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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
はじまりの大陸

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#35 信仰の更新

星々が空を裂き、光の軌道を描いて飛び出していく。

神殿の天蓋を抜けた星の群れは、夜空に散り、尾を引きながらユメノネの街へと向かっていた。


その光景は、まるで流星群のようだった。

だが、流星とは違う。

星たちは意志を持っていた。たぬまりの手の動きに従い、空を舞い、軌道を変え、街の上空に集まっていく。



ユメノネの防衛線。

サキが空を見上げ、息を呑んだ。


「……星が、降ってくる」


モモが弓を下ろし、ひがちーが盾を構えたまま動きを止める。

マモノたちも一瞬、動きを止めて空を仰いだ。


星々は街の上空で静止し、ゆっくりと回転を始める。

その中心に、たぬまりの声が響いた。


「星の巫女の祝福を、受けるがいい……!」


声は神殿から、空を通じて街全体に響いた。

まるで神の宣告のように。


だが、星は落ちない。

爆発もない。

ただ、光が降り注ぎ、街の屋根を撫でるように流れていく。


人々は戸惑いながらも、次第にその光に見惚れていた。

マモノたちは動きを止め、空を見上げたまま動かない。


「……これ、攻撃じゃないのか?」


サキが呟く。

だが、誰も答えられなかった。



神殿の下層。

魚人たちが集まっていた。

その中心には、ぬめりと鱗に覆われた異形の存在——タコン。


だが、彼の姿は揺らいでいた。

触手のような髪が震え、黒い瞳が濁っている。


「星の巫女……あれは……神の力か……?」


魚人たちがざわつく。


「タコン様は……本当に神なのか?」

「星を操る巫女の方が……強いのでは?」


その言葉が、空気を変えた。


タコンの体が、ゆっくりと崩れ始める。

信仰が揺らぎ、存在が保てなくなっていく。


「いあ……い……我は……」


声が、かすれていく。


「我は……神……で……」


最後の言葉は、泡のように消えた。

タコンの姿は、光の粒となって水に溶けていった。



神殿の広間。

人魚たちが、たぬまりの前に跪いていた。


「巫女様……タコン様が……消えました」

「信仰が……巫女様に移ったのです」


たぬまりは、星を指先で転がしながら、静かに頷いた。


「じゃあ、これで神殿は私のものってことでいい?」

「はい。巫女様の意志に従います」



その瞬間、神殿の構造が変化した。

海底に沈んでいた神殿は、ゆっくりと浮上を始める。

水が渦を巻き、神殿の基盤が海面に顔を出す。


そして、神殿は海の上に、まるで島のように浮かび上がった。

その位置は、ユメノネの沖合。街からも見える距離にあるが、直接攻撃するには届かない絶妙な高さ。


【海底神殿ルールリエは浮上しました】

【新名称:浮上神殿ルールリエ】



夢見亭の掲示板には、新たな告知が貼られた。


【夢見亭 浮上神殿ルールリエ店 開店準備中】

・星の展示室

・紅茶ラウンジ

・人魚による接客体験

・神殿ツアー(予約制)



ツバキがその告知を見ながら、たぬまりに声をかける。


「……本当にやるんだな」

「うん。せっかく浮いたし、使わないともったいない」

「教団は?」

「接客研修中。魚人たちは警備班にした。人魚たちは案内係。みんな意外とノリがいいよ」


ツバキは肩をすくめた。


「神殿を乗っ取って、観光地にするなんて、誰が予想したか」

「私もしてなかった。でも、星があればなんとかなるもんだね」




その夜、浮上神殿ルールリエは、海の上で静かに輝いていた。

星々がその周囲を漂い、巫女の居城としての威厳を放っている。


ユメノネの人々は、星の祝福を受けた街として、神殿との交流を始めた。

観光客が増え、夢見亭の本店も忙しくなり始めていた。


そして、たぬまりは——

水のソファに丸くなりながら、星を指先で転がし、

「また、星採りに行こう」と呟いた。


その声は、水の揺らぎに溶けて、静かに広がっていった。


【ワールドアナウンス】

緊急イベント《海底神殿ルールリエの浮上》は終了しました。

始まりのユメノネは守られました。

星の巫女の祝福により、神殿は新たな秩序のもと再編されました。

浮上神殿ルールリエは、プレイヤー:たぬまりの管理下に置かれます。

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