2章8話「裸も期待してたんだけど……」
夜1晩過ごした後、僕が目を覚ましてテントの外に出ると黒い煙が上がっていた。
「なんだ、1番最初に外に出たのはやはりレンラ一陣兵か。ガイオン賭博師の異能も当てにはならないな。まぁ、ガイオン賭博師のあの異能はあくまでもあれ以外は百発百中から、可笑しくも何でもないかね」
と、目の前に居たのは、僕達メンバーの誰でも無かった。
そこに居たのはヘッドフォンをした20代後半の男性であった。瞳を隠すようにサングラスをかけ、黒い紳士服を着た男性。
探せばどこにでも居るような男性だったが、その腕に付けた『リア充撲滅!』と書かれた腕章は珍しいと言えるだろう。
「お前は……」
「僕の名前は『どんぐりの会』1番、アサセノス・ナハルーパ。『見た物を完璧に脳内で再生する』と言う異能を持った、リア充を憎む人間だ」
『どんぐりの会』……。あぁ、またあの残念異能集団かよ。
「本来はこう言った場所に居ずに、知り合いの女子を脳内で完璧に再生しなおして、自分を慰めているんだけどさ。まぁ、今日はちょっとした変態の誘いを受けまして、ここに参上したのですよ。
まぁ、本当は現役JKのパジャマ露出姿を見たかったんだけど」
「……今度は変態かよ」
ですます口調の狂った博士、シヴァ。髪とか瞳の色を変えるコスプレ好き、クナピトに、お菓子の残念な兎耳娘、シワコ。そして、今度は変態のアサセノスと来たか。
もう何が来ても驚きしそうにない。
「まぁ、サキュバスであるウラヌトリ策士の裸も期待してたんだけど……。まぁ、居ないなら仕方ないね。もうセッティングは完了してるし、今日は引き上げよう。
また時間があれば、お会いしようじゃないか。レンラ一陣兵」
そう言って、彼はすぐさま帰ってしまった。いったい何が目的だったんだ?
それはその彼、アサセノス・ナハルーパが去った1分後、明らかになった。
”森の爆発の黒い煙によって”。
「恐らく、レンラが会ったアサセノス・ナハルーパは爆弾を仕掛けてたんだろうね。
ウラヌトリ・アテセ・ヤなんかの命令によって」
今も爆発を続けるマクウエの森にて、アスクムは冷静に状況を分析をしていた。
爆発と合わせるようにして、僕達を攻めてきた魔物達を倒しているこの状況で、ただ1人冷静に状況を分析しているアスクムは怒られるべきなのかもしれないけれど。それをやれないほど、事態は緊迫していた。
「全く……。寝起きにこの数は……つらいわ、よ!」
ディオルーは魔法で水の刃を放ち、その水の刃は蟹の魔物、マイアッハを貫いていた。
「まだ眠いのにー……」
ヤヤもそう言いながら、雷の魔法を放って、マイアッハの殻を割り、中身を焼いていた。
「……」
それでもなお、弓矢を放つアトアグニさんと比べれば、まだ人間らしいけれども。
「はぁ……。疲れるったらないぜ」
僕は2の太刀、半透明の太刀のウナ・コレンテで水の刃を作り上げて、その刃を3体のマイアッハに向けて放つ。マイアッハ3体は刃を受けて、動かなくなった。
「こうしている間もウラヌトリ・アテセ・ヤは、何かを行っているのだろう。そして一番怪しいのは、あれだろうな」
一箇所だけ白い煙を放つ異様な場所。
そこにはマイアッハの何倍もありそうな大きな蟹であった。しかもはさみではなく、ハンマーと言う可笑しな蟹であった。しかも甲羅にはご丁寧にも『ウラヌトリ命!』と書かれてるご丁寧ぶりである。
そしてその上には、遠目だから良く分からないが、露出度高めのボンテージ服を着た女性が見える。
あの女性がウラヌトリ・アテセ・ヤだろう。
そして、その巨体の蟹はエルフの住居の街を目指していた。
「……助けに行こう」
「あぁ、僕達はそのために来たんだ」
そうこの街、マクウエを助けるために、僕達はミッションを受けたのだ。
「でもとりあえずは、この大量のマイアッハをなんとかしないとな」
「ここはこのアスクム一向にお任せあれ!」
アスクムはシルクハットから銃を出して攻撃した。
「えぇ、アスクムなんかと一緒なのははなはだ不安だけど、あんな大きさの魔物を破壊できるのはこの前私に見せてくれたラ・テラの1次解放しかないでしょうし!」
「そうですね。レンラ君、私は信じてますから!」
ディオルーとヤヤはマイアッハを魔法で倒しながら、そう言う。
「あぁ、任されたよ。後、アトアグニさん、あなたも付いて来てくださいよ。あなたの街の危機なんだから」
「……言われずとも」
そして、僕とアトアグニさんは巨大蟹へ向かって行った。
「……計画通り」




