4章5話「いや、元々僕は将来の職を決めている」
「こらー! 何やってんのさ、クイーンさん! 死んじゃうでしょ、クロノウス様が!」
緩くウェーブのかかった肩まで伸びた明るめの茶髪をした、幼さを強調するような童顔の女性が、クロノウスとクイーンさんの2人の間に割り込んで2人の仲を裂く。そして、クロノウスの腕に豊満で大きな胸に押し付ける。
その女性は、短めの制服のスカートに胸元のボタンを3つほど外したブラウスにネックレスといった、いかにも今風な女生徒。肌は少し日に焼けたような健康的な肌に、輝くような金色の瞳。腕には『L.B.』と書かれたワッペンを付けており、胸ポケットには塔をイメージするバッジを付けている。背中には籠を背負っており、籠の中にはマニアックなロボット雑誌が入っている。
「あの人はリストロル・ビジョップ。『三発の雷』、最後の1人です」
「最後の1人があれ……?」
今、クロノウスの右腕に抱きついているのが最後の3人目なのか?
「だいたいね、クイーン! 昔から私はクイーンの事が嫌いだったんですよ!」
「奇遇ですね、ビショップ。私も昔からビジョップの事が嫌いでしてね」
……あの2人、何か喧嘩を始めようとする雰囲気なんですけど。
『三発の雷』は仲が悪いのか?
「だいたいキャラが被っているんですよ! なんで男子1人女子2人の組織なのにも関わらず、どうして巨乳と言う所で被っているんですか!
それにロリ巨乳はもう流行らないんですよ。ですから、ここは大人しく身を引くべきですよ。孤独なクイーン」
「キャラが被っているのはそっちでしょ。そっちの方が後に来たんですから。
その今時のギャルっぽい格好も私は大嫌いなんですよ。見るだけでムカつきます。戦闘法まで似ているんですから少しは変えてくださいよ、このビッチビジョップ」
「何か言いましたか? 私はこの健康な身体を、ただただクロノウス様のためだけに成長させて使用させるために成長させたんです! 無駄に胸だけ成長させた色気だけの、色気づいた女王とは違うんですよ!」
「良く言いますよ。クロノウスとの対戦で「負けた方が奴隷になる」と言う約束を無理矢理クロノウスに取り付けて、負けてクロノウスの下についてすっかり私が一番みたいな事を言い出すようになっちゃって。この従属の塔が」
「むむむー。クイーンのせいで」
「……。ビジョップの癖に」
何か本格的な喧嘩へと発展しているんですが。
多分『三発の雷』はただただクロノウスが基本的な組織の中心的な柱となって居るからこそ、ようやく成り立っているような組織なんだな。うん。
「いやはや、御見苦しい物を見せてしまいすいませんですね。レンラ、それにメンルリさん」
と、話題の中心人物であるクロノウスが僕達にそう声をかけてくる。
「彼女達も悪い人達では無いんですよ。クイーンはその太刀筋も綺麗だし。あっ、太刀筋が綺麗と言うのは心が綺麗じゃないと出来ないんですよ。それにビジョップはカッコいいし。女子にカッコいいと言うのは悪い表現に見られるけど、表現を変えれば人目を集める魅力的な女性だと言えるし」
「……良く言葉が回る物だ」
クロノウスが言う度に、クイーンとビショップが顔を赤らめているんだが。
あぁ、今度は顔を赤らめながら自身の方が愛されていると言い合いを初めてしまった。
「しかし将来は安泰だな。この時点で組織のリーダー格を担うほどの実力があるんですから」
「いや、元々僕様は将来の職を決めている。だから、僕様はそれに邁進するだけ。
……レンラ、僕様の夢を聞いてくれ」
クロノウスの夢?
それは興味あるな。刀を奪うのに腕を切り落としてでもやれ、とまで言っていた男の将来の夢と言うのは興味がある。さて、何だろうか?
「クロノウス、お前の夢は何だんだ?」
「私も興味あります」
メンルリさんも興味があるようだ。まぁ、彼女もクラスメイトとしてこの彼に少なからず興味があったと言う事なのだろう。
「フフフ、僕様の夢? それを教えてやるよ、レンラ。それにメンルリさん。
僕様さんの将来の夢。それは……」
クロノウスが少し言葉を貯めると共に、場に少し無音の空気が流れる。
「勿論、『どんぐりの会』一択だ!」
「「何故、それ!?」」
クロノウス、何でそこに入りたいんだ!?
「私の方が愛されているに決まってるんです! この胸だけ女王!」
「後から出がぎゃーぎゃーうるさいわね。この騒がしいビッチ塔!」
……まだあの喧嘩、終わってないのかよ。
次回は3日後の9月2日の0時です。
タイトルは「これで良かったのか?」です。
別に……シリアスでは無いのであしからず。




