

これはもう、暗黙のルールというか…そんな感じである。


「じゃあ傑ちゃん!みんなの期待に応えてあげて!」

「……。」


やりたくない。

今すぐステージから飛び降りて逃げ出したい気分だった。

しかし、ここで逃げ出せば「男のくせに情けない」だの言われる。

こいつらは”女として”俺を持て囃してる癖に、そういう時だけ”男のくせに”と言い出す。

論外だ。やってられるか。


「やってられっか…。」


俺はマイクをステージに叩き付け、舞台裏から体育館を出た―――。

場内はざわめく。これには、さすがの実行委員長も唖然としている。





俺が出て行ったことで、他の生徒たちは裏切られた…と思ってるだろうな。

憮然とした表情を浮かべる生徒たちを想像するだけで、怒りが増す。


「俺は男なんだ…。女じゃねえ、男だ。」


俺はカツラを脱ぎ捨て、体育館脇の自販機の陰に座り込む。

すると、身体に異変が起きたことに気付く。


「ん?」


手足が煙のように消えていくのだ…。

一切状況が呑み込めない。俺はその場に立ち上がる。


「は?え?…なになに?」


その瞬間、俺は風と共にその場から消えてなくなった――――。


御愛読ありがとうございます!


コメントなども気軽にもらえると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ