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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
はじまりの大陸

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29/107

#28 友達の家

「これから幕が上がりますよ」


たぬまりとモモの席に、ふわりと舞い降りた蝶が囁いた。

夜の蝶——ヨルの使い魔。

その声は、風のように柔らかく、耳に心地よい。


「今夜の演目は、初めての方にも楽しんでいただけるよう、キャスト全員参加の紹介劇となっております。物語の舞台は、魔法学院。年に一度の大舞台——寮対抗魔法合戦に向けて、準備が始まるところから始まります……」


蝶が去ると、場内が暗転し、ステージにスポットライトが灯る。



幕が上がる。


舞台の中央に、学院の校章が浮かび上がり、音楽が流れ始める。

まず登場したのは、赤の寮。

情熱と勇気を象徴する寮らしく、剣を手にした3人のキャストが、炎のような照明の中で舞うように踊る。

歌は力強く、鼓動のようなリズムが響く。


「燃えろ、我が心よ——!」


剣を振るたびに、火花のような魔法が舞い、観客の視線を釘付けにする。


続いて、黄の寮。

人懐っこく、信頼を重んじる寮。

ジェイもこの寮の一員だ。


3人のキャストが、軽快なステップでステージを駆け回り、

歌は明るく、観客との距離を縮めるようなメロディ。


「君と笑えば、魔法になる!」


ステージを降りて、観客にハイタッチのサービス。

ジェイは、笑顔全開で手を振りながら、軽やかに踊っていた。


最後に、青の寮。

冷静で知性を重んじる寮。

カラスが所属している。


4人のキャストが、白衣風の衣装で登場。

舞台上には実験台のようなセットが並び、

歌は静かに始まり、徐々に壮大な響きへと変わっていく。


「知識は光、理論は翼——」


1人が光る液体を試験管に注ぐと、ステージ全体が眩く輝いた。

光が収まると、背景が一変。

学院の中庭から、魔法合戦の舞台へと変わっていた。



寮対抗魔法合戦。

各寮から代表者が1名ずつ選ばれ、三つ巴の戦いが始まる。


ジェイ、カラス、そして赤の寮からは長身の剣士タイプのキャストが登場。


始まりの合図とともに、3人が歌い出す。


「この力、誇りに変えて——!」


魔法の演出が次々と展開される。

ジェイは光のリボンのような魔法を操り、観客を巻き込むように踊る。

カラスは氷の魔法で舞台に霜を走らせ、冷静な殺陣を見せる。

赤の剣士は炎の剣を振るい、力強い一撃を放つ。


寮の仲間たちは、ペンライトのような魔法の光を振りながら応援し、

コーラスに加わって舞台を盛り上げる。




決着はつかず、舞台は一時休憩へ。

結末は観客の投票によって変わるという。


「人気投票で展開が変わるって……やり口がすごいわ」

たぬまりはとりあえずジェイに投票した。



再び幕が上がる。


ステージに立っていたのは、ジェイただ一人。

黄の寮が優勝したらしい。


「みんな、ありがとー!」


ジェイは、ソロで歌いながらステージを駆け回り、

観客にウィンクを飛ばしながら、軽やかに踊る。


「君の笑顔が、僕の魔法!」




幕が閉じると、場内に拍手が響いた。


「いや~すごかったですね~!」


モモがカメラに向かって笑顔で語りかける。

「演出も衣装も、魔法の使い方も、全部がゲームの中とは思えないくらいリアルな体験でした!ジェイさん、あんなにチャラチャラしてたのに、歌もダンスも完璧でしたね~!

カラスさんも、静かなのに存在感がすごかったです!」


たぬまりは、ドリンクを飲みながら余韻に浸っていた。

魔法演出の完成度。

ゲーム内の魔法を舞台に活かす工夫。

そして、ジェイとカラスのギャップ。


「……あの二人、人気あるのも分かるな。確かに勉強になる」



キャストたちが客席に現れ、ジェイとカラスがたぬまりたちの席に来てくれた。


モモが感想を伝えると、二人は笑顔で「ありがとう」と返し、

カメラに向かって宣伝を始める。


「学ラブ、毎晩ショーやってます!ぜひ来てね!」

「気軽にどうぞ」


「みんなちゃんと仕事してるんだな……偉いわ」

たぬまりは要らないコメントをした。



「はぁ~、この席タダだから、休憩させて~」

ジェイは、ソファにふわりと沈み込み、靴を脱いで足を組みながらドリンクメニューをめくる。

「えーっと、甘いやつ……あ、これ!フルーツ入りの炭酸!あと、サンドウィッチとチーズ盛り合わせも!」

「これだからジェイは……」


カラスは呆れたように言いながらも、自分もドリンクと軽食を注文していた。

「じゃあ俺は、ライムソーダと……レーズンバターとクラッカーの盛り合わせ、あとナッツ」


蝶がふわりと現れ、優雅に釘を刺す。

「今日この席での個人注文は、インセンティブに入れませんからね」


ジェイは、まったく気にした様子もなく笑った。

「今はタダで飲み食いできればオッケーだから!ね、カラス!」

「お前は毎回それ言ってるけど、学園長に怒られてるの忘れたのか?」

「怒られても、腹は減るんだよ~!」


ジェイは、チーズをつまみながらケラケラ笑う。

カラスは、ライムソーダで喉を潤してから「……バカは元気でいいな」とぼそり。


「え、褒めた?今、褒めたよね?俺のこと褒めたよね?」

「褒めてない」

「いやいや、今のは褒めたでしょ!“元気”って言った!」

「“バカは”って前置きが聞こえなかったのか」

「それはそれとして、俺は元気!はい、乾杯!」


ジェイがグラスを掲げると、カラスはため息をつきながらも、静かにグラスを合わせた。



たぬまりは、そんな二人のやり取りを眺めながら、ドリンクを口に運ぶ。


舞台の上では完璧な演技と魔法を見せていた二人が、

今はただの友達同士のように、軽口を叩きながら休憩している。


ジェイはソファに深く沈み、片足を抱えて座りながら「あ~極楽極楽~」と笑い、

カラスは「さすがにその寛ぎ方は家でやれよ」と返す。


「ここはもうオレん家!」

「視聴者さんも見てるんだぞ」と言いながら自然にサンドウィッチを食べる。

「あーそれ俺のだろ!!」

「タダで頼んでるんだから一緒だろ。ほれ」と、サンドウィッチのサイドに盛り付けてあったピクルスをジェイに食べさせる。

「うま~い!お口の中がサッパリして……って、カラスが嫌いなものだけ寄こすなや」

「バレたか」


普段、普通にお店に来ただけでは見られない、素のやりとり。

配信画面の向こうでは、視聴者が喜んでいた。


特に、ジェイとカラスの会話はウケが良かったのでたぬまりは、静かに笑った。

そして、ソファに深く沈みながら思った。


ここ、居心地がいい。

なんだか、新しい友達ができて、その友達の家に遊びに来たみたいな気分。

たぬまりもレーズンバターとクラッカーを勝手に食べる。

「うまっ」

「あっ、おい」とカラス。

「このレーズンバター、手作りで美味いんだよな~」とジェイも勝手に食べる。


結局頼んだものはみんなでシェアして満足したところでジェイとカラスは「仕事に戻る」と言ってそれぞれ別のテーブルへ別れた。


モモがカメラに向かって、締めの挨拶をする。

「というわけで、今夜は学ラブからお届けしました!素敵なショーと、素敵なキャストの皆さんに感謝です!また来たいですね~!それでは、みなさまごきげんよう~。」

この小説に恋愛タグは今後もありません。

楽しくわちゃわちゃです。

カクヨムでも投稿を始めてみました

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