眠る
お楽しみください
遡ること数時間前…
授業が完全に終わり、放課後となった。真里はいつも通り御幸と一緒に帰路へとついていた。
「やべぇ…あんだけ寝たのにまだねみぃ…」
「嘘でしょ?今日一日中寝てたのに?」
「しゃーねぇ、帰って寝るかぁ」
「課題は?」
「んなもん明日でいいだろ?」
「それしないやつや。」
そう軽口を叩きながら歩いていたら、御幸の顔がいきなり険しくなり、腹を押さえ出した。
「やっば…腹痛くなってきた…ごめんちょっとコンビニ寄っていい?」
「ああ、全然いいぞ。」
唐突な腹痛を感じ、近くのコンビニに入る二人。御幸は駆け足でトイレに駆け込み真里はお金もないのに雑誌コーナーを見て暇を潰していた。
(この漫画おもろいんかな?)
別に買うわけでもないのに近くにある漫画の背表紙を見て面白いかどうかの疑問を抱き出す真里。そうやって時間を潰していると御幸がトイレから出てきた。
「お、終わったか。」
「ごめんごめん!長引いた!」
真里は先ほどまで見ていた漫画の興味を失い、御幸と共にコンビニを出ようとした。
その瞬間……
「動くなぁ!!」
バンッ!バンッ!
「!?」
コンビニ内にいた男の一人が銃を発砲しコンビニ内の人間全員に命令をし出す。
「いいか!今から動いたやつはこの銃でぶち殺される!絶対に動くなよ!」
「何何何!!?」
「うわぁぁぁ!!」
「黙れぇ!!ぶっ殺すぞ!!」
男が行ったいきなりの行動に店内の人間は動揺しだすが男の脅しの一言により店内は一気に静かになる。
(ご…強盗!?)
(やばいやばいやばい!!殺される!?)
真里と御幸は心の中で焦りだす。二人だけではない。他の人達も言葉にはしないが心の中で焦りと恐怖を感じていた。
そんな様子を気にもせず、男は店員に要求しだす。
「いいか!この店の金全部俺に渡せ!そうじゃなきゃ店内の奴らを一人づつ殺す!」
「は、はい!…」
「早くしろ!」
対応している店員を急かしている最中も銃は店員の方に向いている。
「うぅ…うぅ…」
「うるせぇ黙れ!泣くんじゃねぇ!」
「や、やべぇぞ…は?御幸…?」
焦りが取れない真里は後ろにいるであろう御幸と顔を合わせようとするが御幸がいない。一瞬さらに取り乱しそうになるが真里は地面に落ちていたメモ用紙を見て御幸がどこに行ったのかを理解する。
(そうか!穴に入り込めたんだな!)
御幸の能力、『収穴』。触れた所に穴を作り出す能力であり穴の中はなんでも入れることが可能。開けた穴はいつでも閉じれて好きなタイミングで開けることが可能。
メモの内容は「穴にいます」
御幸は強盗が店員に夢中になっている最中に穴の中に入り込みそこで警察に連絡していた。穴の中は音が完全に遮断されるため、通報するにはぴったりの場所であった。だが連絡はよこせるもののこのまま自分が姿を消せば、犯人が怒り他の人たちに被害が出るかもしれない。だからこそ親友である真里にメモを残したのだ
(多分、あいつは今警察に通報してくれているはずだ!
つまり私がやるべきことは、御幸が消えたことがバレないようにすること!しかしどうする!?どうやったら…そうだ!)
真里はバッグからスマホを取り出し、ゆっくりと犯人の前に出てくる。
犯人は真里の存在に気づき銃を真里に向ける。
「!?貴様ァ!!」
「待ってくれ!話を聞け!」
「黙れ!!そのスマホを…」
「スマホはあんたに預ける!だからここから出してくれないか!」
「あぁ?」
「私はここから出ても警察に通報はしない!だから出してくれないか!」
「そんな事信じれるか!!」
勿論、真里も信じてもらえるとは思っていない。真里は強盗の標的を自分に変えてもらい、交渉するフリをすることにより時間を稼ごうと考えているのだ。
「頼む信じてくれ!!この通りだ!」
「出して欲しいなら、せめて金を出すんだな!!今持ってる全財産をよぉ!」
真里は頭を下げて懇願するフリをする。強盗はそんな真里を見て、温情をかけてやると言わんばかりに金を要求する。
「金は…持っていないんだ…」
「じゃあ諦めるんだな!その場から動くなよ、スマホも拾おうとするなよ!!」
「あぁ…わかった…」
真里は恐怖心と同じくらい安心感を感じていた。拳銃を持った相手の前に出たことによる死の恐怖、そしてなんとか時間を稼げた安心感。少しだけ横見すると、御幸が穴から出てきていた。どうやら通報できたらしい。
パリンッ!
「ッ!!ハァ…ハァ…」
赤色に変色していた目が黒目に戻り、同時に御幸が意識を取り戻す。
作戦が成功し、少しながらも安心していた真里と御幸。
しかし真里だけはその安心感を味わう暇もなかった。
ガラス越しに御幸のことを拳銃で狙う男がいたのだ。しかももう発砲寸前。真里は考えるより早く行動していた。
強盗の言うことを無視して動き出し、御幸が打たれる前に御幸を押し出し、そして……
パァン!!!
…真里の頭を弾丸が貫いた。真里は断末魔を上げる暇もなく、その場に倒れ伏す。
「……は?」
御幸は当然のように動揺しだす。そして真里を撃った犯人をガラス越しに見つける。どうやら強盗は二人いたらしい。しかしそんな事を気にする暇は与えられず窓際の強盗は御幸を撃ってきた。
ダンッダンッ!!
「!?」
なんとかトイレに入り込み、射線を切ることに成功した御幸。しかしその心は平静ではいられなかった。トイレの外から銃撃音が鳴り響き続ける。通報された事を理解した強盗達は現在、せめて目撃者だけでも消そうとコンビニ内にいる人達を全て射殺し始めていた。御幸はコンビニ内の状況は見れなかったものの今現在、外で何が起こっているかは、なんとなく理解できた。
「ハァ!ハァ!ハァー!ハァ!」(なんで…なんでなんでなんで!!!…私?…私のせいなの…!私が通報したから…?真里も…そうだ真里!!真里は!?…というか私どうなるの!?…死ぬ?…死ぬの?…死んじゃうの!?…)
「おぇぇ!…ひっぐ!…えっぐ!…やだぁ!…やだぁ!!」
自分のせいでコンビニ内の人たちが射殺されたことによる罪悪感とこれから自分も死んでしまうという恐怖から、嗚咽混じりの泣き声を上げながら泣き言を言い出す御幸。現在の御幸には射殺されたであろう人達を思う暇はなかった。
…一方、真里は頭から弾丸が飛び出し、同時に血液が流れ出してきた。。少しだけ当たりどころが良かったのか、幸い意識はある。しかし、声も出せなければ何も聞こえない。二人の強盗が何かを喋っているのはわかるが内容を一切聞き取れない。
幸いと言ったが、それは真里にとっては違った。中途半端に意識があるせいでこれからの自分の運命を嫌でも理解してしまう。
(あぁ…私死ぬんだ…)
真里は心の中でそう思い、それと同時にこれまでの自分の記憶が蘇る。これが走馬灯というやつなのだろうか。
(まりちゃん…)
薄れていく意識の中、聞こえなくなっているはずの声がはっきりと聞こえる。鼓膜に届いている感覚がないこの声…
間違いない、あの声の主だ。
(まりちゃん。だいじょーぶ、だからね。)
頭の中の声は、さらにはっきり聞こえるようになってきた。
しかし意識は確かに薄れていっている。
(わたしに、まかせて。まりちゃん、ねてて。)
そんな言葉が聞こえる。
寝てて…そうだ。そういえば私、寝たかったんだ…じゃあ……お言葉に……甘えて………
(ゆっくり、ねててね。まりちゃんの、からだ、わたしが、まもるからね。)
真里は最後に、その言葉を聞き…
意識を失った。
「うぅ、ぶぇえ!!おぇえ!!」
御幸はいきなり体調が悪くなった。頭痛を感じ、吐き気もする。御幸は耐えきれなくなってトイレに吐瀉物を吐いた。
「ハァ!ハァ!ハァ!…じにだぐないよぉ!…真里ぃ!…」
御幸はなんの意味もなく真里の名前を呼んだ。絶対に答えないはずなのに、頭の中がぐちゃぐちゃでまともな思考ができなくなっていた。御幸は再度トイレに座り、泣き喚いた。
御幸の声が少し響いた瞬間、真里が目を開けた。
目の色を変色させて……
場面は変わり、強盗の一人が御幸がトイレに逃げ込んだ際、すぐさまコンビニ内へ入り込み目に入った子供とその親と思われる女性を撃ち殺した。店員はさらに怯え出し、一瞬だけ手が止まる。元々いた強盗は動揺しながらも店員に向けた銃を下ろすことなくもう一人の強盗と話し始める。
「おい!!?何やってんだ!」
「雑誌コーナーに携帯持ったガキが現れたんだよ!!」
「はぁ!?どういうことだ!」
「多分能力かなんかだ!!ガキはトイレに逃げやがった!たぶん今頃トイレん中でサツに通報してる!せめて目撃者だけでも消してとっとと帰んぞ!!」
御幸が既に警察に通報した事をわかっていない強盗の一人は元々コンビニにいた強盗にすぐさま命令し、せめてコンビニ内の人間を殺害する様にいう。
バァン!
すぐさまその命令を受け入れた強盗は混乱に乗じて逃げようとした中年のサラリーマンを撃ち殺す。
「ちっくしょぉ!!いつ入られた!!?」
バンッ!バンッ!
「んな事気にすんな!!」
「お二人とも!!バックヤードにあった財布と監視カメラの映像とってこれました!」
「すまねぇ!どうやらバレちまったらしい!店長と他の店員を殺しといてくれ!!」
「えぇ!?は、はいぃ!!」
さらにバックヤードから別の強盗が現れた。考えなしの強盗かと思われたがどうやらかなり計画な犯行であったらしい。バックヤードの強盗がバッグの中の財布と監視カメラの映像を回収して逃走する算段だったらしいが、御幸によってそれが狂ってしまった。強盗達は急いでコンビニ内の人間を全て殺害しようと行動しだす。
「おい!トイレに隠れたガキはどうすんだ!?」
「殺すに決まってんだろ!コンビニのトイレの鍵ぐらいならなんとかこじ開けられるはずだ!」
残った強盗二人はすぐさまトイレに向かおうと弾切れした拳銃に弾丸を再装填し出す。
「ッ!!?イッテェ……」
しかしいきなり二人揃って頭痛を感じ出す。だが片方はなんとか動き出し、銃弾の装填を再開しなんとか終わらせ、下げていた頭を上げる。
見上げた景色には、死んだはずの葛木真里がもう一人の強盗の後ろに立っていた。
「!?おま」ドムッ!!!
「うぶぅえぇえ!!!?」
場面は再び変わり、外から謎の異音を聞いた御幸が嗚咽を上げながら驚く。明らかに銃撃音ではない別の音がコンビニ中へ鳴り響いた。
直後、先程まで聞こえていた強盗達の大声が一切聞こえなくなった。それどころじゃない。何故か異常なまで静かだ。一瞬御幸は自分の鼓膜が破れたのかと思い軽く手を叩くが音は聞こえる。どうやら自分の体はまだ大丈夫な様だ。
少しだけ冷静になる御幸、そして思いつく。
「穴ぁ…穴だぁ!」
穴を作り警察が来るまでそこに入り込む。焦りすぎてまったく思いつかなかった。そうすればなんとか自分は助かる。
御幸は死んでしまった他の人たちのこともあり、少しだけ躊躇ってしまうがそれでも生き残りたかった為、能力を使用しようと頭の中で何度も使いたいと願い出す。その瞬間…
「すいません!!もう絶対にこんな事しませんからぁ!!命だけはぁ!!」
ドムッ!!!
「ッ!?何!?」
いきなり謎の命乞いが聞こえてきたと思ったら、またあの異音が鳴り響き、能力の使用を取りやめてしまう。明らかに銃撃音ではない。
(能力?強盗達の?…だとしたらなんで?…銃を使わない理由は?…)
様々な思考が交差し出す御幸、そうやって考えているとドアの前から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「みゆき、ちゃん?だよね。」
真里だ。しかし何か様子がおかしい。確実に真里の声なのだがどこか子供っぽい印象を受ける声になっていた。
「もう、だいじょーぶ。でても、いいよ。」
真里と思われるその女は御幸に出てもいいと語りかける。心配になったが、強盗達に自分の名前は教えていない。名前を知っていたのは真里だけだ。本当に真里なのか?頭を撃たれて生きているのか?
不安を感じながらも御幸は親友を信じてドアを開けた。そこには真里がいた。だが何か様子がおかしい。細目が目立つ真里の目はこれでもかとかっぴらいており、上目を向いていた。しかも頭の傷が塞がっている。
「真里…何が……え?」
ふと御幸は横を見た。そこには衝撃的な景色が広がっていた。
入り口あたりの床が抉れていたのだ。抉れた床はコンビニを突き抜け、駐車場、道路、そして向かいのマンションの壁に穴が空いていた。
「どういう…事…」
一体何がどうなってこんな状況になったのか?そう御幸が思考する前に真里が御幸に声をかけた。
「まりちゃん、ねてる。」
「…は?」
いきなり真里がよくわからない事を言い出した。そんな御幸に対してさらに真里は話し出す。
「まりちゃん、しにそう。だから、ねて、やすんでる。」
「休んでるって…じゃあ…あんたは……何?」
「…」
御幸は今の真里がなんなのかを聞き出す。
「わたし、おうらい。まりちゃんの、のうりょく。」
「…真里の…能力?…」
そう言いながら御幸は、変わってしまった親友の姿をまじまじと見つめた。
続く…
最後まで読んでいただきありがとうございます




