第六話
「赫っ!聖花さんをか、か、返せっ!」
震えて呂律が回っていないが彼はなんとかそこまでを言った。
「誰かと思えば昨日の片輪か。武器も持たずに死にに来たのか?」
「ぶ、武器ならある!」
そう言って彼が取り出した物に皆が一斉にどっと笑った。
なんと鉈ではないか。
「ふざけるなよ若造。俺様がそんなものでやられると思っているのか」
「あっ!」
小単は難なく小手を捻り上げられてしまった。痛さのあまり落とした鉈を赫鉄手が拾う。赫は小単の肩口をむんずと掴むと部下の中へ放り込んだ。
無様に尻餅をつく。
「きさまには借りがあるからな。おいっ、たっぷりかわいがってやれ」
そう部下に命じ、彼は手にした鉈を小単目がけて放った。
唸りを上げ小単の頬をかすめる。あまりの正確さに彼は蒼くなった。
踵を返し小屋へと入っていく赫鉄手の陰に聖花が見えた。
「聖花さんっ」
追いすがろうとする彼の足を部下の一人が引っ張った。
「何が聖花さんだ。物語の中の英雄にでもなったつもりか?この餓鬼がっ」
寄って集って殴られる中、彼は聖花の悲鳴を聞いた。
脳が揺れた。彼は大きく喘いだ。
何かが彼の中で弾け飛んだ。
勢いよく蹴り上げた足によって一人の男の脳が花火のごとく爆ぜた。
「うわっ?!」
赫の配下達が驚いて飛び退く中、小単はゆっくりと起き上がった。
辺りを見回し、荒小屋に視線をやると大音声で叫んだ。
「卑怯なりっ、赫鉄手!そのような行為でしか己の名誉を守れぬのかっ」




