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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
はじまりの大陸

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#30 名探偵たぬまり

大学からの帰り道。

たぬまりは、ふと足を止めて周囲を見渡した。夕方の街は人通りもそこそこあり、特に怪しい様子はない。

けれど、確かに——視線を感じる。


彼女はスマホを取り出し、何かを入力し始めた。


「何してんだ?」

ジェイが横から覗き込む。


「今、視線を感じたからメモ取ってる」

たぬまりは、淡々と答える。


カラスは周囲を警戒してキョロキョロするが、怪しい人物を絞り込めない。


「ボディガードしてるし、なんもないと思うけど……気持ち急ぐか」

ジェイの提案で、三人は足早に夢見亭へ戻った。



着替えを済ませて夢見亭に出ると、たぬまりは店長に報告した。

「ボディガードをつけてから、余計に視線が増えた気がします」

「3人は目立つからでは?」

近くにいた客がツッコミを入れる。

確かに、美少女とイケメン二人が並んで歩いていれば、注目されるのも当然かもしれない。


その日も、たぬまりはジェイに接客を教えつつ、テキパキと働いた。

仕事を終えた後、自室に戻ったたぬまりは、ログインする前に夢見亭の動画や配信を見返していた。


「やっぱり……そうだ。でも、まだ足りない」

彼女は一人呟き、もう少し調べ物をしてからログインした。



ゲーム内の夢見亭。

ジェイとカラスと合流したたぬまりは、店長に声をかけた。


「今日は、私が配信してもいいですか?」


店長は少し驚いた顔をしたが、すぐに頷いた。

突如始まったたぬまりの配信に、コメント欄がざわつく。


【コメント】

え、たぬまりちゃんが自分から!?

何が始まるんだ……

珍しすぎて逆に怖い

紅茶飲んでるだけなのに緊張感ある


たぬまりは、いつものソファに座り、姿勢を正して紅茶を飲んでいた。


まるで何かを待っているかのように。


その間にも配信を見ている人は増え、店内にも客が増えていく。

しびれを切らした店長が、たぬまりのところへやってきた。

「配信なんでやり始めたんだ?」


たぬまりは顔を上げ、カッと目を見開く。

周囲を確かめてから、静かに言った。


「この中に犯人が居ます!」


その瞬間、窓の外が光り、雷の音が鳴り響く。

強い雨が降り始め、店内のBGMも空気を読んで推理物っぽく変化した。


【コメント】

雷のタイミングwww

BGMまで変わったんだけど!?

何が始まるんです??

名 探 偵 爆 誕


たぬまりは立ち上がり、店内をゆっくり歩き始める。

カメラがその後を追う。

「私は、あるときから視線を感じるようになりました。

そのことを話すと、周囲の人間も思い当たることがあり、これはストーカーなのではないかと話が大きくなりました。それからボディガードがつき、常に店内の様子を配信するようになりました。

これで対策はバッチリかと思ったら、余計に視線を感じることが多くなったのです。

……おかしくありませんか?」



たぬまりは、店内中央に立ち、話を続ける。

「少し整理しましょう。視線を感じ始めたある時期は、動画や配信がバズったあとです。

その前から私は働いているし、普通に生活している。私目当てだったら、もっと前からストーカーされててもおかしくない。バズって初めて知ったという線もあるけど、元々美少女でガードが固いのだから難しいんです。そこが少し疑問」


【コメント】

まぁ、それはそう

美少女は否定できない

自分で言うんだww



「それから、コメントに違和感を覚えるものがありました。

ジェイがメイド服姿をお披露目したときに『かっこいい……』って。ちょっとズレてますよね。本当にそう思ったのかもしれませんが、この人のコメントを他にも見てみました。この人が見ていたのはおそらくジェイでもないんです。私は視線を感じた時間もメモしてあります。視線を感じた時、必ずある人物が近くにいたのです。そういった状況から、狙いは私ではない。」


【コメント】

ゴクリ……

えっ、誰なんだ

wktk

名探偵っぽいぞ


たぬまりは、ある画面を映し出す。

それは、コンカフェで働いていた頃の店長と、目元を隠してある女性が映ったチェキの写真。

その投稿には「今日も最高にかっこよかった♡」というコメントが添えられていた。


たぬまりは立ち止まり、指を差す。

「狙いは店長だった!そして、あなたが犯人ですね!」


ゴロゴロピッシャーン。

タイミングのいい雷が再び鳴り響く。


【コメント】

絶対これやりたかっただけだろwww

雷の演出完璧すぎる

店長だったのかよwww

名探偵たぬまり、天才か?

意外とちゃんと調べてたw


犯人の女性客もノリノリで自白を始める。

「そうよ!私がやったの!だって店長やってたなんて知らなかった!

たぬまりちゃんのストーカーをしたら、もっと店長のこと見る機会が増えると思ったのよ!!」


泣き出す犯人に店長が「俺だったんかい」とぼやきながら、店備え付けのおしぼりを差し出す。


【コメント】

店長のせいで草

店長だったwww

ハンカチだせよwww

ノリノリやんけ

夢見亭、今日も平和


名探偵たぬまりはソファに戻り、優雅に紅茶を飲む。

「もう帰っていい?」とジェイが呟き、カラスが「出張終わりだな」と返す。



後日、店長のファン専用の席が店の一角に設置された。

そこには、犯人の女性と事の顛末を知った昔のファン、そして普通に夢見亭で店長のことを好きになった男性客が座り、定期的に店長がお喋りしにいく楽しい空間になった。


こうして無事、ストーカー事件は解決したのであった。

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