第一章エピソード3『商談』
「さっきは、ご飯くれて助かったわ」
「いえいえ、とんでもない!困ってる人を助けるのは当然のことですから。」
左手を後頭部に当て恥ずかしそうにそう言った
「そう言えば自己紹介がまだだったわね、私の名前は北条凪。よろしく」
「凪さん、よろしくお願いします。それと、いきなり話題が変わるんですけど、さっきはなんで倒れてたんですか?」
「それは・・・まだ言えない」
凪は顔を俯かせながらそう言った。
きっと何か事情があるのだろう。深入りはしないほうがいい、そう考えて
紅葉は話題をすり替えようと、口を動かした瞬間凪が先に口を開いた
「ねぇ、この屋敷他に誰かいないの?」
「えっ!?」
全身に電流が走ったように、緩んでいた身が引き締まった。
「あっ、そのことなんですけど、・・実は私の家大道芸人の仕事をやってまして、
最近全然稼げなくなったから父と母は出稼ぎに行ってます。
家族全員がいるのは、大体半年に一回くらいですかね。
本当は奉公人もいたんですけど、賃銀が払えなくなったから
全員辞めてもらったんです・・」
「そ、そうだったのね、悪いことを聞いちゃってごめんなさい」
「い、いいんです!もう大道芸の仕事、辞めようと思ってたし・・・」
「家族に内緒で?」
「はい、そうしようかと・・その方が家族にとってもいいと思うし」
「大道芸の仕事を辞めたらどうするつもりなの?」
「まだ決まってませんが、両親の仕事の手伝いをしようかと、
私でも出来そうな編み笠を売ったりとか、そういう仕事をやろうかと」
その瞬間、僅かながら凪の瞳がキラリと光ったように見えた。
まるで、獲物を捕らえる勝機をつかんだ獣のように、、、
「ねぇ、もし貴方でもできる仕事があったと言ったらどうする?」
その言葉を聞いた紅葉が座布団から勢いよく立ち上がり、凪の顔前に自分の顔を近づけた
「えっ!それほんとですか!?」
「うっ、うん!分かったからとりあえず落ち着きなさい!?」
紅葉はハッとして座布団に座り、気を縮めた
もう、私ったら何早とちりしてんの!?怪しい話かもしれないのに
そんなうまい話につられるもんですか!でも、でも、話を聞く価値はあるかも─────
ごくりと唾を飲み込んで、緊張しながらも凪の次の言葉を待った
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「それでね、その仕事の話なんだけど、まず最初に言っておくわ。
これは絶対に稼げるという保証はないの」
紅葉は心の中で「なぁんだ」と言って落ち込む
「そりゃそうですよね、そんな旨い話なんてあるわけないですもんね、、
すみません、早とちりした私がバカでした。」
そう言ってその場から立ち去ろうとした紅葉を凪が引き留めた
「ちょっと待って、まだ話は終わってないわ!」
その話を聞いて紅葉は落ち込んだ表情を変えずに、座布団に戻ってきた
「それでね、さっきも言った通り絶対に稼げるというわけではないのだけれど、
成功したら日本全国に新しい風を吹かせることができるかもしれないの」
「新しい風を吹かせる?」
紅葉がきょとんとした顔で言った




