9章3話「実は」
『どんぐりの会』から聞く所によると、僕達はどうやら勘違いしていたようだ。
「――――――君達は勘違いしているな。
だから、話しておこう。この物語がどう間違っているかと言うのを」
『どんぐりの会』、アサセノス・ナハルーパ。彼が語った真相と言うのは、僕達が聞いた【『どんぐりの会』がヤヤを誘拐した】と言う話とは違っていた。
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事の発端は、ヤヤが飲んだ2つの薬が原因である。リクミ先生に貰った水、『泉水』と準備会のテセウス・タイタニックから買った魔力増強薬、『エナジー・リキッド』。
『泉水』は魔力を上げるための水であり、『エナジー・リキッド』は魔力を増強するための薬。本来、『エナジー・リキッド』は水で溶かす事によって飲んで魔力を上げるのだが、ヤヤはそれを『泉水』と言う魔力増強水に溶かして飲んだ。そして、その2つをかけ合わせる事によってヤヤは異常なまでに魔力が上がってしまった。
それによって、ヤヤは制御不能状態になってしまった。そんなヤヤを彼らは依頼によって連れて来て、ヤヤを制御するように実験していた。アサセノスとシヴァが中でしていたのは、ヤヤを制御する事で、他の4人はその警護。
つまり、僕達はヤヤを救いに来たように見えて、実はヤヤの正気を取り戻すのを邪魔していた、
ただの厄介者でしかなかったのだ。
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「と言う訳で、『どんぐりの会』はこの件から手を引きますね」
あっさりと。
説明を終えたアサセノスはあっさりとそう言う。
「お、おい! こんな状況でほっておくのかよ!」
「実はそうも言ってられないのだよ。ディオルーさん。
僕達は確かに依頼を受けて、ヤヤを自分の手で膨大な魔力を制御できるようにした。けれども、ああなってしまった。だから、もう無理。命あっての物種だからね。死んだら意味無い」
「甘いけれども、それで良いと思いますよ! 私は! 全面的に賛成!」
「スイーツ(笑)は逃げたいだけだと理解」
「コヨルちゃんは黙ってて!」
と、シワコとコヨルが言い合っているのをガイオンが止める。話を続けると言うアサセノス。
「あのアジトが無くなるのは痛いけれども、命が大事。
どんな大切な物だろうとも、命には代えられない。君達も自分の命を守るために彼女を犠牲にするのが、正しい選択だ」
「……そんなの」
「ボクには受け入れられませんよ……」
アトアグニさんとメンルリが言ったのに、対してクナピトが「それが大人と言う物よ」とお姉さんぶった口調でそう言う。
「君はどうだい、レンラ君?
彼女を救いたいかい? だったら、命を懸けるしかないね。今の彼女は殺戮兵器、止めるのには覚悟が必要だよ」
「覚悟……覚悟なら最初から決まってる。彼女を助けるって」
その言葉に満足したのか、アサセノスは小さく頷いて『どんぐりの会』の連中を連れて去った。そしてアスクムがヤヤの襲来を告げる。




