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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
はじまりの大陸

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15/107

#15 実績解除

水中を進む竜の背にしがみつきながら、たぬまりと遠征組は必死に息を止めていた。

水圧が耳を打ち、視界は青く揺れる。竜は悠々と泳ぎ、まるで水の流れそのもののようだった。


そして——

水面が近づく。


「ぷはっ!!」

「っはぁぁぁ……!」

「うぐっ……死ぬかと思った……!」


全員、限界ギリギリで浮上。

水から顔を出した瞬間、肺いっぱいに空気を吸い込む。


「サキちゃん息してない!」

「してる!今した!」

「素敵な冒険です……でも、ちょっと死にかけました……」

「なんかすごかったね……」


たぬまりは、帽子の葉っぱを絞りながら水滴を払う。


竜は、そんな小さな生き物たちの様子にまったく気づいていない。

むしろ、良いことをしたという雰囲気を全身に漂わせていた。


「ありがとう……ございました……」

サキが一言だけ礼を言うと、竜は満足げに頷いた。


「この先は、妖精の花園。行くといい」


そう告げると、竜は水中へと静かに帰っていった。




たぬまりたちはようやく一息つき、周囲を見る余裕ができたがここはまだ洞窟の中のようだ。

たぬまりたちが運ばれてきた湖と、出口らしき場所が一つ。


「……あっちに行けってことかな」

「行ってみようか」




出口を抜けると、光が差し込んだ。

一瞬、目がくらむ。


おそるおそる目を開けると——

そこは、妖精たちが飛び交う秘密の花園だった。


色とりどりの花が咲き乱れ、背丈ほどもある大きなキノコが生えているところがあったりしてなんだかファンシーだ。

中央には、幹が太く、枝が空を覆うほどの巨大な木がそびえ立ち、その根元には広場のような空間が広がっていた。


空中には、さまざまな形の妖精が舞っている。

人に似た姿で羽を広げて飛ぶ者、ぼんやりとした光の塊のような者、花びらのような羽を持つ者、風に乗ってくるくる回る者——

そのすべてが、きらきらと輝いていた。


「ほう……」


【マモノ登録完了:妖精種】


たぬまりが花園を眺めていると、図鑑がふわりと光る。

次々に登録されていく妖精たち——その姿も性格も、まるで花のように多様だった。


《フロラ》


• 種族:妖精

• 属性:自然/花

• 形態:人型に近く、背中に花びらのような羽を持つ。髪は蔦のように編まれている。

• 生態:花の開花に合わせて活動する。花粉を運び、植物の成長を促す。

• 性格:陽気で世話焼き。花の世話をしている人間に懐きやすい。

• 保有スキル:• 《花精の祝福》:周囲の植物の成長速度を一時的に高める

• 《花粉舞い》:花粉を舞わせて視界をぼかす


• コメント:花の香りがする。ふわふわしてる。手伝ってくれる。



《ルミナ》


• 種族:妖精

• 属性:光/風

• 形態:ぼんやりとした光の塊。輪郭は曖昧で、風に乗って漂う。

• 生態:昼間に活発。光の反射や屈折を操り、空間を彩る。

• 性格:好奇心旺盛で、静かな場所を好む。人の髪や衣服にくっついて遊ぶことも。

• 保有スキル:• 《光の揺らぎ》:周囲の光を操作して、まぶしさや陰影を変える

• 《風乗り》:風に乗って高速移動する


• コメント:光ってる。ふわふわしてる。髪にくっつく。



《スピア》


• 種族:妖精

• 属性:風/戦

• 形態:小型の人型で、手に小さな槍を持っている。羽は細く鋭い。

• 生態:群れで行動することが多く、縄張り意識が強い。風の流れを読むのが得意。

• 性格:勇敢で少し短気。自分より大きな相手にも果敢に挑む。

• 保有スキル:• 《風突き》:風の力を纏った突き攻撃

• 《旋風跳び》:空中で回転しながら移動する


• コメント:ちっちゃいのに戦う。かっこいい。ちょっと怖い。



《ミリィ》


• 種族:妖精

• 属性:癒し/水

• 形態:水滴のような姿で、触れるとひんやりしている。目と口だけが浮かんで見える。

• 生態:水辺や湿った場所に多く、植物や生き物の傷を癒す力を持つ。

• 性格:おっとりしていて、近づくと寄ってくる。静かな音楽が好き。

• 保有スキル:• 《しずくの癒し》:触れた対象のHPを微回復

• 《水膜》:一時的に水の膜を張って防御力を上げる


• コメント:冷たい。ぷるぷるしてる。優しい。



《ノット》


• 種族:妖精

• 属性:いたずら/幻

• 形態:人型だが、輪郭が常に揺れていて捉えづらい。笑い声だけがはっきり聞こえる。

• 生態:幻覚や錯覚を見せるのが得意。人の持ち物を隠したり、位置をずらしたりする。

• 性格:いたずら好きで、反応が面白い相手に懐く。悪意はないが、手加減もしない。

• 保有スキル:• 《幻影跳び》:姿を一瞬だけ消して移動する

• 《物隠し》:近くのアイテムを一時的に見えなくする


• コメント:笑ってる。隠す。困るけど、ちょっと楽しい。



たぬまりは、図鑑のページが一気に賑やかになったのを見て、ぽつりと呟いた。


「……ボーナスステージかな?」

というか、妖精はマモノ判定なの?

マモノ図鑑ガバすぎない?



遠征組は、何かに気づいたようだった。


「これ……もしかして」

「ティンときた!」

「攻略の最前線で見つけた情報の断片、組み合わせると……」

「ちくわ大明神」

「門番によって案内される“秘密の妖精卿”……ここだ!」

「完全に理解した」

「誰だ今の」


「ここにいる妖精女王が、ストーリーに関わってくるって話だったよね!」


「ストーリーとは?」

たぬまりは首を傾ける。

スルーしたつもりはないが、ストーリーもクエストも一つも踏んでいない。


「とにかく、妖精女王に謁見するぞー!」

「行くよー!」

「たぬまりちゃんも——」


遠征組は勢いよく、巨大な木の根元へと走っていった。


「あ、置いてかれた」



たぬまりは、花畑に寝転がることにした。

ふかふかの草と、甘い花の香り。

空には妖精が舞い、風が髪を撫でる。


「お花畑で寝転がる実績、解除……なんてね」


ゲームの中じゃないと、なかなか体験できないだろう。

だから言ってみただけ。


目を閉じていると、妖精たちが集まってきた。

「まじょいた」

「めずらし」

「まじょ!」

たぬまりを囲んで踊ったり、髪の毛で遊んだり、頬をつついたり——

「まほー」

「たぬき」

「みつあみタワー」

「きゃはは」

イタズラが止まらない。


「ふあ……ねむ……」

鬱陶しいけど、眠気が勝つ。


「まじょ、ねる?」

「おやすみー」

「まほうかけちゃおー」

「きらきらー」

なんか踊ってるヤツからキラキラしたのが出てる気がするが——


たぬまりは、目を閉じた。

ボーナスステージっていいよね

実績解除っていいよね

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