4章1話「いやはや、ね」
タグに「僕っ娘」を追加しておきました。
これからもよろしくお願いします。
「いやはや、いやはや……。僕様をここまで徹底的に痛めつけるのは、何が目的なんだか。そこまでして、僕様の持つ魔剣5本が欲しかったのかい?」
今から4年前。
僕がまだ小学校6年生だった頃。
僕が両腕を切り落とした、中学1年生のクロノウス・ウルカニアはそうさも大事ではないように言う。
「僕様はね、欲求で動くのは別に問題ないと思っているよ。欲しい物があるのならば、それを全力で奪う。僕様は君の、僕様の両腕を斬ってまでも、僕様の5本の魔剣を取ろうとする、その心意気。
……では、僕様よ。僕様の5本の魔剣を取れば良いさ」
そう言って、クロノウスは自身の足元に落ちている5本のうちの魔剣の1本を転がす。
そして僕の足元に転がって来た地の剣、ラ・テラ。そして他の4本も見る。
水の剣、ウナ・コレンテ。炎の剣、ウナ・フィアマ。風の剣、ツービネ。空の剣、イ・シエリ。
確かに欲しい剣だったのだが、ここまで味気ないと逆にこれで良いのかと思えてくる。
「確かに欲しいさ。この5本の魔剣は、僕がこれから強くなるのに必要な物だ。
だが、お前よ。確かに僕は勝ったが、その後の両腕を斬ってと言うお願いは本当に受理して良かったのか?」
「あぁ……良いんだよ。逆に助かる。何せこの両腕は、近いうちに切り落とす予定だったしね。
だから僕様は僕様で満足なんだ。そして君は君で、君の目的である魔剣での君の成長をやれば良いさ、レンラ」
と、クロノウスは僕に笑顔で、両腕を切り落とされた状態で言っていた。
それが僕とクロノウスの出会い。
クロノウスの両腕を切り落とし、僕が魔剣を取った出来事だった。
「いやはや、ね。レンラが居るならばリクミ先生も、僕様なんかに頼まずにそのまま待ってれば良いのにさ」
そう気軽に言うクロノウスを見て、僕は本当に本人かと思ってしまう。
何せ、恨まれても仕方ない事を僕はしたのだから。例え、あの時は彼は納得したかのように言っていたとしても、それが必ずも真実とは限らないと思っていたのだが……。
「あの、ありがとね。わざわざボクの家まで助けに来てくれて。クロノウス君」
「……? 別に問題は無いさ、メンルリ同級生よ。僕様としては君の呼び方をどうしようかと悩んでいたし。なにせ、顔も見た事のない異性の同級生の呼び方ってどうすれば良いか分からないし。
嫌だね、女子は。呼び方一つで反応が全然違うんだからさ」
アハハとメンルリさんの横で笑う、クロノウス。
その後姿には、僕を恨んでいる様子は見られない。
「……レンラ……あの人、誰?」
「レンラに聞いても駄目そうだから、アトアグニさん。ここはヤヤに聞きましょ? 私達以上に付き合いは長いんだから、知っているはずよ。さぁ、ヤヤさん。ちょっと説明して貰おうかしら?」
「え、えっと……私もそこまで昔から知っている訳じゃないですし……。せいぜい、中学からですから」
後ろで女子達は楽しそうに話している。
そんな中で僕は、クロノウスに声をかける。
「クロノウス」
「ん? 何だい、レンラ? 今更呼び捨てがダメだと? 僕様と君の仲でしょ? 手首を切り落とし合ったさ」
「それだと僕も切り落とした事になっているだろ。
そもそもさ、お前が先生に頼まれたからと言って、メンルリさんの家に来るとは思ってないんだが」
これは、本当にそう思っている。
例え僕だって、顔も合わせた事のない人の家に行くのは嫌だと思うのだが……。
「仕方ないだろ、メンルリさんも僕様と同じ2年生。それに同じクラスだ。
既に題目も決まっている以上、誰かが呼びに行かないとね」
題目?
誰も心当たりが無いような感じで、お互いに顔を見合わせる僕達。
「おいおい、誰も覚えてないのかよ。全く……。自校の行事くらい、自身で確認してほしい物だ。
皆、忘れすぎだ。
もうすぐ、文化祭だろ?」
と言うクロノウスの言葉に、全員揃ってその存在を思い出すのであった。
『トラソルクエ学校・夏の文化祭』の事を。
次回は3日後の8月21日0時、タイトルは「……はい、うちのクラスでは」です。




