9章2話「誘拐って……」
「……ピピピ。『かの炎は――――――』」
と、宙に浮かぶヤヤは呪文を詠唱し始める。呪文の紋様が宙に浮かんで、その紋様に魔力が集まって行く。
「『―――――――――敵をせん滅す』。ピピピ……」
ヤヤの詠唱が終わると共に、宙に浮かぶ紋様から金色の巨大な拳が現れる。そしてその拳は地面へと落ちて行く。
「ちっ―――――! シヴァ、あるんだろう!?」
「ガイオンの言う通り、肯定する意思を我は持つと答えるために、その機械を用意しよう」
シヴァはそう言って、縛られた手で何かを操作する。操作するとシヴァの白衣から何かが飛び出して、飛び出した物はその巨大な拳に向かって行く。
「展開、世界制御!」
シヴァの言葉と共に白衣から飛び出したその物体、宙を飛ぶその箱は空中で巨大化してその金色の拳を防ぐ。金色のコブシは肥大化した箱によって防がれていた。
「甘い攻撃だったから良かったですね、シヴァさん。甘くない攻撃だったら……どうなっていた事か」
「いや~、シワコちゃん。あれは普通に危ない攻撃だと思うわよ?」
「スイーツ(笑)、クナピトさんに同意します。あれは普通に制御出来ていないだけだった、それ故に甘くない攻撃だったと思います」
「こ、コヨルちゃんまでスイーツ(笑)、扱いなの!?」
と、クナピトはそう言って、コヨルとシワコに怒る。ガイオンはそれを呆れた表情で見ていた。
「アサセノス、お前が唯一縛られてないんだから、俺らを助けろ」
「そうだな。僕もそう思っていた所だ」
そう言って、自然な様子でアサセノスは仲間である『どんぐりの会』の面々の縄をほどいて行く。
「お、おい ! 開放するな!」
「……そうです。折角、捕まえたのに」
ディオルーとメンルリの2人アサセノスにそう文句を垂らす。アサセノスは反論する。
「今の状況を見て、それを言う? 僕が言うのも何だけれども、場違いでしかないよ?」
「それを君が言うんですか? ボクが見るに、今は遊んでいる暇はないとは思いますが」
「そうですね」
アスクムとメンルリの2人が反論するが、アサセノスはそれは関係ないと言う。
「今はそう言う場合じゃないだろうに、さっさと逃げないと死ぬよ?」
「だ、誰が誘拐犯の言う事なんか!?」
ディオルーの言葉に『どんぐりの会』の連中はきょとんとした顔をする。
そしてそのリーダーであるアサセノスが彼らの疑問を代表として口にする。
「誘拐って……誰の?」




