5章閑話「罪を犯してでも」
「ふぅー……。じゃがいもはOK、玉ねぎもOKでチーズもあるか。残りはあれか、難しいな」
準備祭2日目の放課後、学校の前の道、1人の少年、中肉中背の青い髪の男性、クロノウス・ウルカニアはリヤカーに大量の食物を載せて、メモを見ながら食物を運んでいた。
「あれ……? リヤカーで何を運んでるんですか? と、私は思うのだけど」
「何をしてるのか私も知りたいですね、良ければ教えてもらえますか?」
その少年を探していた2人の少女はそう彼に聞く。
1人目の少女は、籠一杯に刀を入れた籠を背負った美少女。肩より少し長い辺りまで黒髪を伸ばした、見ているだけで色が変化していく虹色の瞳を持った小柄、しかし胸元はかなり大きくそんな胸元を大きく露出した黒いシャツを着た女性。
2人目の少女は、短めの制服のスカートに胸元のボタンを3つほど外したブラウスにネックレスといった、いかにも今風な美少女。緩くウェーブのかかった肩まで伸びた明るめの茶髪をした、幼さを強調するような童顔、その上豊満で大きな胸をした女性。
1人目の少女の名前はハトトリー・クイーン、2人目の少女の名前はリストロル・ビショップ。
彼と一緒に居る事が多い2人の女性である。
2人の少女の質問に、クロノウスは
「えっ……? これは食材、ちょっと料理をしたくてね。スウェーデンのグラタン料理をさ。いつか2人にも食わせてやるよ。
何せ罪を犯してでも食いたいと思わせるような、そんな魅力的すぎる料理なんだから」
「それは楽しみにしておくわ。と、私は思うのだけど」
「クロノウス様の手料理、ですか。それは何とも魅力的な発案で……。是非、お願いいたします!」
そう言って笑う2人の少女を見て、「はいはい、任せとけ」とクロノウスは言っていた。
「さて本日の準備祭2日目の演劇、『白雪姫と7の小人』は終了した。これでテセウス・タイタニックとレイアオス・クレイイアは付き合うだろう。後は少し肩を後ろから押すくらいで付き合うくらいの距離感だったからな」
と、クロノウスは言っていた。そう、彼の言うテセウス・タイタニックとレイアオス・クレイイアとは今回の演劇、『白雪姫と7の小人』で白雪姫役をしていた女性と小人D役をしていた男性の事である。今日の演劇が終わった後、2人は付き合っていた。
実はこの演劇、2人を突き合わせるためにやっていた物なのだ。なかなか煮え切らない2人の中を取り合うために、クラス全員が一丸となってやった行事である。王子様は協力してないが。
「まぁ、カップルの今後に祝福を、だな。
そして明日はこの学校の皆に祝福をあげよう。
そう、とある人間に向けた、僕からの細やかなる祝福を」
クロノウスはそう言いながら小さく笑い、クイーンもビショップもそのクロノウスの顔を見て自分達も笑っていた。




