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魔剣使いとハーレムと  作者: アッキ@瓶の蓋。
第6章 怪力女王と技術塔と義手男

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6章1話「私は恋する乙女」

 準備祭3日目、本日は身内だけで行う行事の日である。

 一昨日、昨日と違って変な雰囲気が学校を覆っていた。



 表向きは昨日や一昨日と同じく食物を扱う屋台やら作品物を扱う屋台があったりと普通な物である。

 しかし、裏では魔物を闇取引する非人道的屋台やら禁術を扱う屋台と行った、魔法警察(まほうけいさつ)に通報したらすぐに逮捕されるような物まで存在する。



 そんな中、僕はアスクムに連れられてその非人道な屋台の1つ、『魔法陣』と言う禁術屋さんに向かっていた。ちなみにヤヤ、ディオルー、アトアグニさん、メンルリさんの4人も一緒である。と言うか、流石に6人は多すぎると思うのだが。



「……いらっしゃい」



 そう言う店の主人の女性は知っている女性である。そう、足まで伸びる水晶のような水色の髪の女性で、豪華なドレスを着ており腕や足には呪詛のような黒い紋様が描かれている。

 そう昨日、白雪姫役を演じていた女性であった。



「……テセウス・タイタニックの禁術屋にようこそ。ご予約で?」



「いや、別に予約はしてないけどさ。つーか、屋台で予約は無いでしょ」



 と、アスクムはそう言って彼女の前の席に座る。その左隣にヤヤが、右隣にディオルーが座る。

 僕は一応アスクムの後ろに回ったが、その左手をアトアグニさんが掴み、右腕をメンルリさんが抱きついた。大きな胸の感触が柔らかと伝わって来る、右腕だけ。



「……仲、良いですね。で、そちらの御二人さんが私に御用なのでは?」



 と、テセウスはヤヤとディオルーに視線を向ける。



「は、はい! アスクム君から聞いて!」

「そこの馬鹿が教えてくれたのよ」



 2人ともアスクムから聞いたと言っている。

 2人の共通点、それは魔法使いだと言う事。そしてここは禁術を扱う屋台。

 つまり、彼女達が望んでいるのは――――――



「まさか2人とも。禁術を手に居れようなんて考えてないよな?」



「「ぎくっ……!」」



 僕が聞こえるように言うと、2人とも肩を震わせた。どうやらあたりらしい。



「……剣士君。口を慎んでくれ。ここは禁術屋ではない。そもそも禁術屋は昨日、引退したのよ」



『引退……?』



 僕達全員揃って、その言葉に疑問を浮かべて言う。

 昨日までは禁術屋だった。どう言う意味だ? 昨日、起きただろう出来事って……多分、昨日の劇の事だとは思うのだが。



「……私は昨日、最愛の彼と付き合う事となった。故に引退するのですよ」



「引退、ね。『闇の継ぎ接ぎ魔女』とまで言われたあなが……」



「なんだって、アスクム? 継ぎ接ぎ、魔女?」



「『闇の継ぎ接ぎ魔女』。まぁ、彼女の特殊すぎる人生観を皮肉った言葉ですが」



 その辺りの説明は、本人からお願いします、と言うかのようにアスクムはテセウスに手を振る。

 彼女は嫌そうな笑みを浮かべながらも、その質問に答えていた。



「私は戦争孤児なのですよ」



「戦争孤児? 良く大国の魔法戦争で親を失った子供を聞くが、そう言う者か?」



「……コクコク。……そして重傷を負っていた私は、レイアオス・クレイイアのご両親に拾われた。そして私の悪い部分を入れ替える事にしたのよ。最初は足、次に腕、髪も皮膚も私の身体は戦争による魔法の後遺症で、と言うか呪いで悪くなっていった。この身体に浮かぶ呪印もそう。

 名前も呪いを回避するために今の名前へと変えた。精神や価値観、好きな物から嫌いな物まで呪いを戦争の魔法の呪いを回避するために全てを変えて行った。

 私の身体は爪の先から髪の毛の1本に至るまで無事だった部分は無い。精神的にもそう。

 故に継ぎ接ぎ女と言う事よ」



 と、まるで他人事を話すように彼女は語っていた。



「レンラ君、テセウスの船と言うパラドックスがあるんだが、彼女はそれに近いね」



「アスクム。それはどう言う意味だ?」



「テセウスと言う男は、大きな船を持っていた。そりゃ、大きく歴史的に価値のある古い船を。

 あまりにも古い船だったからいくつかの改修が必要だった。歴史的に価値が高いため、それはきちんと行われた。



 そして、気付いた時には元の船が使っていた部分は無かった。



 果たしてこれでも、テセウスの船と呼べるのか? そう言うパラドックス」



 全てが元の彼女の持っていた物と違う、そんな継ぎはぎだらけの身体。

 果たしてそれでも、彼女はテセウスと呼べるのか? つまりはそう言う事をアスクムは言いたいのだろう。



「……私は自分を定義出来ない。何せ、自分を定義する物は全て失ったから。

 でも、彼は私をテセウスだと言う。それがなんと嬉しい事か。だから、私は恋する乙女。もう二度と闇には手を染めないって誓ったの。生きるために必要だった闇の禁術商売も、もう必要なくなったから」



 だから今日は最後の仕事、と彼女は言っていた。

 彼女はそう言って、2人に薬を渡す。それは黒い小さな球だった。



「……魔力増強薬、『エナジー・リキッド』。黒い小さな球を大量の水がある、お風呂のような場所に入れてゆっくりと4時間は使えば、魔力は劇的に上昇する。

 ちなみに飲み込んだら、効果はさらに劇的だけど、命の保証は出来ない」



「「……ありがとう」」



 ヤヤとディオルーはそう言い、その黒い小さな球を袋に入れてポケットにしまった。

 ……と言うか、この2人。なんでこんな危ない物を欲しがったんだろうか?

次回は3日後、10月25日0時投稿予定で御座います。

【6章2話『僕様達の手によって奪わせていただきました』】を投稿する予定です。

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