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江戸っ子歌い手少女  作者: 水海月
第一章『始まりの音色』
4/5

第一章エピソード4『人生の分かれ道』

「それで、結局その仕事ってどんなものなんですか?」



真剣な表情で紅葉が聞いた。正直な所、やはり怪しいとは思った。

けれど、どうしても気になってしまう。

さっきから何度も何度も聞こえる心臓の音。

この胸の鼓動はいったい何なのだろうか・・・・



「私のいた故郷で舞姫って言われてたお仕事よ。

このお仕事はね、たくさんの人たちの前で歌を歌って

いろんな人を笑顔にするのよ。」



どこか懐かしそうな目をしながらそう言った



「へぇー!」



紅葉は目を輝かせながらそう言った。



「それで、結局やるの?やらないの?」



凪の真剣な眼差し(まなざし)を向けられて、紅葉は黙ってしまった・・・

やはりいくら興味があるとはいえ、家族のこともある。

収入が絶対に出るものでないと今よりさらに辛い生活になるかもしれない。

もう少し考える時間をもらおう。



「あの、やっぱり時間もらえませんか?」



その言葉を聞いた凪は少し黙ってから、しばらくして口を開けると、



「わかったわ、また今度来るわね。その時までに返事を考えておいて頂戴・・それと」



そう言って凪は紅葉に白い布で包まれた小包を手渡した。



「あの、これ何ですか?」


凪は真剣な表情で座布団から立ち上がり、出入り口にある

花鳥家の家紋が描かれた暖簾(のれん)を手に添えながら、

紅葉の方を振り返って、


「それの中身を見てからやるかどうか決めて。

言いたいことはそれだけ、それじゃ」


凪はそう言ってその場から立ち去った。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「これ、どうしよう・・・」


紅葉は凪からもらった小包を見つめながらそう言った。


「なんか、中見るの怖いな。何が入ってるんだろう?」



正直勢いで貰ってしまったが、やはりまだ気持ちの整理はついていない。

収入の問題もあるので、やはりやらない方がよいのだろうか?・・・



「いや、ダメダメ!凪さんも言ってたでしょ!中身見てから決めてって!」



紅葉は覚悟を決め、小包を包んでいた布をほどいて中を見てみた。

すると、そこには丁寧に折りたたまれた紙が二枚と、

綺麗な神楽鈴があった。

黄金色の鈴がいっぱいに付き、柄の部分には、

筆の筆管(ひっかん)と同じくらいの太さの二本の赤いひもが付いている。



「わあ!きれいな神楽鈴だ!・・っとその前に、こっちの紙が先なんだった。」



我に返った紅葉は二枚のうちもう一枚の紙を手に取り、

その中身を開いてみると、こんなことが書かれていた。




    ・全国を旅して仲間を探す

    ・妖怪たちに声をかけて力を貸してもらう

    ・道具の調達



「な、なにこれ!?全部すごい大変そうなことが書いてあるんだけど!?

っていうかこの妖怪ってどういう・・・」



正直紅葉は、最初は凪は単に怪しいものなのではないのかと思っていた。

しかし、これを読んだ今その考えが根本から覆った(くつがえった)

もしかしたら凪の正体には何か秘密があるのではないかと、、、、



「そっ、そうだ!こっちにも紙があるんだった。

こっちも読まないとね。」



慌ててもう一枚の紙を開くとまた驚くようなことが書いてあった。



『紅葉へ、もう一枚の紙は読んだ?あそこに書いてあるのは

舞姫の活動をする上でやらなくちゃいけないことです。

それを考えてから舞姫になるかどうかを決めてほしいな。

舞姫になったらきっと紅葉はたくさん素敵な景色を見られる。

仲間もたくさん増えて、楽しいこともいっぱいできるようになる。

時にはつらいこともあるかもだけど、楽しいことも絶対あるよ。

長くなっちゃったけど、あともう一つ、もう一枚の紙に書いてあった

妖怪の事についてなんだけど、

あれについてはここではまだ話せません。紅葉が舞姫をやるって決めた時に話します。』



これを最後まで読んだ紅葉は、とても深刻な顔をしていた。

妖怪についての自分の考えは間違っていなかったからだ。



「やっぱり、私の考えは正しかったんだ、、、

それにしてもやっぱり凪さんの正体、やっぱり気になるなぁ」



両手で頬杖をつきながらあれやこれやと考え事をした。

大道芸人をやめて舞姫になるか、それとももっと安定した職に就くか、、、



「そう言えば父上が昔言ってたな、『人生で道が二つに分かれて

どっちに進めばわからないときは好きな方に進め。

人生は何が起きるかわからない。大道芸人の仕事も一緒だ。

だから、その時その時の自分の考えを信じて選べばいい』って」



紅葉は吐息をしてから、ようやく自分の考えに決心がついた。

そして座布団から立ち上がり、こう言った。



「よし、わたしは舞姫になる!それがどんなに茨の道だとしても!」
























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