9章1話「……あぁ、失敗してしまった」
「いや、負けてしまうとは情けない」
と、アインシュタットから下ろされたシヴァ・バスレイヤは言う。勿論、縄付きだ。こいつに動かれると色々と面倒だからだ。またしても敵としてアインシュタットのような、妙な機械を使って攻撃されると溜まった物じゃない。
僕達はそう判断して、シヴァの縄は他の連中よりも念入りに縄で縛って置いた。
「ようやくここまで来れた……」
こうして改めて考えてみると、異能が厄介と言うよりかはその戦い方が厄介と言う連中ばかりの『どんぐりの会』。最初の方はただの役に立たない異能保持者集団だから、倒すのも簡単だろうなとは思っていたが戦ってみるとその強さはなかなかに強かった。
「でも、残っているのは後は戦闘向きでは無いアサセノスと言う事でしょ?」
アスクムの言う通り、後残っているのはアサセノスと言うリーダー格だが、どうも捕まえた奴らの返答からするとどうも弱いようだ。
「リーダーであるが、アサセノスは弱いな」
「弱いですね~」
「甘々すぎるくらい、アサセノスは弱いです」
「屈強にして強靭な身体を持つ……そう言う事と対極な場所に居る男よ、あやつは」
「リーダーのアサセノス様、最弱設定」
と、5人は揃って同じ事を言っていた。しかも、嘘なんかではなくて本当に、素な表情で言っているのだから多分そうなのだろう。
どうやらアサセノスはリーダーながらも、他の5人とは違うようである。
「……まぁ、弱そうです。けど、警戒」
と、アトアグニはそう言っている。
「そうよね、戦いはいつだって深刻よ」
「ボクもそう思います。弱くても戦い辛い人は居ます」
ディオルーとメンルリの2人もそう言う。僕もそうだなと言いつつ、皆で『背倉辺総合株式会社』の中に入ろうと入口へと向かって行く。
そうしようとして、いきなり音が鳴り響く。
大きな音と共に、窓が破られつつ、アサセノスが外に出て来た。
「「「「「えっ……?」」」」」
僕達はアサセノスが窓から出て来たのを驚きつつ、他の『どんぐりの会』の5人の面々はそれを見て驚いた顔をする。そしてアサセノスが地面に落ちて、強い衝撃と共に地面に叩きつけられていた。
「……あぁ、失敗してしまった」
と、アサセノスは小さく呟いていた。そしてその窓を破って別の人間が現れる。そしてそいつは呪文を作り出していた。
「……あいつは」
そう、宙に浮かんで魔法の詠唱を始めているのは僕達が助けるべき女性、ヤヤだった。




