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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
はじまりの大陸

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#66 うきうきサバイバル

「……そして、雷が窓を照らした瞬間、壁に影が映ったの。ひとり、ふたり、さんにん……よにん、ご、ろく、なな、はち……きゅう。最後のひとりは——だあれ?」


たぬまりが、声をひそめて語り終えると、夢見亭の空気が一瞬止まった。 こまちが「ひぃっ!」と叫びながら、隣にいたツバキに抱きつく。ツバキは魂が抜けたように固まり、目を見開いたまま微動だにしない。


「それマジの話かよ!?」


店長がカウンターの奥から身を乗り出して叫ぶ。 常連たちもそれぞれの反応を見せていた。笑いながらも腕をさすっている者、真顔で「それ、やばくない?」と呟く者、そして黙ってコーヒーを啜る者。


たぬまりは、少し得意げに笑った。 「海の家、楽しかったけど……来年は行かないです」


その言葉に、場の空気がまた変わる。 冗談ではない。

たぬまりが、あの流されやすいたぬまりが、きっぱりと断ったのだ。信憑性が増して、誰もが震えた。


さて、夢見亭はたぬまりにとって安心できる場所だった。

寮の自室に戻ると、久しぶりにログインする。海の家にいる間は忙しくて、ゲームに入る余裕がなかったから楽しみだ。


「ただいま、夢見亭」


ゲーム内の夢見亭に入ると、そこには見知った顔が集まっていた。 ひがちー、サキ、モモの遠征組。ツバキとこまちも、カウンター席でくつろいでいる。他のメイドたちも続々と現れ、こんなに大人数が揃うのは珍しい。


「え、なにこれ、なんかあったの?」


たぬまりが問いかけると、こまちがにこにこしながら答えた。


「クラン、組めるようになったんだよ。たぬまりが居ない間にね」

「えっ、クラン?うち、そんなシステムあったっけ?」

「今回の夏イベントに合わせて実装されたの。で、夢見亭クラン、できました」

「夏のイベントもきたよー」


気づけば、たぬまりはその場で夢見亭クランに加入させられていた。

そして、 みんなはすでに一度イベントを体験していて、今回は二度目。どうやら、イベントフィールドで三日間サバイバルしながら、他のクランや個人とポイントを競うらしい。


「アイテムも装備も持ち込み不可。全員初期装備スタート」

「えっ、マジで?それ、結構キツくない?」

「でも、ポイントの稼ぎ方はいろいろあるよ。ミッションをクリアしたり、マモノを倒したり、クラフトで役立つものを作ったり、イベントアイテムを見つけたり」

「イベントアイテムを使うと、専用スキルが抽選で三つ出て、その中から一つ選べるの」

「最終日にはボスマモノが出てくるんだけど、前回は倒せなかったから、ポイント全部リセットされたんだよね」


「……えっ、そんなのプレイヤーから不満出ない?」


「それがね、専用イベントを踏み切れてなかったのが原因で、たぶん一度目はチュートリアルだったんじゃないかって言われてる」


みんなは一度目の経験をもとに動くつもりらしい。 けれど、たぬまりには「自由に過ごしていい」と言われた。


「なぜ……?意地悪しないで一回目の流れ教えてよ」


たぬまりが問いかけても、全員が首を横に振った。


「絶対知らない方がいい」 「たぬまりは何かやる」 「そのままでいいはず」 「物欲センサーを消す」


「な!なんなんすかー!みんなしてー!」

それでも、たぬまりはイベントに参加することにした。 ちゃんと、自分の意思で。


画面に「イベント専用フィールドに移動しますか?」というアナウンスが表示される。 「はい」と答えると、景色が切り替わった。


まばゆい光のあと、たぬまりの視界に広がったのは——


白い砂浜。 粒の細かい砂が、足元でさらさらと音を立てる。裸足で踏みしめると、ひんやりとした感触が心地よい。遠くには、透明度の高い海が広がっていた。波は穏やかで、陽光を反射してきらめいている。


空は澄み渡り、雲ひとつない。 潮風が髪を揺らし、南国の香りが鼻をくすぐる。


背後には、ジャングルのような草木が生い茂っていた。 濃い緑の葉が風に揺れ、鳥の声が遠くから聞こえてくる。木々の間には小道があり、奥へと続いている。


そして、島の中央には山がそびえていた。 頂上は雲に隠れていて、どこか神秘的な雰囲気を漂わせている。山肌には滝が流れ、陽光を受けて虹がかかっていた。


「……すごい。ほんとに、ゲームの中?」


たぬまりは、しばらく言葉を失っていた。 現実の海の家も楽しかったけれど、ここはまた別の世界。冒険の匂いがする。何が起きるか分からない。けれど、きっと楽しい。


「よし、やるぞー!」


たぬまりは、拳を握って叫んだ。 その声は、青空に吸い込まれていった。


「でも……何すればいいんだろね?」

初期装備のまま、たぬまりは周囲を見渡す。 手元には、簡素な布の服と木の棒。防御力も攻撃力も期待できないが、逆に言えば、ここから何でも始められるということだ。


遠くの浜辺には、他のプレイヤーたちの姿も見える。 夢見亭クランのメンバーは、すでに散らばって行動を開始しているようだった。こまちはジャングルの方へ、ツバキは山の麓へ向かっている。ひがちーとモモは、浜辺で何かを掘っているようだ。


「みんな、動き早っ……」


たぬまりは、ひとまずジャングルの入り口へ向かうことにした。 草木の間を抜けると、湿った土の匂いが鼻をくすぐる。鳥の声、虫の羽音、そして時折聞こえる水の流れる音。現実の自然と見紛うほどのリアリティに、思わず足を止めて深呼吸する。


「……むふふ」


わくわくドキドキ。うきうきのサバイバルが始まる――!

ドキドキサバイバルのリメイクが来るとか聞きました。


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