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わたしは、のうりょく  作者: ネガさん
終わる真里。始まる王雷。
4/4

疲労

楽しんでいただけたら幸いです

バタンっ!


「…ハァ〜…」


真里の迎えが来る少し前、御幸は何とか家に帰りつき自室のベッドにぶっ倒れた。今日だけで、御幸は一生分の涙を出し尽くしたのではないのかというほど泣き散らした。目元の水分が乾燥しまくって、欠伸を出しても一切涙が出てこない。


「……」


忘れようと思っても忘れられない今日の出来事。目の前で吹き出した大量の血液、悲鳴をあげていた人たちの声が唐突に聞こえなくなるあの感じ…迎えの車にいた際、親に散々慰めてもらったが、それでもまだ恐怖が心の底に染み付いている。


「……なんもやる気が起きない…」


御幸はベッドに横たわった後、一切動けなかった。かと言って寝れる訳でもなく、ただただ時間だけが浪費された。そんな中でもしっかりと脳は稼働しており頭の中にはあの時の銃声が何度も鳴り響き、自分を庇った真里の顔が映し出される。自分のせいで。自分のせいで。自分のせいで………

御幸の目元からは、枯れ果てたはずの涙が垂れ流れていた。




御幸はその夜、ご飯が喉を通らなかった。昼間あんだけ吐いて胃袋の容量は空いているはずなのにご飯が入らない。無茶して食おうとしたら吐きそうになった。母親はそんな御幸を慰めた後、自室でゆっくりするように言ってくれた。

御幸は自室に戻り、またもやベッドに倒れ込む。その際、中学生の修学旅行の時に撮った真里とのツーショットが目に入った。


「真里ぃ……」


今、親友の真里は真里じゃない。おうらいという謎の能力だ。本当の真里はどこにいるのか?もしかしたらもう二度と戻って来ないのではないか?そんな考えが頭をよぎった瞬間、これまでの真里との思い出が蘇ってくる。初めて出会った時のこと…二人で同級生にイタズラを仕掛けたこと…ちょっとした事で喧嘩したこと…次の日には仲直りしたこと…様々な思い出が蘇ってくる。想いに耽っていると一生分流したと思っていた涙が再び溢れてきた。




御幸はその夜、一睡もできなかった。しかし寝てないにも関わらず全くまぶたが閉じそうにもない。若干頭痛を感じながらもスマホを手に取り時間を確認する御幸。スマホの時間は7時になっている。いつも起きてる時間くらいだ。


「……真里…」


御幸はLINEで真里に『起きてる?』と送った。いつもの真里なら確実に起きていない時間だ。既読なんかつくわけがない。いつも通り未読で8時あたりにようやく既読がついて『今起きたわ!』あたりの返信をして…御幸の心は、未だ昨日起きたことを信じ込まなかった。

もしかしたらこれは夢なんだと、真里は普通に生きていて今日も普通に遅刻ギリギリで学校に来るんだと…そう信じていた。





『おきてる

     』



……LINEはすぐに既読がついた。その1分後、明らかに真里のものではない口調で返信が帰ってきた。


「…そっか。」


御幸は目元に涙を浮かべながらもスマホを置いて、制服に着替えようとベッドから立ち上がる。


プルルルル、プルルルル


スマホから着信音が鳴り響いた。御幸は身体中を強張らせた。




『バンッ!!』


御幸の脳内に流れ込む、真里が撃たれた時の光景。


「ッ!!!?、ハァ、ハァ、ハァ!ハァ!!やだぁ!!!ごめんなさい!ごめんなさい!」


御幸はその場に座り込み、耳を塞いでしまう。呼吸は乱れ、涙も出てきだす。


『お前のせいだ』 『なんでお前だけ』 『絶対に許さない』


あの時コンビニにいた人達の声が聞こえてくる。そうだ、自分が追放したから。自分が余計なことしたから。

そんな思考にすら陥れないまま、御幸は発狂しだす。


「違う!違うの!私は!私わぁ!!」


「御幸!御幸!!大丈夫なの御幸!」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!何で!何でぇ!!」


御幸はパニック状態に陥り、いないはずの存在に対して、狂ったように謝り出す。御幸の母はすぐに御幸の異変に気づいて御幸をなだめる。


「大丈夫!大丈夫だからね御幸!だから落ち着いて!」


「うぅうううう……」


御幸は少し落ち着くが冷静になりきれない。うめき声を上げながら涙を流し頭を抱え出す。スマホの着信に気づいた御幸の母が代わりに電話に出てくれた。どうやら学校からの電話で御幸の体調を心配した担任が電話をかけてくれたそうだ。

御幸の母は現在の御幸の状態を話して、今日は休ませると学校に伝えた後、電話を切った。


「御幸、ちょっとは落ち着いた?」


電話を切ってすぐ、御幸の方に駆け寄り声をかける。どうやら御幸も少しは冷静になったようで深呼吸を行っていた。


「今日はもう休みにしたからね。家でゆっくりしててね。」


「ふー…ふー…(コクンッ)」


御幸は発狂しすぎたのか、喉がかすれて声を出しきれなかった。代わりに首を縦に振り、母の言葉に対して相槌を打った。


御幸の母は台所へ向かっていった。軽い食事を作ってくれるらしい。

御幸は再度ベッドに入って倒れ込んだ。叫びすぎたのか少し咳がでてくる。昨日あれだけ出したはずなのに何故か涙が止まらない。一度寝ようとするがやはり寝れずベッドの中でもがき出す。そんな時、御幸はある考えにたどり着く。


「ゼホッ!…能力、使ったら少しは楽になれるかな…」


能力使用中は、一時的に脳を乗っ取られる。今は変な考えが頭の中を交差し続けており寝たくても寝れない状況なのかもしれない。

だったら脳を乗っ取らせれば少しは休めるのではないかと御幸は考えた。


「……よし」


御幸は頭の中で能力を使いたいと念じ出した。10秒ほど経った後、御幸の目の色が変色する。御幸の能力、収穴は脳を乗っ取った後、ベッドに横たわり睡眠を取り出す。先程まで全く眠れなかった御幸と同一人物とは思えないほどのスピードで眠りだしすぐに寝息を立て出した。

この際、おうらいの言っていた真里が寝ているという発言を御幸は少しだけ理解できた気がした。









時を同じくして、おうらいも学校に向かう準備をしていた。

真里の記憶があるとはいえ初めて身支度をするので制服を着るのに少し苦戦していた。なんとか着替えを済ませて一階に降りようとする。


ピロピロピロ…ピロピロピロ


扉に手をかけた瞬間、ベッド付近のスマホの音が鳴った。おうらいは驚きながらもスマホを手に持ち画面をよく確認する。おうらいは全くスマホに慣れてなかった。先程御幸のLINEを返した時も、入力にかなり手間取ってしまいすぐに返信を返せなかった。おうらいはきょとんとしながらも画面に映った応答ボタンを見つけなんとか電話に出ることに成功した。


『あぁ、葛木…なのか?』


「えっと、わたし、おうらい。」


『おうらい?…じゃあ君が葛木の能力かい?』


「うん。」


電話相手は真里の担任の先生だ。昨日の出来事を誰かから聞いたのか、真里が入れ替わっていることを理解しているようないいぐさだ。おうらいは否定することなく正直に自身の正体を話す。


「まりちゃん、しばらく、おきない。」


『そ、そうか…なあ、おうらい?って言ったよね君。』


「うん。」


『君、学校には通えるかい?』


「ん?」


『いや、葛木がしばらく起きないのは理解できたし、しばらく休ませるのも許すんだが…葛木がいつ起きるか、それは君にもわからないんだろ?』


「うん。わからない。」


『もし数年間起きないってことになると葛木は留年しかねないんだ。葛木が正真正銘意識不明の状況だったら休学にもできたんだが、いかんせん状況が特殊でな。君がもし登校できるというなら登校してきてほしいんだが…』


「いいよ。」


『え?』


「りゅうねんしたら、まりちゃん、たいへん。わたし、がっこう、いく。」


『そうかい…いつから登校できそう?』


「きょう。」


『き、今日!?今日でいいのかい!?』


「うん。もう、じゅんび、できてる。」


『わ、わかった。じゃあ9時までに五階の1-3の教室に来てくれ。』


「うん。」


『じゃあ切りますね。また学校で。』


プチッ!ツー…


電話が切れた。おうらいはしばらくスマホを耳に当てていたが電話が切れていることに気づき、スマホを耳から離してバッグの中に入れ、一階に降りて行った…






「おうらい…か…」


真里の家とは遠く離れた公園、とある男性がスマホでニュースを見た後、笑みを浮かべた。


続く…




いかがでしたか?感想などあればお気軽に。

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