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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
はじまりの大陸

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#97 食欲の秋

「秋だ!食材狩りに行くぞ!」


ゲーム内の夢見亭で、ツバキが突然そう叫んだ。 その声はホール中に響き渡り、客たちの視線が一斉に集まる。 たぬまりが「えっ?」と振り返る間もなく、ツバキは彼女を小脇に抱えた。


「ちょ、ちょっと!?なに!?どこ行くの!?」


「山だ!」


ツバキの返事は簡潔だった。 そのまま彼女は、数人の客を指名し、手際よく連れ出していく。 どうやら、すでに何かが決まっていたらしい。 たぬまりは、完全に置いてけぼりのまま、ツバキの腕の中で揺られていた。


「なんで私が……!」


抗議の声も虚しく、一行は山へと向かった。



山の空気はひんやりとしていて、木々の間を抜ける風が心地よい。 紅葉が始まりかけた木々の下、ツバキが高らかに宣言する。


「まずは定番のきのこだ!」


その声と同時に、木陰から巨大なキノコのマモノがぬっと現れた。 傘の直径は大人の背丈ほどもあり、足元には胞子の霧が漂っている。


「でかっ……!」


たぬまりが呆然としている間に、ツバキと客たちは武器を構えて突撃していく。 たぬまりも慌てて後を追い、なんとか攻撃に加わった。


数分後、巨大キノコは地面に崩れ落ち、ふわりと煙のように消えた。 その瞬間、たぬまりの前に図鑑が現れ、ページがひとつ光を帯びて開かれる。


【マモノ図鑑に新たな項目が登録されました】


■登録マモノ:オオカサダケ

種族:菌類型マモノ

属性:土/毒

特徴:巨大な傘と太い柄を持つキノコ型マモノ。胞子を撒き散らしながらゆっくりと移動する。

生態:湿った森の奥に生息し、倒木や腐葉土を好む。夜間に活発化する傾向がある。 性格:鈍重で温厚だが、刺激されると毒胞子を撒く防衛本能を持つ。

保有スキル:

《胞子散布》:周囲に毒性のある胞子を放ち、視界と行動を妨害する。

《菌糸ネット》:地中に菌糸を張り巡らせ、敵の足を絡め取る。

《再生傘》:一定時間で傘部分を再生し、防御力を一時的に高める。

コメント:でかい。動きは遅いけど、胞子が目にしみる……。


「次は小さいやつだ!」


ツバキが指を差す先には、ちょこまかと走り回る小さなキノコたちがいた。 色とりどりの傘を揺らしながら、落ち葉の間をすばしこく動いている。


「これは……ちょっと面白そう」


たぬまりは、カゴを手に取り、しゃがみ込んで追いかけ始めた。 赤、青、黄色、しましま模様に星柄まで。 まるでおもちゃのようなキノコたちは、捕まえるたびに「ぴょん」と鳴いて跳ねる。


ようやくカゴがいっぱいになった頃、再び図鑑が光を放つ。


■登録マモノ:マメキノコンズ

種族:菌類型マモノ(群体)

属性:土/風

特徴:手のひらサイズのキノコ型マモノ。集団で行動し、素早く移動する。

生態:落ち葉の下や倒木の隙間に潜み、日中は隠れていることが多い。

性格:好奇心旺盛で、音や光に反応して集まる習性がある。

保有スキル:

《ぴょんぴょんダッシュ》:跳ねるように高速移動し、敵の攻撃を回避する。

《胞子ブロム》:驚いたときに煙のような胞子を放ち、姿をくらます。

《群れの知恵》:仲間と連携して行動し、複雑な動きを見せる。

コメント:かわいいけど、捕まえるのにめっちゃ体力使う……。


「よし、次は栗拾いだ!」


「えっ、栗拾いって……普通のやつだよね?」


たぬまりがそう思ったのも束の間、空からドカドカと毬栗が降ってきた。


「うわっ、危なっ!」


地面に落ちた毬栗は、ころんと転がったかと思うと、ぴょんと跳ねて木に戻っていく。


「戻るの!?自動回収!?」


「これはマモノだ。地面に落ちたら、すぐ木に帰ろうとする。だから横から叩いて気絶させるんだ!」


「パワープレイすぎる……!」


ツバキが言う通り、カゴに入れても、地面に置いた瞬間に毬栗は跳ねて逃げていく。 たぬまりは、目の前に現れた図鑑を見て、ふとひらめいた。


「これ、使えるかも……!」


むんずと図鑑を掴み、振り回す。 すると、ちょうど飛び出してきた毬栗に命中し、見事に気絶。 地面に落ちたままの毬栗を、たぬまりは足で踏んでイガを剥いていく。


「……懐かしいな」


栗の木がある近所のおばあさんに教えてもらった方法だった。 秋になると、たぬまりはよく栗拾いを手伝いに行った。 イガを剥いて、栗の皮を剥くのも手伝うと、おばあさんが甘露煮にして分けてくれた。 あの頃は、甘いものがとても貴重で、おしゃべりしながら食べる時間が何より楽しかった。


図鑑がまた光を放つ。


■登録マモノ:イガグリオ

種族:果実型マモノ

属性:木/地

特徴:毬栗のような外見を持つ跳躍型マモノ。落下と跳ね返りを繰り返す。

生態:秋になると木から落ち、地面に触れると反射的に木に戻る習性を持つ。

性格:警戒心が強く、接触を避ける。気絶するとしばらく動かない。

保有スキル:

《イガスパイク》:接触した相手にダメージを与えるトゲを展開する。

《リターンジャンプ》:地面に落ちると自動的に木へ跳ね戻る。

《殻割り耐性》:外殻が非常に硬く、通常の攻撃では割れにくい。

コメント:図鑑で殴っていいとは思わなかったけど、意外と便利だった……


「次は芋ほりだ!」


またもやツバキに抱えられ、たぬまりはガクガク揺さぶられながら運ばれていく。


「もうちょっと丁寧に運んで……!」


辿り着いたのは、夢見亭に割り振られた畑だった。

周囲には低い柵が巡らされ、土はふかふかとしていて、ところどころに葉が揺れている。

その下には、芋が眠っていた。

たぬまりは、しゃがみ込んで土を掘りながら、芋の茎を引き抜いていく。

ツバキは手際よく芋を掘り出し、水場で洗っていた。

そして、ひとつの芋を半分に切って、断面を見せる。


「これは現実にもある芋に似ててな。中が濃いオレンジなんだ」


切り口からは、鮮やかな色が覗いていた。

まるで夕焼けのような、温かみのあるオレンジ。

周囲の客たちが「ツバキさん物知りっすね~」「さすが」と口々に言う。


「甘くて美味しいんだが、あまり市場に出なくてな。植えて増やしたんだ!」


ツバキの声には、誇らしさと優しさが混ざっていた。

たぬまりは、芋を手に取りながら、心から思った。


「……すごいぞ、ツバキ」


秋の山は、静かに夕暮れへと向かっていた。

空は淡く染まり、木々の影が長く伸びていく。

たぬまりのカゴには、きのこ、栗、芋――秋の恵みがぎっしりと詰まっていた。


夢見亭の食材狩りは、ただのイベントではなかった。

それは、季節を感じる旅であり、記憶を呼び起こす時間であり、仲間と過ごす特別なひとときだった。


たぬまりは、図鑑をそっと開いて、今日登録されたマモノたちのページを見つめた。

そこには、秋の山で出会った不思議な存在たちが、静かに記録されていた。


そして、ページの余白に、小さく書き添えた。


「また来年も、行けますように」


風が、カゴの中の栗の葉を揺らした。

たぬまりは、その音を聞きながら、ゆっくりと歩き出した。

ツバキの背中を追いかけて、夢見亭へと帰る道を。

私という人間は書き終えて投稿を忘れる愚かな人間……猛省。

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― 新着の感想 ―
書き終えて(食べ終えて)何するんだったっけ?と考える自分よかまだマシだと思うよ 後は数秒前に考えてた事を忘れて考えると夢のようなエンドレス地獄な事も…
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