第三話
昼だというのに客は少なく、賓は溜息をつく。
その時数人の客が入ってきた。
「いらっしゃい」
そう言いかけ彼はそのままの体勢で固まってしまった。
入ってきたのは最近その悪名高い無頼漢、赫鉄手と子分である。
「なに見てやがる。とっとと酒持ってこいっ」
赫鉄手は怒鳴るとどかりと椅子に腰を下ろした。彼らが入ってきたおかげで数少ない客達は早々に出ていってしまった。
「は、はい、ただ今」
そう言って奥に引っ込んでいく兄を聖花は情けなく思った。
ずいと男達に近寄り大声で
「こういう場所で食事をするときは礼儀を弁えなさいっ」
と言った。
「なんだあ、このガキは」
「聖花っ!す、すみません妹がとんだ非礼を・・・」
「兄さん何を諂っているの。こんな奴等ただのゴミ野郎じゃない」
この一言に赫鉄手等全員が立ち上がった。
「お嬢ちゃん何だって、俺様がゴミだと?」
「ええそうよ。肩を怒らせて威張りくさって怖がるとでも思っているの?怖がるのは犬くらいなものだわ」
「このアマ!」
掴みかかろうとする数人の子分をひらりと躱すと聖花は表へ飛び出した。
「店の中で暴れないでちょうだい」
「糞餓鬼が痛い目にあいたいようだな」
赫鉄手は腰の刀に手をかけた。
聖花は内心やばいと思ったがにっと笑ってみせた。
「あっ危ない!」
後方から声とともに盥が飛んできて赫鉄手は頭から水浸しになってしまった。




