第五話
翌日の暮れ、聖花は喜々として町から家路に着こうとした。
母のための良い薬が買えたのと、店の主人が余った饅頭をくれたからであった。
橋の上まで来たとき前方に何者かが立っているのに気付いた。
「誰?」
それが昨日の赫鉄手の配下と知って彼女は身構えようとした。後ろからも迫っていることが分かったとき、聖花は後頭部を力一杯殴られ気絶していた。
「聖花を見なかったかい?」
賓は小単を呼び止めた。
「いいえ、まだお帰りになっていないのですか?」
「うむ。そのようなんだが何かあったんじゃなかろうな。昨日あんなことがあったんだし・・・」
「僕、捜してきます。でも聖花さん相手じゃ向こうの方が恐がると思いますけど」
「ははは、そうかもしれんな」
小単は家を出ると臙脂に染まった道を町の方向へ駆けていった。
橋を渡ろうとしたとき、饅頭の入った紙袋と刺繍の入った小さな鞄を見つけた。
それが聖花の物だと分かったとき、彼は音を立てて血がひいていくのを感じた。
聖花が目を覚ますと湿った床の臭いが鼻をついた。
どうやら町はずれの無人小屋のようだ。
「う・・・」
「目が覚めたようだな、お嬢ちゃん」
聖花は頭の痛みと手足に食い込んだ縄の痛みに呻いた。
「赫鉄手、仕返しのつもり?こんなことをしてただですむと思ってるのっ」
「どうもなりゃしねえよ。あんたさえ黙っていればな」
「あたしが黙ってると思うわけっ。役所へ突き出してやるわよ!」
「相変わらず口の減らねえ女だ。その威勢も今のうちだけだぜ」
赫鉄手は立ち上がりずかずかと近寄って来ると聖花の頤に手をかけた。
「っ!」
あっという間に猿轡を噛まされてしまった。
「舌を噛まれると困るからな」
聖花は蒼くなり悔しさで涙が出た。
その時。
「な、なんだおまえはっ?!」
外で部下が頓狂な声を上げる。
さらにひどくなる騒ぎに赫鉄手は舌打ちをすると戸を乱暴に開け放った。
そこにいたのは小単であった。




