7章5話「暗殺を命じた」
バン! と、僕は職員室の机を手でたたいた。
「先生、これは一体どう言う事ですか?」
「どうしたんですか、レンラ君。思春期ですか? 怒る10代ですか?」
僕はとぼけるリクミ先生に対して、無理矢理剥がして来た紙を机の上に叩きつける。
「……ん? あぁ、【ヤヤ・ヒュプオン暗殺指令】ね。それは確かだよ。何せそれを出したのはうちの生徒なんだから」
「うちの生徒……」
つまりリクミ先生が担任であるうちのクラスの生徒、と言う事か? いったい誰が……?
「その生徒って……」
「確か名前は……そう、べスナル・テスカシュミよ」
べスナル・テスカシュミ。確か今日も朝から話していた生徒の1人だ。確か自分で『俺は転生者だ! この世界に革命をもたらして見せる男だ!』と言う痛い人間だと言う事は覚えている。転生だなんて痛い事を言っていて、クラス中を引かせていたのを覚えてる。
「べスナル曰く、昨日の夜にヤヤの家から強大な魔力を感じていて、確かめに行ったらヤヤが自宅の屋根の上で強力すぎる魔力を放って立っていて、謎の5人組にさらわれているのを居るのを目撃したらしい」
「5人組……?」
そいつらがヤヤ・ヒュプオンをさらった張本人と言う事か?
「あまりにも目で分かるほどの強力すぎる魔力だったから、ちょっと彼はたまたま持っていた魔力測定器で量ってみたらしい」
「何で魔力測定器を……?」
魔力測定器はポケットに入るくらいの物で、魔力を測定する際に使う物である。だとしても魔力測定するだけしか使えず、常に持ち歩く必要はない物だ。しかも昨日の夜中にそんな物を持って、わざわざヤヤの家の近くまで歩いていたのは気になる。
確かべスナルの家はかなりヤヤの家から離れた場所だったし。
「分からんね。けれども彼はいきなり『転生者だー』とか言い出す頭のちょっと可笑しい奴なんですし、夜道にそんな所を歩いていても可笑しくは無いんじゃない?
事実、ヤヤはどこにも居ないし、それにべスナルが提出した魔力の量は明らかに大きすぎる。そしてそれを見た我々トラソルクエ学校の職員たちはヤヤ・ヒュプオンの保護、もしくは―――――」
「……暗殺を命じたって事ですか?」
「そう言う事になるわね」
そ、そんな事って……。
ただ魔力が多すぎるって事で、殺されるなんて……そんなのはあまりにも理不尽すぎる。
「分かってないわね、レンラ君。ヤヤちゃんは前まではそれなりの魔力しか持ってなかったのよ。それなのにいきなり魔力が増えてしまってたら、その魔力をちゃんと扱える術を持っていると思うの?
私達はそれを心配してるの」
た、確かにそれは心配である。最初からそんなに魔力があったらそれは大丈夫だけど、いきなり魔力が上がるとそれは怖いだろう。何せ魔力がいきなり魔力が上がったので、それをちゃんと扱えるかどうか分からないのだ。それは分からないのだ。だから先生が不安がるのも分かると言う物である。
「とにかくヤヤ・ヒュプオンをどうにかしておかないといけないわね。レンラ君も出来たらお願いするわ」
「……言われなくてもやるさ」
そう言って、職員室を僕は出たのであった。
……ヤヤを殺す訳にはいかない。と言う訳で僕はヤヤを助けるために仲間を招集する事にしたのであった。




