8章8話「萌えて」
----アトアグニ・メンルリ組――――
クナピト・モナザの異能、『色彩加工』。その異能の効果は髪と瞳の色を変える能力である。色を変える事が出来るけれども、彼女の異能はただそれだけでしか無かった。
前にレンラの魔剣を『色彩加工』によって封じた事があったが、あれは例外中の例外である。レンラは魔剣の一次開放と髪と瞳の色を連動して解放の意味合いを持たせていたから、色を変えられてレンラは精神が揺れてしまって一次開放を維持出来なかったと言うだけである。
クナピトの能力は本来、髪と瞳の色を変えるだけでそれ以上の事は何も出来ないのだ。
何の意味もない能力と論じられても可笑しくはない能力ではあるけれども、それでもクナピトが異能を使う理由は
――――――――自身のモチベーションを上げるために。
「ううん♪ やっぱり黒い肌のロリなダークエルフも良いけれど、透き通るような肌の隠れ巨乳ちゃんも捨てがたいわね♪ あぁん、2人ともまとめて食べたい♪」
そう言いながら、クナピトは槍で的確に2人を狙う。それを防いでいるのは魔法剣士であるメンルリであり、アトアグニは一瞬で距離を取り、クナピトに狙いを定める。
「……これで!」
アトアグニが放った弓矢は、一直線にクナピトの死角からクナピトの肩を狙って放たれていた。
「あぁん♪ けど、意味はないわ」
しかしその死角へと放たれた弓矢を、クナピトはあっさりと防いでいた。その一瞬の隙をついてメンルリは魔法を唱える。
「――――――火の鳥!」
火炎の塊が鳥の形を模してクナピトへと飛翔するが、それをクナピトは槍を豪快に振り回して防いでいた。
「……なんて強さ」
「異常とまで思えるよ、ボクからしたら」
普通、2人の人間を相手にする時、人は2人ともに集中し続けてはいられない。必ずその集中力は途切れる。激しい近接戦が多い戦闘にとってはその集中力が切れた方からやられていく。それが世の常だ。アトアグニとメンルリはシワコとコヨルを相手にして疲れから集中力が若干下がっているとは言ってもまだまだ集中力は高い。そしてクナピトも2人をまとめて相手してこれほどまでに勝てるほどの力量を持ち合わせてはいない。むしろクナピトの実力は2人に比べたら若干だが劣っている。
これはクナピトが弱いと言う事では無く、エルフであるため森で激しい戦闘を経験しているアトアグニと、天才であるメンルリが強すぎると言う話なのだ。
これだけ聞くと、何故クナピトが2人を圧倒出来ているか、疑問に思われるだろう。
その答えは簡単だ。
「私はあなたがたに萌えている。故に私は負けないの」
クナピトは変態だ。女性の姿を見てコスプレしたいと思うタイプの、むしろ男性でも可と思うくらいの変態だ。それ故に、美少女であるアトアグニとメンルリをコスプレさせたいと言う気持ちで、彼女の集中力は、2人のそれを大きく凌駕していた。
「さぁ、さっさと私のモデルとして、制服やらバニーやらを着て貰うわよ」
クナピトは自身の欲求を満たすため、彼女達を倒すため、槍を強く握りしめていた。




