表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたしは、のうりょく  作者: ネガさん
終わる真里。始まる王雷。
3/4

楽しんで頂けると嬉しいです

おうらい。そう自身のことを名乗ったそれは現在、取り調べ室にて警察からの事情聴取を受けていた。

あの後、通報を受けた警察がコンビニへ到着。しかし強盗だと思われる人物はどこにも居らず、しかし一目見ただけで明らかに何かがあったと理解できる程長く抉れた道路がそこにあった。

コンビニの中へ向かってみると高校生だと思われる女性が、抉れているコンビニのレジの前で目をかっぴらいたまま天井を凝視していた。他の被害者と思われる人間は全て死亡しており残っていたのは通報者と思われる女子高生だけであった。女子高生は疲れ果てているのか隅の方でぐったりしている。

もしかしたらあの女性が強盗なのか?と警戒しながら女性に接近する警官達。しかしどれだけ近づいても女性は自分達に気づく様子はなくいよいよコンビニ内へ入っても、女性は天井を見続けていた。

警官は通報をした女子高生から状況を説明され、強盗だと思われる人物達はあの女性が殺害した可能性がある事を知る。警官は恐る恐るレジ前にいる女性に声をかける。女性が自分達に気づくのには相当時間が掛かり、話しかけてようやく自分達の存在を認識した。そして強盗は自分が殺したと殺人を肯定した。現在は発見された監視カメラの映像の確認中、取り調べも兼ねて彼女達への事情聴取をすることになったのだ。



「葛木真里ちゃん…であってるのかな?」


「ちがう。わたし、おうらい。」


しかし早々に真里と言われる高校生は不思議な事を言い出した。生徒証明書には彼女の名前は葛木真里と書かれているがなんと彼女は真里じゃないと言い出した。

警官は動揺しながらもおうらいと名乗る彼女に話を聞く。


「えっと…生徒証明書にはそう書かれているけど…ちがうのかい」


「まりちゃん。いま、ねてる。」


「寝てる?」


「わたし、まりちゃんの、のうりょく。まりちゃん、しにそう。だから、わたし、まりちゃんと、いれかわった。」


「入れ替わった?」


「うん。」


おうらいは自身が葛木真里の能力であると語り、警官は驚愕する。

確かに能力は使うと使用者の脳を乗っ取る。しかしこんなケースは初めてだ。話を聞くと、葛木真里は同じ場にいた通報者を庇い、頭を撃たれたと通報者から聞いた。

しかし頭に撃たれたと思われる傷はどこにもなかった。

もしこのおうらいという奴が葛木真里の能力だとしたら、葛木真里が死亡する危機を察知し、真里を救出するために出てきたということになる。

能力には意思がない。脳を乗っ取った際は、使用者が直前まで考えていたことに沿って行動を行う。しかしこのおうらいは違う。明らかに自分の意思を持って、葛木真里と入れ替わった。…そう思われる様な発言をおうらいはした。

直前で葛木真里がおうらいに助けを求めたのかとも考えたが、どうやら葛木真里は無能力者…はっきり言ってそんな思考に至るはずもなかった。警官は続けて、おうらいから話を聞く。


「…入れ替わったのは、真里ちゃんが助けを求めたからかい?」


「ううん。まりちゃん、そんなひま、なかった。」


「じゃあ、君が自分の意思で入れ替わったということ?」


「うん。まりちゃん、しにそうだった。だから、いれかわって、たすけた。」


おうらいはそう言った。嘘をついている…一瞬その可能性も浮かんだが、なぜか彼女の発言には不思議な信憑性があった。警官は一度彼女を信じることにして、話を続ける。


「君は能力なんだよね?だとしたら、君自身の能力について、話せるかい?」


「まわりの、ひとから、げんき、うばう。うばったげんき、わたしの、ちからに、なる。」


「元気を奪う?…」


「げんき、うばいすぎると、しんじゃう。だから、まりちゃんに、つかっちゃダメって、いってた。」


「言ってたって…君、どこかで真里ちゃんと話したのかい?」


「まりちゃん、ちっちゃかったとき、つかおうとした。だから、ダメだよって。」


「何歳ぐらいの時かはわかるかい?」


「たぶん、さんさい。」


衝撃的な事を聞いた。おうらいは、葛木真里が幼い頃から意思を持っており、しかも能力の使用を止めるという行動をとっていた。この話が本当ならこのおうらいという能力は、葛木真里が3歳の頃から意思を持っていたことになる。


「…君の目的はなんだい?」


「まりちゃん、まもる。それだけ。」


「…成程」


真里を守る。撃たれて死にそうな時に自分を守って欲しい…そんな事を考える余地は、確実になかっただろう。彼女の目的が嘘であっても、このおうらいは確実に意思を持って真里を救出した。…そう考えるのが妥当であろう。




しばらくして聴取は終わった。監視カメラを確認して御幸の無実が確定。真里より早く迎えが呼ばれ帰っていった。

一方真里は正当防衛であったとはいえ地面を抉ったのは明らかにやりすぎだと、厳重注意が行われた。しかし強盗以外の死者がいなかったことと現在の真里の状況の特異性なども込みでの対応だった為厳重注意だけでその場は済んだ。

警官は真里…又の名をおうらいに対して病院に通院するように話した。そうこうしていると連絡を入れた真里の母が車で迎えに来た。母はすぐに車から降りるもすぐには真里に近づかず質問を行った。


「真里…なの?」


連絡した際に真里が能力と入れ替わった旨の話は既にしていた。真里の母親は、恐る恐る近づきながら数時間前までは真里だった彼女に話かける。


「真里なのよね?…そうなのよね!?能力に乗っ取られたとか!そういうわけじゃないわよね!?」


真里の母は現実を受け止めきれないのか、間髪入れずに話しかける。しかし…


「ちがう。」


「ッッ!?…」


おうらいの一言により、母は現実を知る。そして…


バチンッ!!


おうらいの頬をすごい勢いで叩いた。

警官は驚愕し、母を止めようとする。


「ちょっとお母様!?落ち着いて…」


「ふっざけるな!!貴様ぁ!!真里を!真里を返せ!」


母はまわりの目も気にせずおうらいを責め立てる。おうらいはゆっくりと立ち上がりながら話し始める


「だめ。いまかわったら、まりちゃん、しんじゃう。」


「わかってるわよ!そんな事ぉ!!だからって…だからってぇ!!!」


母は涙声になりながらも叫び出す。警官に抑えられながらもおうらいを責め立てる。


「なんでそんな強くて!真里をすぐ助けなかったの!?あんたが真里を奪うために!わざとやったんでしょ!!?」


「わたし、ずっと、ねてた。まりちゃんが、しにそうになって、やっと、めざめた。」


「嘘をつくなぁぁぁぁー!!!!!」


「お母様!落ち着いて!!」


母親の暴走は、しばらく続いた。なんとか母を落ち着かせ、おうらいを家に帰らせた。

帰らせた際、警官は気が気でなかった。母がおうらいを殺してしまうのではという心配ではなく、おうらいの目的を思い出してのことである。


『まりちゃん、まもる。それだけ』


…もし守る対象が、真里だけだとしたら…今回の地面抉りの件もあり、警官はそこが心配になりながらも真里の帰宅を見守った。




家に帰ってからも、おうらいは真里の父親から責め立てられた。何故真里を助けなかった。何故わざわざ入れ替わるような真似をした。何度も責められた。しかし、おうらいは表情も変えずに寝ていたと言うばかりであった。



気づけば夜中になっていた。結局家族達はおうらいを普通に生活させることにした。おうらいを許せない気持ちもあるがおうらいを殺害してしまったら真里も死ぬ。だから元の真里に戻るまでおうらいを保護することにしたのだった。

おうらいは真里の部屋に入っていった。いつも入っていた部屋であり、今日初めて見る部屋。おうらいは一通り部屋を見渡した後、すぐにベッドに倒れ込んだ。


「…まりちゃん、ごめんね。」


おうらいの寝ていたという発言は嘘ではない。真里は幼い頃に能力を使ってはダメであるという発言を信じて、自分は能力を使わないと強く思った。その思いはおうらいにも作用し、おうらいは真里の心の奥底にて眠りにつくことになった。

真里が死にかけた際、無意識下の中で脳がおうらいに信号を送り、やっとおうらいは目覚めることができた。そして真里のピンチをしり、すぐさま救出に向かった…

おうらいの心には後悔が残っていた。もしあの時、困った時は使ってと言っていれば、もしあの時能力を使わせていれば…もしそうしていればの可能性を考えるが今更考えても意味がない。真里は今現在、おうらいと入れ替わりで心の奥底にて眠りについている。今はそれでいい。

真里が起きるその時までは、自分が真里の体と心を守り続ける。今のおうらいにできることは、それだけだった…




朝になった。考えている最中にいつのまにか寝ていたらしい。おうらいはゆっくりと部屋を出て、一回のリビングへと向かう。既に家族が朝食を食っていた。真里の母である葛木新名、父の葛木昴、そして兄の葛木龍斗。それぞれが静かに朝食と向き合っている。ご飯、みそ汁、卵焼き、焼き鮭、お茶…真里がいつも食べている朝食だ。既に真里の分も机にある。


「…いただきます。」


おうらいはすぐに椅子に座り、食事を始める。食事中、家族間の会話は何もなかった。それどころか、家族達はおうらいに対して異物を見る様な目を向けてくる。おうらいに対してお前は家族ではないと、そう言われている様な気がした。


「ごちそうさまでした…」


結局食事が終わるまで誰も話すことはなかった。おうらいは食器を片付け、二階へと戻る。しばらく学校はお休みすることになった。通わせても問題ないと判断された場合に復帰できる様だ。おうらいはまたもやベッドに倒れ込んだ。

真里が大好きだったゲームや漫画…おうらいはそれらをやるやる気が起きなかった。何故かはわからなかった。


「…ねれない。」


しかし寝ることもできない。おうらいは仰向けになって、天井を見ながらぼーっとしだした。変に動いて真里の体が傷付いたら大変だ。だから極力動かない様にする。何も考えず、ただひたすらにぼーっとするだけ。今のおうらいにはそれ以外やることが思いつかなかった。


「……………」


何も考えなくとも、心と時間はゆっくりと動いていく。おうらいの心には不思議なモヤモヤがあった。おうらいはそれがなんなのか、特に気に留めることはなかった。




このモヤモヤが、今後しっかりと表面化されるのは、遠い話ではない。






続く…


いかがでしたか?次回も読んでいただけると幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ