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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
はじまりの大陸

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#95 解決編

「ふんふん……やっぱり夢見亭には来てないんだね。分かった」


通信を終えたたぬまりは、スマホを伏せて小さく息を吐いた。

まいにゃ本人は、アトリエの片付けをしていたという。

声の調子もいつも通りで、特に怪しい様子はない。

それなら、あの厨房で煙玉を使って逃げた“まいにゃ”は――やはり偽物だ。


「変装か、幻影か……どちらにしても、身近な人物の仕業なら、まだ遠くには行ってないはず」


たぬまりはホールへと視線を向ける。

現在の客入りはほどほど。

テーブルには常連客がちらほら座っていて、こまちが紅茶を運んでいる。

店長はカウンターで帳簿をめくっていた。


「この中に……犯人が?」


キョロキョロと視線を巡らせていると、近くのテーブルから声がかかった。


「たぬきちゃん、どうしたの?」


声の主は、夢見亭に通い詰めている常連の一人。

たぬまりは少し迷った末、事情を説明することにした。


「実はね、まいにゃの姿をした誰かが厨房で食材を盗んでて……でも本人は来てないって言うし、誰かが変装してた可能性が高くて」

「それならピッタリなヤツが居る。カモン!」


常連客が手を振ると、別のテーブルで耳をそばだてていた老人が立ち上がった。

素早く歩み寄り、彼は胸を張って名乗った。


「わしの名はGだすっていうもんだ。スキルは“ウソ発見”だじゃ」


その声は力強く、そしてどこか誇らしげだった。コイツはたぶんキャラメイクを老人にしているだけで現実では元気な若者なんだろう。老人にしては溌剌としすぎている。

たぬまりは、またキャラの濃いヤツが来てしまった……と内心でため息をつく。


「……ウソ発見って、どういうスキルなの?」

「わしが真ん中さ座って、まわりに12人並べるべ?グラス掲げて質問すれば、みんな“はい”って答えるんず。そしたら、ウソついでるヤツは赤ぐ見えるんだじゃ」

「……発動条件、厳しくない?」

「めったに使えねスキルだばって、今日はちょうど人数が揃ってら。わしとたぬきちゃんと、あのツバキって子を除いて、ぴったり12人いるべさ」


たぬまりはホールを見渡す。

確かに、店内には店長、こまち、他のスタッフ、そして常連客を合わせて12人がいた。


「……やってみる価値はあるかも」


ガヤガヤとテーブルとイスが動かされ、ホールの中央に長テーブルが設置される。

まるで宴の準備のような騒がしさだが、誰も文句は言わない。

むしろ、面白そうだと笑っている。


こまちが紅茶を配り、店長が帳簿を閉じて席に着く。

最後にGだすが中央に座り、グラスを掲げた。


「さぁ、みんな。わしが質問するがら、“はい”って答えてけろ。ウソついでるヤツは、すぐに分かるがらな」


たぬまりは、ツバキと並んで立ち、静かに見守る。

Gだすの目が、ひとりひとりを見渡していく。


そして、グラスを掲げて、問いかけた。


「おめだぢ、盗みしてねが?」


全員が「はい」と答える。

その瞬間、Gだすの目が鋭く光った。


「……おった。ウソついでるヤツが、ひとりだけ赤ぐ見えだじゃ」


Gだすが指を伸ばす。

その先には、夢見亭に通っている一般客のひとり。

普段は物静かで、あまり目立たない人物だった。


「おめだば、ウソついでる。間違いねぇ」


その人物は、しばらく沈黙していたが、やがて立ち上がった。

そして、手を合わせて印を結ぶと――ふわりと煙が立ち上がり、姿が変わった。


「……まいにゃ!?」


ツバキが叫ぶ。

そこに立っていたのは、まいにゃそっくりの顔をした人物だった。


「やっぱりまいにゃじゃないか!」


しかし、その瞬間、夢見亭の扉が開いた。


「たぬまりちゃん、面白そうなことになってるね~」


入ってきたのは、まいにゃ本人だった。

アトリエの片付けを終えたらしく、手には土のついた手袋を持っている。


「えっ……まいにゃが二人!?」


ホールがざわめく。

誰もが目を見開き、言葉を失っていた。


「えっと……どういうこと?」


たぬまりが声を絞り出すと、変装を解いた方の“まいにゃ”が、少しだけ照れくさそうに笑った。


「ごめんね~。わたし、まいにゃの双子の妹、“ゆナこリ”で~す♡スキルはずるいよ」

「ゆナこリ……?」

「うん。素材を奪って、まいにゃに錬金させてたの。忍者やってるから、変装は得意なんだ~」


まいにゃは苦笑しながら、妹の肩をぽんと叩いた。


「もう、勝手に夢見亭に来て、素材盗るのはやめてよね~」

「だって、忍者って金食い虫でさぁ。つい……」


ツバキは呆れたようにため息をついた。


「やっぱり、まいにゃじゃなかったか……でも、そっくりすぎる」


Gだすはグラスを置いて、満足そうに頷いた。


「わしのスキル、役に立ったべさ。たぬきちゃん、これで一件落着だべ」


たぬまりは、ホールのざわめきの中で、静かに頷いた。

犯人は見つかった。

そして、まいにゃの謎も解けた。


「名探偵たぬまり、任務完了……って感じかな」


夢見亭の空気は、いつも通りに戻っていた。

でも、たぬまりのメモ帳には、新たな名前がひとつ追加されていた。


「ゆナこリ(裏切者)」


次に何か起きたら、またこの名前が浮かぶかもしれない。

そう思いながら、たぬまりは紅茶を一口飲んだ。

推理後の紅茶は美味い。

推理……?

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