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魔剣使いとハーレムと  作者: アッキ@瓶の蓋。
第1章 強気少女との闘儀
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1章6話「これからよろしくね、レンラ」

 目を開けると、そこには整った顔立ちにいつもは元気そうな瞳を浮かべているヤヤ・ヒュプオンの心配した顔だった。

 僕、レンラ・バルトレンジはなんでこんな状況になっているのか分からずに混乱しているけど、一応確認するように彼女の名前を呼んでみる。



「……ヤヤ?」



「……! レンラ君! 気がついたんだ!」



 僕が声をかけるや否や、先程までの寂しげな表情とは売って変わって、安心しきったような顔を見せる。



「ここは……」



「保健室だよ? 闘儀(とうぎ)の最中に倒れたの、覚えてない?」




「あっ……。そう言えば……」



 確かに闘儀の最中に乱入者、ラートアン・フォルトキジャの乱入によって闘儀は中止。僕はラ・テラの能力を使って、力を消耗して倒れちゃったんだった。

 どうりで僕の寝ているこの白いベットも見覚えがあるなと思っていた。



「全く……。君というのは馬鹿という言葉に尽きるね」



 ふとそんな声が聞こえてそちらの方を向くと、黒い眼鏡とシルクハットが特徴的なアスクム・フレイアトの姿があった。



「君の事は良く知ってるつもりだったけど、まさかここまで馬鹿だったとはね。

 5つある刀のうち、最も消耗が激しいラ・テラの1次開放を使うとはね」



「仕方ないだろ、他の刀に取り替えてる時間は無かったんだから」



「まぁ、良いけどさ」



 どっこいしょとベットに腰掛けるアスクム。



「ラートアン・フォルトキジャは後から魔法警察(まほうけいさつ)に連絡しておいたよ。ちゃんとあっちの方で処理してくれるってさ。

 まぁ、騒音罪と騒動罪、器物破損罪くらいにしか罪に問われないから、厳重注意くらいですぐに警察からは解放されるだろう」



 魔法警察とは、この世界(アアノス)において罪人の対処や事件調査などを行う組織である。

 まぁ、厳重注意でも受けた方にしたらかなりのダメージになるほど、あそこの組織は厳しいらしい。



「……ん? あれだけ暴れて、厳重注意? そりゃ可笑しいだろ」



「あのね、闘儀妨害、ステージの破損くらいが主だった彼の罪だよ?

 君も、あのディオルー・セレネオスも主だった怪我はない。あえて言うなら軽い脳震盪(のうしんとう)だと、担当した回復術師(ヒーラー)はぼやいていたよ」



 時計を見ると、気を失ってからまだ1時間くらいしか経っていない。なるほど、被害者の怪我が大した物じゃなかったからそこまで罪が重くならないのか。納得である。



「うぅ……。で、でも! 私は心配で心配で!」



「ヤヤ、その気持ちはありがたく貰っとくよ」



 ヤヤは本当に良い子。ヤヤの気の良さをアスクムにも見習って欲しい物である。爪の(あか)(せん)じて飲ませるか?



「むしろその前に行われた3年1組対2年2組の試合で発生した生徒の痺れの方が重かったね、症状としては。

 安心しろ、君もセレネオスさんも今日はこのまま帰れる」



 そう言って、保健室のドアの前に指を指すアスクム。そこにはツインテールの明るい色の髪が忙しなさげに動いていた。

 あぁ、なるほど、ね。



「さて、ヤヤ・ヒュプオン。僕達はそろそろ(おいたま)するとしよう。レンラ君の元気な姿も見れたし、明日から普通に学校に通えるだろう」



 ベッドから立つなり、ヤヤに一緒に帰るよう催促するアスクム。



「……えっ? でも心配ですから、一応一緒に……」



「この写真、レンラ君に見せて良いのかな?」



 そう言って、アスクムが懐から『ヤヤ』と書かれた黒い袋を取り出す。



「そ、それは! か、返してください!」



「やっだよーだ」



 ヤヤは途端に顔を真っ赤にしてアスクムを追って、廊下を走って出てしまった。



「さて、と……」



 折角、アスクムがお膳立てしてくれたんだ。ここで張り切らないと。

 僕はかけてあった制服を羽織り、椅子の上に載っていた鞄を手に取って、廊下の外に向かう。



「よっ!」



「……元気そうですね」



 保健室の扉の前には案の定、鞄を持ったセレネオスさんの姿があった。






















 とことこと、2人一緒に道を帰る。

 空はもうすっかり夕焼けによって赤色に染まっていて、ほんの少し冷たい風が身体の熱を取り除いてくれてるように感じる。



「しっかしまぁ、良かったな。2人とも無事でさ」



「学園側の調査だと、あのステージの破損は建設側の失敗(ミス)だったみたいよ」



 と、2人で今日の出来事について話し合う。

 そうか。僕はあのステージの破損からあの衝撃波が危険だと思い、セレネオスさんの元に向かっていたのだがどうやら(ラートアン)の攻撃による破壊ではなかったんだな。



「それよりも……私としてはゴーレムの腕の方が気になってるんだけど」



「あぁ、あれは1の太刀、ラ・テラの1次開放による効果だよ。僕の持つ5本の魔剣はどれも能力が強いからさ。封印を施して力の一部を制御してるんだよ。

 勿論、君との勝負に手を抜いた訳じゃない。僕が手に入れた時には最初から封印された状態だったんだよ」



 1次開放。あれは魔力によって魔剣に施された封印を破る魔法だ。

 ゴーレムの左腕はその時の魔剣、ラ・テラの魔装の効果という奴だ。



「5本の魔剣? って事は、あの刀(ラ・テラ)と同じやつがあと4本もあるの?」



「まぁね。ウナ・コレンテにウナ・フィアマ、ツービネとイ・シエリの4本だ。どれも業物(わざもの)だけど癖が強くてね」



 まぁ、それはそれで気に入ってるけど。

 僕が魔剣の名前を並び上げると、



「……呆れた。そんなに簡単に自分の武器の情報を教えて良いの? 私はあなたと戦いたいって言ってるでしょ? そんな人間に情報を与えるなんて、あなたは馬鹿ね」



「馬鹿、か」



 アスクムにも言われたよ。僕が馬鹿だって。まぁ、使い方は若干違うけど。



「別に良いさ。友達との間柄にそこまで気にする筋合いは無いよ」



「……友達」



 そう聞くと、セレネオスさんはその言葉を確かめるように小さく呟いた。そして、こっちをその青い大きな瞳でこちらをじっと睨みつける。



「あんた、友達ってそんな簡単に……。まぁ、良いわ。私もあんたに友達になる事に別に異論は無いし」



「そうか、それは良かった」



 断られたらどうしようかと思った。だって、友達になってくださいとか言ってないし。

 けど、もうセレネオスさんとは”友達”って感じがするんだよな。



「……ディオルー」



「……ん?」



 セレネオスさんがそう言ってくる。



「私の事はこれからディオルーって呼んで。友達なのにセレネオスさんなんて、酷く不格好じゃない」



「分かったよ、ディオルー。僕の事はレンラと呼んでくれ」



「分かったわ、レンラ」




 ディオルーは嬉しそうに微笑むと、小走りに僕の前に立ってこちらに振り返る。

 夕焼けに照らされる彼女の姿は、とても魅力的に僕の瞳には写っていた。



「これからよろしくね、レンラ」




 これが僕とディオルー。

 2人の友達になった瞬間だった。

これにて第1章、闘儀編は終了となります。

ハーレムを期待して読んでくださった皆様。まだまだ薄くて申し訳ございません。

これから少しずつ増やしていくつもりなので、お付き合いの方よろしくお願いいたします。



さて、次の章、第2章なのですが。

今度は森を予定しております。

また良い作品になるよう、これからも頑張るつもりなのでよろしくお願いします。



以上、作者ことアッキでした。

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