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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
はじまりの大陸

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32/107

#31 犯人はたぬまり

ログインした瞬間、たぬまりの目の前にマモノ図鑑がぬっと現れた。


【マモノ登録完了:≪タコン≫】


画面いっぱいに広がる、謎の生物のイラスト。

ぬめりと鱗の混ざった質感、異様に大きな目、そして触手のような髪。


「……え、誰?」


図鑑には、登録完了のアナウンスが表示されていた。

だが、たぬまりは今日マモノなんて見ていない。

記憶を辿っても、戦った覚えもない。


「もしや、交換に出した識別の紙片?いやいや、これどこで使ったの!?」


ツッコミながら、図鑑の詳細を確認する。


---


■登録マモノ:タコン

種族:深海異形種

属性:水・幻

特徴:鱗と粘膜に覆われた巨大な魚人型。目が異様に大きく、常に濡れている。

生態:漁村周辺の海底神殿に生息。信仰を集めることで実体化する。

性格:信仰に敏感で、崇拝されると喜ぶ。疑念には過剰反応する。

保有スキル:

《幻泡の帳》:対象の視界に泡の幻影を発生させ、周囲の認識を一時的に遮断する。

《深信の呪》:信者の信仰心を感知し、疑念が生じた瞬間に精神干渉を行う。

《潮の囁き》:水の気配を通じて遠隔で囁きを送り、対象の思考に影響を与える。

コメント:いや、これ絶対ヤバいやつじゃん。なんで登録されたの?私見てないよ?


---


「……スルーしよ」


図鑑を閉じて、今日もソファでスヤスヤするかと腰を下ろそうとしたそのとき——

秘書さんが、すっと現れた。


「図鑑、20種類行きましたよね?」

「えっ……あ、そういえば……」


すっかり忘れていた。

向こうからやってくることもあるんだなぁと思いつつ、図鑑を見せると、秘書さんは満足げに頷き、アイテムを渡してくれた。


使い切りの魔法札《瞬間転送・小》。

緊急時に一度だけ、指定地点に即座に移動できる便利アイテムだった。


「ありがと……」


今度こそソファで気持ちよく丸くなろうと、座ってすぐ——

夢見亭の扉が開いた。


入ってきたのは……魚だった。


何を言っているか分からないと思うが、顔が魚だったのだ。

目は左右に離れ、口は常に半開き。

辛うじて人間っぽい髪の毛が生えているのが、逆に人間離れしている感を醸し出していた。


たぬまりは、落ち着かない気持ちになった。


魚顔の客は、店内を見回しながら言った。

「あの~、このお店に識別の紙片を出した魔女さんはいませんか?」


目をそらしたい気持ちでいっぱいだったが、どうやらたぬまりの客らしい。

周りの人間も「早く行け」という空気でたぬまりの方を見ているし、

たまたまホールに居たツバキが「それはたぬまりだ」と答えてしまった。


「……はい、こちらへどうぞ」

仕方なく対応する。

占領していたソファを空けて座らせ、紅茶も注いでやり、話を聞く姿勢を作った。


魚顔の名前は魚取さんというらしい。

魚人という種族のプレイヤーで、今は漁村を拠点にしているという。


その漁村はNPC教団の拠点であり、魚取さんも教団に所属している。

しかし、そこで崇める神がおかしい。

たまたま手に入った識別の紙片で確認してみたかったのだと語る。


最初は当然、神を疑うなんて自分がおかしいと悩んだ。

だが、これで自分の中の疑いが晴れるならと思って使った。

良ければ図鑑情報を見せてほしいということだった。


たぬまりは話が長いなと思ったが、図鑑を見せない理由もないので見せた。


魚取さんは、図鑑をじっと見つめた。

そして——




白目を剥いて、口から泡を吹いて、後ろにぶっ倒れた。


「神よ……」

とうわ言を呟いている。


こっっっっわ!!

正直、怖すぎてたぬまりは反応できなかった。


隣には泡吹いて倒れている魚人。

目の前には、たぬまりの入れた紅茶。


店内の空気が、静かに、しかし確実にたぬまりに向けられていた。


「たぬまりやってないから」


とりあえず、否定しておいた。

でも、誰も信じてくれそうになかった。

クトゥルフ神話にちょっと触れてきます。知らなくても読めるように、怖く無いように書くのでご安心

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― 新着の感想 ―
クトゥルフ!!!!!!!! 嬉しい!!
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