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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
はじまりの大陸

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30/107

#29 事件発生

夢見亭の昼下がり。

たぬまりは、いつものようにテキパキと仕事をこなしながら、お客さんと談笑していた。

笑顔を浮かべつつ、グラスを片手に注文を確認していると、ふと動きが止まる。

視線を、店内の奥へ。

目を細めて、じっと何かを探すように。


「どうしたの?」

通りかかったこまちが声をかける。

お客さんも、たぬまりの様子に気づいて首を傾げる。


「……視線を感じた」

たぬまりは、ぽつりと答えた。


たぬまりは可愛い。

それは夢見亭の誰もが認める事実で、視線を集めるのも日常茶飯事。

だが、今回のはいつもと違うと感じている。


「最近ずっと視線を感じる。外に出ても、誰かがずっと見てる気がする」

「それって……ストーカーでは!?」

お客さんのひとりが思わず声を上げる。店内がざわつく。


「怪しい人、いたかも」

「挙動不審な客、最近いたよな」

「それは俺らだろ」

「コメントでも、なんか変なのいた気がする」


店長がやってきて「どうした」と言い、視線の話を聞くと眉をひそめてすぐに事務所へ引っ込んだ。


その日はそのまま仕事を終え、たぬまりはログイン。

ゲーム内の夢見亭は、落ち着いた雰囲気に包まれていた。

店長が、いつものようにグラスを磨きながら話しかける。

「手は打った。たぶん明日、手配できるから待ってな」


たぬまりは宇宙猫顔になったが、店長はスルー。


検証班に星を渡してやり、お気に入りのソファに座って紅茶を飲む。

けれど、視線。

ゲーム内でも、どこかから見られている気がする。

ここだと方向が分からない。

隠れる系のスキルを使っているのかもしれない。


ソファで横になろうとするが、視線が気になって眠れない。

不安を抱えたまま、ログアウト。


翌朝。

大学へ行く支度をして、朝食を食べに夢見亭へ。

朝の夢見亭は静かだ。

客はおらず、従業員寮暮らしの子たちが朝食をとっているだけ。


たぬまりは朝食をもらい、お気に入りのソファに座る。

店長も朝食を持って近くに座った。


「話がある」

店長曰く、ストーカー対策をいくつか試すこと。

そして、しばらくたぬまりにボディガードをつけるということ。


「大学への行き帰り、外に出るときは連れていけ。上手いこと手配した」

「ずっとボディガードつけるの、難しくないですか……?」

「来るぞ」


カランカランと扉が開く音と同時に、元気な声が響いた。

「おはざーっす!」

あとから「おはようございます……」と控えめな声。


そこにいたのは、ジェイとカラス。

今日は二人とも丸フレームのサングラスをかけていて、チンピラ感がすごい。

「そのサングラス、どうしたの」とたぬまりが聞けば

「安かったから買ったのー!かっこいいでしょ?お揃い!」

「俺が先に買ったのを見て、ジェイが真似したんだ」と和気あいあいとしている。


店長が説明を始める。

ストーカーの話は姉の方が慣れているので相談した。

すると姉が、ジェイが店に入ってから学ラブでずっと一番人気を取っていて、あまり注目されていない子メインのステージをやろうとしていたところだと言う。

正直、ジェイを遊ばせておくのは勿体ない。それに、ジェイとカラスはセットで人気をかっさらっている。

何かないかと考えていた時に弟から連絡が来てビビビっときたので二人を夢見亭に出張させようという話になった。


たぬまりは、喉から出かけた「なぜ」というツッコミを押し込めて我慢した。

そうして二人は夢見亭に常駐して働くことに。

たぬまりが外に出るタイミングでボディガードをするのも業務に含まれる。


「二人きりだと誤解されるから、三人一緒にした」

「それでいいの?」


「お金いっぱいもらえるから!」

「ご飯を出してくれると聞いている」


朝食を食べ終えたたぬまりは、さっそくチンピラ二人を連れて大学へ。

ストーカーとは違う意味で目立っていて、視線を感じる。

美少女とイケメンチンピラ二人——。

何事もなく?過ごして夢見亭に戻ってきた。

今日も頑張って働くぞー。


メイド服に着替えて夢見亭に出てくると、カラスがバーのマスターのような佇まいでグラスを磨いていた。

黒いシャツがよく似合い、オニキスのピアスがさりげなく光る。

無駄のない所作と静かな空気が、店内の照明に溶け込んでいた。


店内モニターには、店内の様子とコメントが映し出されていた。

これもストーカー対策の一環だろうか。

普段の客層とは少し違う、学ラブのファンらしきコメントが見える。


【コメント】

カラスが夢見亭にいるのマジで事件

学生服じゃないカラス、破壊力やばい

黒シャツ似合いすぎて泣いた

夢見亭に通うしかない

イケメンすげー。俺も好きになりそう




店長とジェイの話声が近づいてくる。

振り返ると、そこには——




メイド服姿のジェイ。

彼は、店長に用意されたメイド服に身を包んでいた。

スカートはふんわりと広がる膝上丈で、裾には繊細なレースが縫い込まれている。

胸元には小さなリボンがちょこんと結ばれ、白いエプロンが黒地のワンピースに映えていた。

袖はパフスリーブで、肩のラインが柔らかく丸みを帯びている。全体的に甘く、可愛らしいデザインだ。


彼はその服を、まるでモデルのように完璧に着こなしていた。

ウエストの絞りも、スカートの広がりも、動きに合わせて自然に揺れ、どこか絵になる。

だが、表情はいつもの軽薄さとは違い、どこか気まずそうに視線を逸らしている。

頬がわずかに赤く染まり、立ち姿も少しぎこちない。


耳にはシルバーのピアスがいくつも並び、可愛い服装との対比が妙に映える。

そのアンバランスさが、逆に彼の魅力を際立たせており、周囲がざわめく中、彼はスカートの裾をそっと押さえながら、静かに立っていた。





たぬまりは思わず呟いた。

「意外と似合ってるね」


「だろー?顔がいいから着こなせると思って用意したんだ」

店長は得意げに言う。


「俺のメイド服姿は需要ないだろ……」

ジェイは力なくつぶやいた。

カラスは腹を抱えて笑い、モニターのコメントも大盛り上がり。


【コメント】

ジェイのメイド服www

似合ってるじゃん!

カラス笑いすぎwww

これは永久保存回

えっ男なの?えっかわい!

wwwwww

wwwwww



ジェイが「もういい!着替える!」と立ち上がろうとしたところで、店長が言った。


「ん?メイド服で働けばボーナス出すって聞いてるぞ?」

「えっ」

「姉さんから金借りてパチンコでスったんだろ?生活すら危ういから面倒みてやってくれって言われたんだが」

「あっ、あっ、あ~~~……ここで働かせてくださいっ!店長♡」

ジェイは絶望した顔から一転して、最高にかわいい笑顔を浮かべた。


カラスは笑いすぎて過呼吸気味になっていた。

コメントも草原を通り越して森になっていた。


【コメント】

やwwめwwろwww

ジェイの顔芸www

店長の暴露が強すぎる

カラス死ぬwww

パチンカスで草

wwwwww

かっこいい……

wwwwww

夢見亭、今日も平和

wwwwww


たぬまりは、モニターのコメントを眺めていた。

「ん?今の……」

流れが速すぎる。しかし、今のは……。


現実でも、ゲーム内でも。何かが、確かにこちらを見ている。

視線。

事件だーーー!!!

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