7章1話「やっぱり若いって、良いわね」
冬。寒さが厳しい12月。1年の総決算。
この時期、トラソルクエ学校は学生総決算を実施していた。
学生総決算。
つまり、言う所の成績である。
「ヤヤ・ヒュプオンさん」
眼鏡をかけたクールな女性、担任のリクミ・アサセナーがそんなヤヤに声をかける。
「はい」
と、ヤヤは返事を返す。
「成績は良、運動神経は少し悪いけど魔法使いとしては問題なし。単位はあるし、授業態度も悪くない。けどね……足りないわね」
担任のリクミ先生はヤヤに対してそう言う評価を下した。
「……足りません、ですか?」
「ええ、足りないわ。レンラやディオルー、それにアスクムと、あなたの友達はかなり強い。それに比べたらあなたは弱いわ」
「弱い……」
「私が生徒会長をやっていたのは知ってるわね?」
「あっ、はい」
そうリクミ先生が聞くと、ヤヤはコクコクと頷く。リクミ先生がこの学校の卒業生で、生徒会長なのは有名な話である。何故ならばリクミ先生が事あるごとにそれを自慢するのだから、この学校で生徒会長をしていたのは有名すぎるくらい有名である。ちなみに彼女に言わせると、彼女が在任していた時の学校はかなり平和な学校だと言う事だ。それが本当なのかどうかはリクミ先生以外の同級生の話を聞かないと分からないのだが。他に同級生が勤めていないから真相は彼女の心の中である。
「あなたと同じように友達が強くて、自身は弱いと言う人間はいたわ。けれどもそんな人は決して友達から離れようとはしなかったわ。そして友達と同じくらい強くなろうと努力していたわ。
分かる? あなたも一緒よ。きっとあなたもその子と同じように強くなろうとすると思うわ」
「……」
ヤヤは無言だった。その無言が彼女の決意を語っていた。
「……分かったわ。じゃあ、これを」
リクミ先生はそう言って、机の下に置いていた赤い水筒を取り出す。
「これは?」
「先生は悩める生徒の味方よ。それは魔法使いの魔力が上昇する水、『泉水』よ。魔法使いにとってはとっても良い、美容健康水の物よ。だからそれを飲めば良いわ。気休め程度にはなると思うわ」
「……ありがとうございます」
「良いのよ。先生は全ての生徒の味方よ」
ヤヤはリクミ先生から貰った『泉水』が入った水筒を大事そうに持ち抱え、職員室を出て行った。その姿をリクミ先生は愛おしそうに見つめていた。
「やっぱり若いって、良いわね」
次回は3月7日0時に投稿予定です。
【7章2話「危険もあるけど、やるかな」】をよろしくお願いします。




