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メイドさんのマモノ図鑑  作者: 吉良 鈴
はじまりの大陸

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13/107

#13 遠征組のお姉様

夢見亭の朝。

たぬまりはカウンター前でくるっと一回転。

「じゃーん!」


新衣装のお披露目。

魔女帽子フォレストウィッチに、チョーカー《スターリンク》。

とんがり帽子はオシャレに折れ、葉っぱがちょこんと乗っている。猫耳がぴょこっと出ていて、チョーカーの夜空の宝石がきらりと光る。


「たぬき魔女だ!」

「かわいい!」

「似合いすぎでは?」

「たぬきちゃん」


店内がざわつく。

こまちは照れながら「帽子は私が……」と呟き、店長は笑顔で頷いた。

「たぬまりのビジュアルは当然いいけど、こまちの腕前は見事だな。」


たぬまりは帽子のつばを指で持ち上げて、ふふんと鼻を鳴らした。


そんな中、店長がふと話を切り出す。

「そういえば、今日遠征組が帰ってくるぞ」

「遠征組……?」


たぬまりには聞き覚えがなかった。

店長が説明してくれる。


「現実では、たぬまりが大学に行ってる間にシフトに入ってるお姉さんメンバーだ。ゲーム内では戦闘を好んでて、攻略の最前線まで行ってるから、夢見亭にはほとんどいない」

「ほう」

「たぬまりが寝てる間に帰ってきてたこともあるけど、遠征組は店内活動を免除されてるからな。新しく入ったこまちには挨拶して、たぬまりの寝顔を眺めて、サッと前線に戻った」

「寝顔……?」

「遠征組は、戦闘が好きなお客様とよく交流してて、遠征の様子は動画にもなってる。現実での売り上げにも貢献してるんだ。夢見亭の“戦闘部門”って感じだぞ」

「なるほど……」

「でも今、攻略が詰まっててな。始まりの街に戻ったり、いろいろ試してるところ。だから、しばらく夢見亭でのシフトに入ることになった。今までより賑やかになるよ」


そのとき——


「たーだいまー!!」


賑やかな声が店内に響く。

遠征組三人が戻ってきた。


「わあ!たぬまりちゃんが起きてる!かわいい!」

「初めまして」

「あら、こまちちゃんこんにちは」

「二人ともちゃんとお客様にご挨拶しないと」

「ツバキさんおなかすいたー!」


わいわいがやがや。

噂をすればなんとやら、だ。


ひとまず、自己紹介タイム。


「えっと、わたしはモモです。魔法弓使いで、矢は魔法で出してます。あ、現実での眼鏡は伊達じゃないです。耳はここでは本物です」

モモさんはエルフ耳に丸眼鏡。おっとりした口調で、メイド服の裾をふわりと揺らす。


「ひがちーだぞ!召喚魔法で狼を二匹呼んで、あとは拳でぶん殴る!メイドショートパンツは動きやすさ重視!よろしくね!」

ひがちーさんは褐色肌に八重歯、元気いっぱい。申告通りみんなと違ってメイド服のスカート部分がショートパンツになっており、狼のしっぽを腰にぶら下げている。


「私はサキ。剣士です。銀鎧は防御用。大剣は叩くのも斬るのも受けるのも全部使います。夢見亭ではまとめ役……のつもりです。ツバキと同期です」

サキさんは長身で大柄。店長と並ぶとほぼ同じ背丈。落ち着いた声で、背中の大剣を軽く叩いた。




「でね、今ちょっと攻略が詰まっててさー」

ひがちーが口火を切る。


「次のエリアに行くためのボスが、見つからないの。マップ上には“封印の門”って出てるんだけど、開かないんだよねー」

「条件があるのか、何か見落としてるのか……」

サキが腕を組む。


「マモノ図鑑に載ってる“門番”ってやつが関係してるかもって話もあるけど、情報が足りなくて……」

モモが眼鏡を押し上げる。


「だから、夢見亭で情報整理しながら、シフトに入ることになったの。たぬまりちゃん、図鑑の使い方とか、教えてくれる?」

「エッ、はい?」

「こまちちゃん、装備の素材ってどうやって染めてるの?」

「帽子の裏地、どうなってるの?」

「宝石の使い方、教えて!」


質問が止まらない。

たぬまりとこまちは、たじたじ。


「えっと……」

「それは……」

「ちょっと待って……」


そのとき、遠征組の前にドンとツバキが料理を取り出してくれた。


「遠征組が居ない間に作っておいたやつ、配るよー」

遠征組の分はアイテムボックスに保管していたらしい。

皿に盛られた料理が次々と並ぶ。

香草焼きの幻獣肉、月果のピクルス、星茸のグラタン——どれも香り高く、見た目も美しい。


「美味い」

「美味しいです〜〜〜!!」

「ツバキは天才!」


遠征組は夢中で食べ始め、場が落ち着いた。



その間に、秘書さんがこっそりたぬまりに話しかけてきた。

「収集していただいたマモノ情報の報酬です」


渡されたのは、小さな封筒。

中には、銀色の紙片が一枚。


《識別の紙片》


• 種別:使い捨てアイテム

• 効果:未登録のマモノに触れると、マモノ情報がその場で表示され、マモノ図鑑に自動登録される

• 使用回数:1回限り

• 備考:観察の魔女への報酬。譲渡可能。便利だが、使いどころは慎重に。




「……ありがと」


そうして話しているうちに、いつものように話がまとまっていた。


こまちには遠征組の装備更新を依頼。

たぬまりは、周辺のフィールドに連れていかれるらしい。


「本当は最前線まで連れていきたいんだけど、まだレベルが足りないもの」

「危ないし、無理はさせられない」

「でも、ちょっと行ったとこのフィールドまでなら大丈夫っしょ!」


もう決定事項らしい。解せぬ。


たぬまりは帽子のつばを押さえながら、ふかふかのソファに沈んだ。

その姿を見て、遠征組は「かわいい!」とまた騒ぎ出す。


夢見亭は、さらに賑やかになった。

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